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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-102「暗闇に踊る-4」



死者の復活と不死の兵士。


これだけを聞くと怪しい儀式による、

冒涜的な話に聞こえる。


僕もまた、最初は眉をひそめてしまったのだ。


「まあ、そう思うのが普通であろうな」


「私達も最初に聞いたときには戸惑いましたからな」


ちなみに偉そうな方がアランさん、

もう1人がコルタさんというそうだ。


見分け……つくかなあ?


座ってると若干猫背なほうがアランさんだとわかるんだけどね。


動いてると正直わからない。


「世間のスピリットやアンデッドと異なり、

 不浄の存在、ではないのだよ。限度はあるが、浄化の魔法にも耐える」


「攻撃は軽くなるけど、痛みもない兵士が……という訳ですか」


つぶやくようなマリーの言葉に頷いて、

アランさんがコップに注いだ水を妙においしそうな仕草で飲み干した。


口に入るまでは見えたんだけどな……その後何所にいったんだろう?


『下手に調べるとスケルトンの体を維持できなくなるかもしれん。気にしないほうが良い』


ありがたい助言を胸に、つっこみを口に出さずに僕も水を一口。


なんだか乾燥した空間だからか、妙にのどが渇く。


ちなみに飲み物は2人に断りを入れてから

アイテムボックスから出したものだ。


その腰の袋から出せるなら好きに飲み食いして構わないと言われたためだ。


ついでにアランさんたちの分も出して今に至る。


「歴史を紐解くと人以外にも先祖が現世に復活し、子孫の敵を討つ、

 といった話は結構あるのだ。有名な物では人狼の祭りだろうか。

 あれは鍛えるためでもあり、もし危機に瀕していればともに敵を討つための物でもある。

 それに近いものだな。年に2度、秘密裏にだが地下の闘技場で我らと

 国の代表者が戦い、連続して勝てば戦女神から頂いた武具を貸し与えるのだ」


あれ、どこかで聞いたような話だ。


ゲオルグさんはこの戦いに勝利しているということかな?


今のところ他に話を聞かないところから……もしかして。


「最近それに合格してるのって1人だけですか?」


「うむ? あの坊主を知っているのか。世間は狭いものだの。

 そうじゃ、他の家もいいところまでは行ったが一歩及ばず。

 まあ、別に負けたからとお家がなくなるということはないんだがの」


どこかのほほんとした話し方に騙されそうになるけど、

語ってる内容は結構衝撃的な物だ。


もしかして……あっちに見えるのって。


「変なことを聞きますけど、皆さん何人ほど……眠ってるんですか?」


「……ほほう」


「ファルクさん……」


がたっと音を立てて立ち上がり、

アランさんがその顔を僕に伸ばしてくる。


色々と見透かされそうな、感情の読めない顔がこうも怖いとは思わなかったけど、

やましいところがあるわけじゃないのでじっと見つめ返す。


心配そうにマリーが僕の服を掴んでくるが、

ここで目をそらすのは違う気がした。


と、元の姿勢に戻ったアランさんがケラケラと笑い出す。


「見たか、コルタよ」


「ええ、見ましたとも。将来有望な若者ですな」


どうやら何か気に入られたらしい。


何がどうなったのかはさっぱりだけれども。


服を掴んだままのマリーもほっとした様子だ。


「今のところ、2000人ぐらいだのう」


「にっ……よく考えたら多いのか少ないのかわかりませんでした……」


数だけ聞くと、年月の割に少ないと思うべきか、

魂が望む限りとはいえ、不死となるには覚悟が当然いる。


家族との別れは最たるものだろうと思う。


僕も考えてみる。


弟、妹と別れ、もう戻れない。


出会えないというわけではないかもしれないけど、

あまり推奨はされないだろう。


ああ、考えただけで暗くなってきた。


「そう悲観するほどでもない。何かができる、これは嬉しい事でな。

 大体はその日まで眠って力を蓄えておる。

 我らのように動いてないと落ち着かん奴が例外じゃよ」


「アラン様は魔物の血を浴びすぎて肌の色が変わったと言われるほどの戦士でしたからな」


「過ぎたことだ、若い時の話だよ」


コルタさんの賞賛に照れているであろうアランさん。


骨だからわかんないけどね。


「馬鹿を言え。こうして起きておらねば誰も迎える者がおらんではないか。

 ん? よく見るとお主ら、王家の気配がするな。誰ぞと共に戦ったのか?」


「あー、そうですね。少し、竜の墓場にも行きましたよ」


詳しく、と言われるのでその食いつきの良さにびっくりしつつ、

あの場所であったことを説明すると、

2人してまた頷き始めた。


「えっと?」


「お主らは運が良いなと思っての。まだ定着しておらんようだが、

 2人とも祝福が2つ、くっついておるぞ。1つは闇の、もう1つが竜のだな。

 闇と言っても穢れてるほうではなく、力としての物だ。

 恐らく王女が浄化をした際に2人にくっついてきたのだろう。

 悪い話ではない」


骨だけに細い指先を2本立て、僕達の方に視線を向けるアランさん。


戦いばかりみたいな最初の印象だったけど、

アランさん頭いいな……。


「そういうアラン様もこうして骨になってから祝福をいくつか得ておりますからな。

 きっと戦女神様が見ていらっしゃったのでしょう。

 武具を授かった時には見事な戦いだったそうではないですか」


「それこそもう500年も前の事だ。まともに覚えておらんよ。

 おっと、話がだいぶそれたな。つまりは我々は有事の際に

 この体で国を守るべく潜んでいるというわけだ。

 もっとも、しばらく出番がないので知らずに過ごしている地上の者も多かろうな」


生前2人は一緒に戦っていたのだろうか?


きもちの良い掛け合いを聞きながら、

僕はアランさんの言葉をかみしめていた。


いざという時の備えが忘れられるぐらいの平和が

それを望んで不死となった者にとってどれだけ素晴らしいことか。


多少は寂しいのだろうけども。


「私たちは忘れませんよ。この地下に、国と民を愛して

 誇りを持ち続ける兵士がいることを」


「そうです。すごいことだと思いますよ」


アランさんもコルタさんも顔はわからないけど、

微笑んでくれたような気がした。


「せっかくだ。話を通したうえで試練に挑戦してみるかの?

 上手く行けば……んん?」


会話の途中、アランさんが言葉を止めて部屋の一角を見る。


よくよく見ると、そこには階段。


どうやら正しい入り口はあちらのようだ。


そちらから、足音。


複数の足音で、慌てた様子はない。


話からするとここは城内の地下、

ということは不審者ではなく関係者?


逆に僕達が不審者扱いされるんじゃないだろうか?


「見つかるとまずいかもしれないのでこれでひとまず」


慌てて立ち上がるが、一足遅かった。


ランタンの光が直接部屋に入り、僕達を照らす。


(ここで逃げるのも逆にまずいかな……)


後ろにマリーをかばうようにして光の持ち主と対峙を……あれ?


「偶然だね、というべきかな。こんな場所でまた出会えるとは」


「あ、おにーちゃんとおねーちゃんだ!」


なんというべきか、僕達は日常から遠い場所を歩く運命なのか。


階段を降りてきたのは、

お供を連れたフェリオ王子とシータ王女の王族2人であった。


今からどんな依頼が飛び込んでくるのか、

少しお腹が痛い気がしたのは僕だけの秘密だ。

騒動からは逃げられない!


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