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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-014「新たな街へ」

話はほとんど進みません。

「さて、じゃあどうしましょう」


「うん。僕はまだまだ駆け出しだからねえ……。

 もうちょっと潜ってもいいけど」


ランド迷宮の初層、正確には地下3階への階段に到達した翌日の事だ。


聞いた限りでは地下3階からはゴブリン以外も出てくるようになり、

地下6階が最深部であるとのこと。


地下に行くほど経験もつめ、モンスターの素材のお金や

何故か出てくる宝箱の中身も有益な物らしい。


ランド迷宮では箱が見つかったことはないそうだけども……。


「でも聞く限り、得られる祝福は同じですからね。その分の利点は無いですよ」


そう、マリーの言う通りで、そのダンジョンで得られる祝福は

決まった物であり、潜り続けても変わりがない……らしい。


そして1番の問題はこの地方はダンジョンの偏りがあるようで、

このあたりは砂の祝福しか得られないようなのだ。


霊山に入るには多くの祝福を得る必要があるとも言われている。


何分、情報が少ないので何とも言えないけど、

少なくとも2つや3つでいいということは無いんだろうなと思う。


「霊山に行くかは別として、行方を探すならそっちに向かわないとですね」


そう、マリーが言うように実際に霊山に挑む……挑めるかは別として

両親が向かったであろう場所へ近づかなければ

手がかりも見つからないだろう。


そういった僕の目標を考えると、他の土地にいったほうがいいのかもしれない。


『ここは東側だからな……西の方に行けばダンジョンの数も増えるだろう』


ご先祖様の声を聞きながら、テーブルの上に広げた

簡単ながらも地図を見る。


地図と言ってもこの地域のものだけで、他の地域の物は無いんだよね。


幸いにもこのあたりの国は喧嘩していないけど、

それでも他の国の土地の情報なんかは大切なんだろうなと僕でもわかる。


あちこちを旅する冒険者の中には秘密裏にそういった情報の売り買いも依頼にあるとかないとか。


「でもなんで砂の祝福なんだろう。土とか森じゃないんだね」


「そうなんですよね。知ってます? ここ、むかーし砂漠だったらしいですよ」


ふと気になったことを口にすると、そんな衝撃的な言葉がマリーから飛び出る。


(ここが、砂漠?)


確かに緑あふれる、とは言い難いかもしれないけど、

僕の村やその村がある山々はちゃんと緑がある。


確かにもっと東に行くと砂地が現れるらしいのだけど……。


「とてもそうは見えないけどね」


「はい。私も祖父に聞いただけなんですけど……何百年も前に、

 精霊達の大移動というか、事件があったらしいですよ。

 他の場所には大きな湖が出来たりしたとか」


(不思議なこともあるもんだね……ちょっと怖いけど)


ある日、自分の住んでいた場所が様変わり、なんて

経験したくはないよね。


ちょっと話が横にそれたけど、改めてマリーと話し合う。


その内容は今さらだけども自分たちが何が出来るのかの打ち合わせ。


そして、本当に一緒に旅するということでいいのかという確認だった。


男女が2人旅なんて、と心配した僕に

マリーは笑顔で信じてますから、なんて言い放つ。


『勝てそうにないな』


(まったくだよ。これで何かしたら僕は悪人じゃないか)


ご先祖様の事は説明が難しいので、魔道具を装備している、とだけ言ってある。


それでも、私の杖のこと言えないぐらいの価値じゃないですか、

と怒られてしまうのであった。



その後ギルドに顔を出すと、定期的な物として

西側への商隊護衛依頼が見つかった。


いくつかの商隊がまとめて移動するらしく、

護衛の依頼自体は複数の冒険者達が受ける形の様だった。


報酬自体は高い物ではないけど、

逆に駆け出しでも人手があるに越したことはない、として

依頼を受けることが出来るのが大きな強みだ。


その依頼に参加するにあたり、僕はマリーに新しい武具の購入を勧めた。


具体的には普通のローブと杖だ。


元々のマリーの装備は目利きが見ればその価値はすぐにわかるし、

場合によっては本人以上に盗賊なんかが目を付けるかもしれない。


そう考えると危険は減らしておきたかったのだ。


もっとも、いざという時の戦力が低下してしまうわけだから

どっちもどっちという考え方もある。


今回は自分たち以外にも冒険者が何人も依頼を受けているからこそ、であった。



「西の街に行きます。ついたらまた連絡しますっと」


「はい。こちらをですね。銀貨1枚になります」


準備を整え、グランツさんらに別れを告げた日、

僕はギルドで弟たちへ手紙を出していた。


時間はかかるけど、こうしておけば他のギルドから

この街のギルド宛に手紙を出せばさらに村へと転送されるのだ。


余り弟たちに寂しい思いはさせたくないからね。


預けたままの馬も取りにいかないといけないし……。




「坊主、良い馬じゃねえか」


「ええ。村のみんながこれに乗ってけっていってくれた馬ですから」


護衛の最中、冒険者の一人が歩いたまま馬を引く僕に声をかけてくる。


マリーは馬の上だ。


良いとこの出だからか、マリーは馬術を身に着けていた。


とはいえ今は馬車に合わせてなので速度は出すことは無く、

どちらかと言えば馬の上から周囲を警戒してもらっている。


その分、僕は馬を引いているという訳だ。


馬車の数は6台。


冒険者は8名。


商隊の人間も含めると結構な大所帯だ。


「そうか。そういうのは大事にしないとな。

 ま、最近は盗賊なんてとんと見ねえ。怪物どもが実力も知らずにやってくるくらいだ。

 気楽に、とは言わねえが旅の経験を積むには最適さ」


そういう冒険者のおっちゃんもたまたま街の移動らしく、

この依頼を受けたらしい。


背中に背負った大斧が腕力と強さを物語っている。


その後も冒険者の中では一際若い2人のせいか、

冒険者だけじゃなく商人の人たちもよく話しかけてきた。


みんな娯楽というか、暇を持て余しているのかもしれないと思った瞬間だった。


そんな中でもわかったことがいくつもあった。


最近、ダンジョンにいつも起きないようなことが起きることがあるという話や、

僕の村のそばのダンジョンに起きるような素材なんかの偏りが

起きたりといったことがあるらしい。


精霊が見える魔法使いたちの中には、その騒がしさに

吉凶を感じているということだったけど、よくわかっていないようだった。


ドラゴンが空を舞うのを見たという話もあり、

何かが起きているのだろうか、と不安を抱くには十分だった。


「ま、そうはいってもよ。俺らは俺らでやれることをやって日々を生きるのみよ」


「確かに、間違いないですね」


「あ、見えてきましたよ!」


冒険者に頷きながらマリーの声に前を向くと、道の向こうに壁が見えてくる。


目的地であるシルファンの街だ。


もうすぐ昼下がり。


街についたらまずは宿かな……。





(と思っていたのにね……うーん)


「ファルクさん、私は大丈夫ですよ?」


「そうはいっても、ね」


僕が悩む理由。


それは入った宿に部屋が1つしか開いていなかったからだった。


幸いにもというべきか、部屋自体は大きく、ベッドも2つあり2人部屋だ。


『気持ちはわかるが、これから旅は一緒だと思えばこういうことはどこでも起きるぞ?』


(それもそう……だよね)


悩む僕に、静かにご先祖様が忠告してくれる。


確かに仲間が増えるかもしれないけど、今のところは僕とマリーの2人。


あれこれで男女を分けて考えていたらお金がいくらあっても足りないのも事実だ。


「……仕方ない、着替えとかは声を掛け合おうか」


「はいっ」


僕の言葉の何が面白かったのか、マリーは笑顔でそう答え、

待っていてくれた宿の主人に銀貨を前払いで手渡す。


「まいど。食事は朝と夕だ。なんなら弁当も作れる。

 水は庭に井戸があるからな、好きに使ってくれ。

 おっと、お湯は有料だ。薪がいるからな……。

 もし自分で沸かせるなら炊事場でやってくれよ。

 部屋で沸かすようなら追い出すからな」


慣れているのか、宿の主人は僕らをからかうことなく、

注意事項を告げて部屋の鍵を渡してくれた。


『お? なかなかいい造りだ。安心できそうだな』


(確かに、しっかりしてるね)


渡された鍵は僕から見ても造りが細かく、

防犯も思ったよりしっかりしているのだなと感じさせた。


取れた部屋は2階の角。


窓が大きく、清潔そうな部屋だった。


あれこれと話し合い、ギルドに顔を出したと思ったら

いつの間にか夕暮れから夜となっていた。


食事を終え、2人は早々とベッドに入る。


戦いは無かったとはいえ、護衛で警戒を続けるというのは

思ったよりも疲労につながっていたからだった。


「明日からどうしようか」


「うーん、そうですね。出来れば連携の特訓なんかをしてからにしたいですね。

 私達、ランド迷宮でしか戦ってないですからね」


マリーの言うように、僕達はまだ組んで日数が少ない。


戦いの経験も多いとはいえず、まだまだ連携も甘い。


命のやり取りをする上では、危うさが残っているといえるだろう。


「じゃあギルドで訓練場があればちょっと借りて、その後簡単な依頼を受けよっか」


「はい。そうしましょう。ファルクさんには大変かもですけど、

 きっと旅は長いです。1歩1歩、やりましょう」


窓から見える星に手を伸ばしながらの僕の言葉に、

同じように手を伸ばしているマリーが静かに答える。


「うん。よろしくね、マリー」


「こちらこそ、です」


割り切ったつもりでも落ち着かない夜がそうして更けていく。



衝立があってもすぐそばに同年代の無防備な女の子が寝ている!


……ファルク君は耐えております。

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