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破局予定の悪女のはずが、冷徹公爵様が別れてくれません!  作者: 琴子
第12章 消せない過去

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始まりの違和感 1



 最後の浄化の地であるリトラに向けて王都を出発してから、四日が経つ。


 無事に王都での社交ラッシュを乗り越えた私はゼイン様とエヴァンと共に、連日馬車に揺られ続けていた。


「ゼイン様、見てください! 不思議な形の建物ですね」

「ああ。あれは大昔、悪趣味な領主が作ったらしく、今は観光地になっている」


 窓の外をゼイン様と眺めながら、他愛のない話をする。


 最近は移動だらけでもう勘弁だと思っていたくらいなのに、ゼイン様と一緒だと何もかもが特別に感じられ、楽しくて仕方ない。


「おえ……うえ……」

「エヴァン、大丈夫? 水でも飲む?」

「はい……俺のことは気にせず、公爵様とイチャイチャしてください……おえっ」

「流石に気にするわ」


 エヴァンは転移魔法陣が体質的に合わず、何回かに一回はこうして酔ってしまう。


 今回は具合が悪くなる方だったらしく、心配になる。


「酔い止めの薬だ、飲むといい」

「すみません」


 それでもいつも三十分ほどで復活する辺り、流石の回復力だった。


「リトラに着くまで後二時間ほどかかるみたいだから、少し寝てもいいからね」

「こんな時にハニワがいれば、ひっくり返して吐袋代わりにできたんですけどね」

「ハニワちゃんを何だと思ってるの? それに構造的にダダ漏れよ」


 どんな時でもエヴァンはエヴァンだと思いつつ、この四日間は三人でずっと過ごしているお蔭で甘い雰囲気にはならず、少しほっとしていた。


 最近のゼイン様は以前よりも色気が増していて、側にいるだけで落ち着かない。


『近頃のウィンズレット公爵様は視界にいるだけで目眩がするわ』


 ダナ様も先日そう言っていたし、ランハートの誕生日パーティーでもそんな発言を聞いた覚えがあった。いつまでも不慣れな私だけが悪いわけではないと信じたい。


「……でも、ハニワちゃんがいないのはやっぱり寂しいわ」


 魔物が溢れるリトラでは魔物対策で様々な魔道具を使っているらしく、使い魔もその影響を受けてしまう可能性があるという。


 そのためハニワちゃんは、今回もヤナと王都へ残っている。ちょうどヤナの実家の引っ越しがあるらしく、お手伝いをしてくれることになっていた。


 鞄から飲み物を出そうとしたところで床に手帳が落ち、慌てて拾い上げる。


「その手帳は?」

「ちょっとしたメモをしてありまして……」


 鞄から取り出したこの手帳には、事前に調べてきたセンツベリー侯爵領の観光スポットやおすすめのお店などを書き綴ってある。


 ゼイン様に少しでも楽しんでもらいたくて、忙しい合間を縫って色々と街中を回るプランも考えてきた。侯爵領の中心はかなりの都会らしく、何をするにも困らなさそうだ。


「……よし、この後の浄化も頑張ります!」

「ああ、ありがとう」


 この後の楽しみを胸に、最後の浄化をしっかりやり切ろうと気を引き締めた。



 

 それから二時間ほど経ち、エヴァンもすっかり元気になった頃。窓の外へと視線を向けると、レトロで可愛らしい街並みが見えてきた。


「今回は町の中心にまで魔物が出ているんですよね?」

「ああ。結局、魔物の討伐を完了できなかったとなると、かなりの数だろう」


 魔物は瘴気から生まれるため、瘴気が充満しているリトラでは魔物が溢れている。


 今日までに討伐を完了しておく予定だったものの魔物の数が多すぎて追いつかず、今もなおたくさんの魔物が蔓延っているという。


 その結果、多少の危険はあるものの、予定通り浄化をすることになったそうだ。


「……リトラの人達も一日でも早く自分の家に帰りたいでしょうね」


 住民は全員、別の町に避難していると聞く。


 そしてリトラは昔から住んでいる年配の民が多く、危険があっても生まれ育った場所から離れたくないという人々も多かったそうだ。


 そんな人達のためにも絶対にやり遂げなければと、スカートを握りしめる。


「少し先に赤い大きな門が見えるだろう。あそこがリトラの町だ」

「あれが……かなり大きな町ですね」


 だんだんと街中に近づくにつれ、嫌な感覚が強くなる。


 これまでとは比べ物にならないほど巨大な瘴気の気配に、緊張感が高まっていく。


「俺が必ず君を守るから安心してくれ。それにヘイルもいるからな」

「はい、ありがとうございます」


 魔力は十分にあるし、今回はエヴァンだけでなくゼイン様も側にいてくれるのだ。これ以上の安心できる環境なんて、世界中どこを探してもないだろう。


「グレース、手を」

「ありがとうございます」


 赤い大きな門の前で馬車が停まり、ゼイン様にエスコートされながら降りた途端、魔物の声や魔法による攻撃の音が聞こえてきた。


 今この瞬間も命懸けで戦い続けている騎士達を思うと、焦燥感が込み上げてくる。


「お嬢様、今回は大口を開けて寝ていなかったですね」

「ちょっと、ゼイン様の前で余計なことを言わないで」


 無駄に爽やかな笑顔のエヴァンに声をかけられ、しーっと人差し指を立てる。


 私はよく移動中の馬車で眠っていて、寝顔が間抜けだとからかわれていた。


「他の男には見せて俺には見せないのか」

「もう、ゼイン様までからかわないでください」


 むっとしてみせたものの、私がリラックスできるように言ってくれたことも分かっている。二人のお蔭で焦りや緊張も少し解れ、心の中で感謝した。


「聖女様、調子はいかがですか」


 今回も神官のシミオン様は別の馬車で移動し、同行している。ゼイン様もいるせいか、いつもの厳しい指導をされることはほとんどなく、内心ほっとしていた。


「はい、ばっちりです!」

「それは良かった。ですが、ばっちりといった言葉遣いは避けた方が良いかと」

「あっ、すみません……」


 しっかり今日も注意されたところで、シミオン様はこほんと咳払いをする。


「では、今回の浄化についての説明をさせていただきます」


 シミオン様の説明によると、リトラの町には北門と南門、二つの門があるという。


 私は今回、北門から浄化をしていくそうだ。


 そして中心の最も瘴気が酷い場所へ向かうのが、既に戦闘中の騎士達と連携する上で最も効率が良いとのことだった。


「この流れで問題ありませんね?」

「……はい、大丈夫だと思います」


 そう返事はしたものの、これまでとは瘴気の濃さが桁違いで、本当に全て浄化しきれるだろうかという不安はある。

その上、瘴気はすぐに広がってしまうため、一気に浄化する必要があった。


「私が確認したのは、この後に行動を把握したかということです。立派な聖女であるあなたがリトラの町を浄化できるかについて、心配など一切していませんから」

「シ、シミオン様……!」


 私が不安を抱いていることを察したのか、シミオン様は淡々とそう言ってくれた。


 いつも怒られていたから、私を立派な聖女だと思ってくれているなんて想像もしていなくて、ぐっと嬉しさが込み上げてくる。


 何より彼が思ってもないことを言う人ではないと分かっているからこそ、きっとできるという強い自信になった。


「ありがとうございます! 私、頑張りますね!」

「はい。あまり大声は出さないように」

「ハイ……」


 それからは改めて身支度をして、体力と魔力が最後まで持つよう祈りながら、ゼイン様とエヴァンと共に町へ足を踏み入れた。


「早速、雑魚が現れましたね」


 私とゼイン様の少し前を歩いていたエヴァンはそう言うと、剣を抜いて駆け出す。彼が向かう先には、三匹の狼型の魔物がいた。


 エヴァンはあっという間に魔物を斬り伏せ、息を吐く。


「……これは確かに時間がかかりそうです」


 ふっと笑ったエヴァンの視線の先には、また別の魔物の姿があった。


「君はここで浄化を始めてくれ。絶対にここに魔物は近付けさせないから」

「はい!」


 ゼイン様も魔物へ向かっていく中、私は両手を前に突き出して浄化を始める。


「公爵様って、剣もかなりの腕ですよね。今度手合わせしてくださいよ」

「気が向いたらな」


 今回は魔物の数が多いため、エヴァンやゼイン様も極力魔力を消費しない方法で魔物を倒していくという。


 

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