プロローグ
「聖女様、この町を救ってくださりありがとうございます……!」
「いえ、お力になれて良かったです。私にできることがあれば言ってくださいね」
──いつだって全て自分のためで「他人なんてどうでもいい」が口癖だったのに。
今ではまるで聖母のように他者のために心を砕き、行動し続けているなんて、どうかしているとしか思えなかった。
「グレース様は本当に素晴らしい聖女だわ」
「謝礼も受け取らないんだろう? 少しでも復興のために使ってほしいと言って」
「子ども達のための活動も続けているそうだし、まさに無欲の聖女だな」
──欲しいものは必ず全て手に入れる、手段なんて選ばない。
それが誰もが知るグレース・センツベリーで一番の友人の婚約者すら奪い、強欲悪女なんて言われていたのに。
今では誰もが彼女を持て囃し「善人」だなんて言うのだから、信じられなかった。
「ゼイン様、大好きです」
「ああ。俺も君が好きだよ」
「どうかずっとずっと、一緒にいられますように」
──男なんて掃いて捨てるほどいるのだから、たった一人に絞るなんて馬鹿らしいと言っていた彼女が、誰か一人に一生を捧げて愛されるなんて間違っている。
あんなの、グレース・センツベリーじゃない。
愛する男性や大切な友人達に囲まれ、幸せで穏やかに平和に暮らすなんて、散々好き勝手していた彼女にとって、相応しい結末ではない。
グレース・センツベリーは誰とも馴れ合わず、誰も愛さず、誰よりも傲慢で我が儘な稀代の悪女だったのだから。
いいえ、今もこれからもそうでなければいけない。
「……私が、元に戻してあげないと」




