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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-104「夢と現実と-1」


「もっと連れ出してあげたかったんだけど。ごめんね」


鬣を撫でてあげると、ホルコーは小さくいななく。


まるで、わかってる、と言わんばかりだ。


「最近、馬で行くには辛い場所が多かったですからねえ」


同じくホルコーの背の上でのマリーのつぶやきは

僕も全く同じ気分だった。


ちらりと後ろを向くと、シータ王女の乗っている馬車とその荷台。


見た目はそこまで派手じゃないけど、中身は王女が乗るにふさわしく、

色々と詰め込まれているらしい。


さすがに僕達は中に入れなかった。


いや、入っていいよと言われても困るし、

シータ王女ならそう言いそうだよね。


きっと寂しいんだと思う。


今回はフェリオ王子がついてこないということに

結構な勢いでなんで?って言ってたもんね。


結局、いつもそばにいる侍女さん数名も同行することで納得したらしい。


この辺はさすがにまだ子供だよね。


僕もまだ大人とは言い難いけれども。


それにしても、王子はついてこれない理由はなんだろうか。


意外とこういう時には現地に来たがる感じだと思ったんだけどね。


やっぱり忙しいのかな?


『前方に反応、モンスターじゃないか?』


「何かいるみたい。前のあの岩陰です」


目的の場所への移動には僕とマリー、そしてシータ王女と侍女さん。


当然これだけではなく、護衛としてダグラスさんらなじみの顔が並んでいる。


なんでもこの前のエルダートレントの探索が

大いに評価されたらしく、今回の役目を貰ったのだとか。


「了解した。ミル」


「わかりました!」


シータ王女という敬う相手がそばにいるせいか、

ミルさんは以前のような砕けた感じではなく、きりっと真面目な姿で

数人の男性と共に馬で駆け出していく。


「ふむ、トレントでも思ったが良いスキルを持っているようだ」


「たまに、どうでもいい獣なんかも感知するので難しいですよ」


実際、上手く切り分けないと小さなネズミのような相手も

光点として表示されるのでよくわからない状態になると気だってあるのだから。


それでも、破格の能力ではあると思うけどね。


と、そんな空中の地図の中で

ミルさんらと思われる光点と岩壁のそれが接触し、

耳にも戦闘音が届いた。


「何かいたんですね、やっぱり」


「このあたりは街から遠い。多少はモンスター共がいるのだろうな」


ミルさんを信用しているのか、心配した様子は全くない。


僕としては万一が無いか、少々心配してしまうのだけれども。


心配性かな?


「戻りました。スライムが数匹、岩陰に潜んでいました」


「そうか、昨晩は雨だったからな。そのせいだろうか……」


まだ湿り気の残る街道沿いの草むらを見、

隊列を組みなおして進軍を続ける。


この間、シータ王女は馬車の中で眠ったままだ。


本番は夜、ぶっ通しらしいのでしっかり寝させるように、と言われている。


何かある度にびっくりして声を出されるよりははるかにいいよね。


起きていると色々恥ずかしいことをさせられそうだし……。


「ファルクさん、本当にしなきゃいけないんですかね?」


「マリーが嫌ならなんとかごまかすよ、うん」


しなきゃいけない、というのはシータ王女のお願い事である。


依頼が終わったら、またちゅーを見せてほしい、と言われたのである。


仲が良いならするんでしょー?等と言われたら

なかなか、しないとは言えないよね。


でもそれをみんながいる時に話さなくても良いと思うんだよね。


かなり、恥ずかしかった。


「嫌という訳じゃないですけど、なんだか不思議な気分になるなあと」


「うん、わかるよ」


王女様に言われて口づけをする、なんて言葉にするとおかしさがわかるよね。


そうして移動すること半日。


目的地まで半分来たかなというところだ。


都合よく村や町があるはずもなく、なんと王女様が野宿となるらしい。


「いいんですかね?」


「それが国の方針だからな。シータ王女もよくわかっていらっしゃる」


次女だからあまり重要視されていないのかな、

とも思われかねない状況に思えるけど、

話を聞くと何代も前から同じように儀式やその類の際には

護衛はつけるが、過度に歓待はさせないんだそうだ。


不便を知ってこそ治世が考えられる、なんだってさ。


ダグラスさん達は全員で20から30人いるから……まあ、そんなものなのかな?


『よほどの事がない限りは対処できる布陣だろうな』


(うん。魔法無しだとすぐにやられちゃいそうだ)


馬車を囲むように組まれたいくつものたき火。


そのうちの1つは僕達だ。


どうも兵士の皆はトレントのときみたいな稼ぎを

期待してるような気がしないでもない。


今回はダンジョンではないのだから

あんな稼ぎはないんだけどね。


人間、一度儲けてしまうと中々、それが忘れられないと

お店に来ていた常連はよく言っていた。


ああ、アキやダンたち元気かなあ?


弟たちと仲良くしてくれてるといいけど。


(うう、夜にそんなことを考えたから少し寂しくなっちゃったな)


もう何年もあっていないかのような寂しさがやってくるのは、

それだけ村を離れてからの出来事があわただしすぎるからかな?


と、ぼんやりと手元を眺めていた僕の腕に誰かの手。


「マリー」


「どうしたんですか?」


どうやら僕は他から見ると相当な状態だったようだ。


心配した顔でマリーが僕の手を掴んできたということはそういうことだよね。


『鍛錬が足りんな』


(何の鍛錬なのさ……)


からかう様なつっこみに心の中で返しつつ、

マリーへと向き直り、やや無理やり気味に微笑む。


「ちょっと故郷を思い出して。でも大丈夫、ありがとう」


「いいんですよ、寂しい時は誰かが一緒の方が良いんですもん」


ここで何度も断るほうが良くないなと思った僕は

そのまま、少し恥ずかしかったけどマリーと寄り添うようにして眠りについた。


………


……



翌日、ミルさんにからかわれるという場面はあったものの、

それ以外は特に問題なく進むことができた。


そうしてやってきたのは、そばに建物のある、広い場所。


でも並んでいる石碑からわかる、ここはお墓だ。


「ここには第二次精霊戦争期からの戦いで散った者たちが眠っている。

 少し王都から遠いのは、ここがある戦いの現場だったからだ。

 興味があれば調べてみるといい」


建物は、この場所の管理のためであり、

こうしてやってきた人間の泊まる場所でもあるらしい。


ただ、今回はそんな夜に用事があるらしいので

宿泊に使うことはなさそうだった。


荷物を運びこみ、馬を預けるようにして僕たちは墓地へと向かう。


何かするわけでもなく、状況の確認とお祈りのためだ。


「……? 何か……」


「なんだろうね、嫌な感じではないんだけど」


マリーも僕も、一歩踏み入れるなり何かを感じていた。


しかし、殺気のような物ではなく……見られているような。


「おにーちゃん、おねーちゃん」


「あ、シーちゃん。起きてていいの?」


背後にかけられた声はシータ王女。


若干固めなのは、夜の儀式への緊張からだろうか。


「準備はしないといけないから。おにーちゃん、大丈夫?」


「うん。シーちゃんの笑顔のためにも頑張るよ」


前に約束したように、シータ王女はそう呼ぶと怒るのでシーちゃんと呼んでいる。


いいのかなあとは思いつつ、誰にも怒られないので事情は伝わってるんだと思うことにした。


その後もあれこれとやっていくうちに夕方。


山に太陽が足を入れるように隠れていき……。


あちこちで燃え盛る松明だけが広いお墓を照らしていた。


今回、このお墓のある場所で僕達がやらなくてはいけないこと。


それは……。


『敵はどこだ、国を守らないと!』


いつの間にか現れた青白い顔の男性が手にした槍をあらぬ方向に突き出している。


そう、死んでしまったことを忘れ、地上に舞い戻ってきてしまう彼らを鎮め、

本来の姿に戻すということが役目だったのだ。



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