カウント
山の細道を歩いていた時のことだ。
突然聞こえた。
「五」
若い女の声で、すぐ近くで聞こえたのだ。
驚き慌てふためき、必死の目で周りを見た。
しかし女どころか誰一人いない。
気のせいかと思い直し歩いていると、また聞こえた。
「四」
はっきりと同じ声で。
立ち止まり、再び周りを何度も見る。
しかし誰もいない。
戸惑いつつも歩き出すと、しばらくしてまた聞こえた。
「三」
もう一度狂ったように周りを見たが、やはり誰もいない。
近くの木の影から言ったのかとも思ったが、声はすぐ近く、耳元で聞こえたのだ。
――こんな道、さっさと通り過ぎてしまおう。
俺はそう考え、歩みは自然と早くなった。
そこで聞こえてきた。
「二」
俺は周りを見わたすこともなく、走り出した。
息が上がり、喘ぎだしたところに女の声が聞こえた。
「一」
俺は立ち止まった。
そして考えた。
次は間違いなくゼロだ。
そして女がゼロと言った時、一体何が起きると言うのか。
そう考えると背筋が思わずぞわっとした。
俺は今来た道を引き返した。
するとそれ以降はなにも聞こえなくなった。
終
気に入ってもらえたら、評価、感想をお願いします。




