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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-017「角と明日と祝福と」

短いですがキリが良かったので。


雑談回?です。

当たり前と言えば当たり前のことだけども、

世の中の新人、駆け出しがやれることというのは限られている。


それは実力と評判が全ての冒険者家業でも変わらない。


そんな中、僕とマリーは平均よりは視線を集めていたと言えるだろう。


──妙に運が良い駆け出しとして。





「予備の杖もいいですけど、私としてはファルクさんの魔法媒体がいいんじゃないかなと」


「でも僕は剣を持つからねえ。持ち替えるのはちょっと……」


僕達2人がいるのはシルファンの街の冒険者ギルド、

そして受付の人たちにほど近い机の1つ。


普段であれば冒険者達があまり座らない、目立つ場所だ。


机の上には武骨な白い棒状の塊。


空から落ちた相手から証拠として切り取ったオーガの角。


一見するとただの骨のようにも見えるのだけど、

オーガの角は魔力の通りが良く、様々な武具の素材として名前があがる物だ。


というのもオーガ自身がここに魔力を集め、身体強化の魔法を使うというのだから

オーガの生命線と言えるだろう。


長く太いほどその力は強い。


そんな重要な部分が外に出ているというのもちょっと謎なのだけど。


ともあれ、その角は有名であり、

その上で、目立つ。


僕は取り扱ったことは無いけど、

過去には金貨数百枚の値がついた一品もあるとか。


今回の物も、しかるべきところに出せば

評価額は金貨に届くのではないか?と担当したギルドの人には言われた。


なら、こんな目立つ場所ではなく2人静かに

宿なりで相談すればいいという声もあると思うけど、

僕達は考え方を変えた。


こそこそ隠し通せるものでもなく、

僕達が拒否しても嫌な注目を集めるのは避けられないだろうと。


そこで僕達は敢えて、ギルドの人や

ギルドに出入りする冒険者がほぼ確実に目にする位置の机で

角の取り扱いを話すことにした。


勿論、目立つことで隠しているよりも注目を集めてしまうのだけど、

逆にそんな僕達に何かしようとするのであればその人も目立つということだ。


そうすることで万一、不埒な輩に奪われたとしても

次の話がしやすいだろうなと考えたのだ。


少なくとも、僕達を物陰で襲うなどして奪い、

直後にその角を売るなり素材に使う、といったことが難しくなるはずだ。


片や運よく依頼の流れで手に入れた貴重な角を、

不幸な事故というには疑わしい状況で無くした新人2人。


片やどこからか角を手に入れ、換金しようとする人。


取り返せる、とは言わないけれど

冒険者やギルド員、世間の考えや目は1つの方向にしか向かないだろう。


なにせ、オーガの角はこの地方ではまず出回らないらしいのだ。


オーガは知能あるモンスターであり、自分たちの領土以外には

特定のダンジョンなどにしか出没せず、このあたりでは

出会いたくても出会えない、そんな相手だ。


「何か方法を考えないといけませんね。この後は薬剤師さんとお話でしたっけ?」


「うん。直接お礼を言いたいって受付の人が言ってたかな」


さらに僕とマリーのこなしてきた仕事、

ヒルオ草等の採取の結果がさらにいい効果を産む。


街から余り離れてほしくないというお願いに対して

僕達が出来る依頼といったらこれらの採取ぐらいだった。


そんな僕達の採取は、どうやらかなり高評価らしかった。


僕としては店で売っていることを考えれば極々当たり前の、

鮮度と使うための状態を意識した採取であるし、

マリーも師匠に教わったのかそんな僕のやり方を普通に真似している。


全部が全部そうという訳ではないのだろうけど、

戦うことが中心になりやすい冒険者はやはり、

依頼を達成できる状態であれば、ということで

ちぎるか切り取ってしまうことが多いらしい。


確かにそれでもポーションの材料としては大丈夫なのだけど、

最低限守ってほしい、という部分でしかないのだ。


「同じように見える中にも効能の高い素材があるなんて考えもしなかったです」


マリーの言うように、僕達の採取したヒルオ草達には

そもそもの品質の差がある。


そんな中の、ポーションの効能も上げてくれそうな品質のものは

そのまま使わず、栽培に回すこともあるのがポーション作り、

薬剤師の仕事なのだ。


「僕達も勉強になるしね、良い事ばかりだ」


依頼人からは感謝され、ギルドの受けもいい。


僕達は少し上乗せされた報酬でちょっと贅沢に日々を過ごす。


そんな好循環。


だからこそ、今も受付の人は僕たちの方をにこやかに見ているのだ。


早く次の仕事をやってください、ってね。


ともあれ、そんな理由もあって僕達は角の使い道を考えていた。


でも悲しいことにこの街の職人では十分素材を使いきれるか自信がないというのだ。


良い物は出来上がるだろうけど、もったいないかもしれない、と。


僕はその言葉に少し残念ではあったけど、自分の技術に嘘をつかず、

真剣に相談に乗ってくれる姿に不満は一切ない。


かといって、じゃあお金にしようか、という方向は

売るにも買い取り先が限られる上に需要からいって買いたたかれる。


ギルドの言うように、どこかの王都にでも別なのだろうけど。


「確かに。長剣と杖を両方持つわけにはいきませんからねえ。

 防具……んー、贅沢に装飾品に使うか、

 小手に使うとかどうですか?」


考え込んでいたマリーはそういって自分の、

僕からするともっと肉を付けるべき、なほっそりした腕を撫でるようにして言う。


「小手……か。こっちはこれで、片方に、か。いいかもね」


僕の腕にはご先祖様がくっついたままだ。


となれば空いているもう片方の手に小手を装備することになるだろう。


そのご先祖様は朝から何か考え事なのか、

ほとんど言葉を口にしない。


静かだけど、意識は感じるので心配はしていない。


(オーガの角を素材に使った防具兼魔法媒体か……高そうだな)


冒険者や国の兵士などが使う魔道具、マジックアイテムの類は

上を見たらきりは無いけど、大体結構な値段がする。


マリーの例の杖は言うまでも無いけど、

村での戦いのときにご先祖様が生み出した麻痺長剣ももし売り買いするなら相当な値段だ。


そんなマジックアイテムになりそうな素材をマリーは僕に使うように言ってくれるのだ。


この角の話が終わったら次はマリーの装備充実を狙おうと思う。


そこでマリーに何か希望はあるかどうかを聞いてみる。


人間、目標があればいつもより頑張れるとじいちゃんたちも言っていた。


「そうですね……目標はエスティナ鉱石を使った回復装飾品か、魔力増強の装飾品ですね」


杖は自前がありますから、と言って

マリーは自身の目標を口にする。


悪くない、どころかかなり堅実な話だった。


「じゃあ、近くの祝福を狙おうか」


「そうですね。1つでも増えればそれだけ冒険者として幅が広がります」


僕の提案にマリーは頷き、2人の話題は移る。


オーガの角を加工してもらうために王都にいくにしても、タダではいけない。


出来るだけそれに見合った実力が必要とされるだろう。


それに、あちこち移動するには冒険者としての力の他、やはりいるのはお金だ。


さらには情報。


近くに祝福が得られるダンジョンがあるのか、その中身は?というわけだね。


ちなみに砂の祝福の効果は砂地での行動補正と、

畑仕事には抜群な力が手に入るらしい。


要は赤土だとか、畑に向くか向かないかなど。


そんなことをシルファンのギルドで聞いた僕だったが、

近くで話を聞いた冒険者がどこか笑っていたのを思い出す。


火の祝福といった有名どころと比べれば

戦いにあまり意味のない祝福、ということなのだろう。


でも、と僕は考える。


(戦いに役に立たない? そんなものは考え方次第さ)


今日は静かだけどご先祖様と話していると本当にそう思う。


さあ、今日の依頼はどれにしようか。






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