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532話「報告と後処理」



「というわけで、一体なにが起こったのか私にもわかりません」



 気絶したソバスたち使用人が起きてきたところで、身体に異常はないか確認の聞き取りをすることにした。幸いというべきか、俺と対峙した記憶はあるものの、俺が神格を得たという荒唐無稽な事態を知られることはなかった。



「……」



 しかし、心なしかソバスたちの俺を見る目が以前にも増して強い気がするのは俺の気のせいなのだろうか? そう思いたいところだが、彼らの状態を確認するためにステータスを確認したことで不穏なものを見つけてしまう。





【名前】:ソバス


【年齢】:五十七歳


【性別】:男


【種族】:人間


【職業】:執事・Sランク冒険者



体力:15000


魔力:9000


筋力:S


耐久力:S-


素早さ:S


器用さ:S+


精神力:S


抵抗力:S


幸運:S



【スキル】


  身体強化Lv8、気配察知Lv7、隠密Lv4、魔力制御Lv3、魔力操作Lv4、


火魔法Lv4、水魔法Lv5、風魔法Lv5、土魔法Lv4、格闘術Lv8、剣術Lv6、暗殺術Lv2、集中Lv5、


宮廷作法Lv4、家事全般Lv6



【状態】


 崇拝(極大)





 一般的な執事として明らかにおかしいステータスはこの際目を瞑るとしてだ。以前確認した【忠誠】という項目が消え、新たに【崇拝】という状態になっていることが明らかとなった。



 読んで字の如く俺のことを崇拝しているということなのだろうが、さすがに自分のために死をもいとわず仕えるなどと言われては俺の精神が持たない。忠義者はいいが狂信者はいらないのである。



 とにかくだ。崇拝以外についてはどこも怪我らしいものはなく、異常性が認められないため、しばらく休んでから業務に戻るよう申し伝えた。



 それから、逃げるようにして俺は一度国王のもとを訪ねることにした。確か、俺に反抗的な貴族を対処するということで結果を報告していなかったはずだ。



 十万年も修行に明け暮れていれば、自分が今までなにをしていたのかくらいは余裕で忘れる。決して老化ではないぞ?



「という結果だ」


「なるほど、まさかクローマク公爵が事故で死んでしまうとはな」


「面倒だが、やつの代わりに新しく侯爵なり公爵なりを立てて領地を治めてくれ」


「俺としては、おまえにやってもらっても一向に構わなんだが」


「丁重にお断りさせていただく」



 俺はオファリや神の眷属になったことは上手く伏せつつ、事の顛末を国王に報告した。公爵が死んでしまうというまさかのアクシデントに困惑していた国王だったが、さり気なく俺に爵位と領地を押し付けてくるあたり抜け目がない。



 もちろんだが、そんな面倒なことをやる気はないので断った。ただでさえオファリ関係で面倒なことが待っているのに、これ以上面倒事を抱えきれない。あとは好きにやってくれ。



 報告が終わると、俺は逃げるように国王のもとを去る。これ以上長居してはいろいろと面倒な人間がやってきそうだったからだ。



 これで一連の貴族騒動については一応の決着となったが、なにか忘れていることがあるような……。



「まあ、いっか」



 忘れているということはどうせ大したことではないだろうし、思い出してからでもいいだろうと考え、俺も日常へと戻っていった。





 ――――――――――――





「というわけで、陛下。私が間違っておりました。それについては責任を取りたいと考えております」


「あいわかった。追って沙汰があるまで謹慎しておくように」



 ローランドが国王に報告して数日後、彼に敵対していた貴族たちがこぞって国王のもとへとやってきた。ローランドが彼らに施した魔法によって真人間へと変貌を遂げた彼らは、今まで自分が犯してきた悪事に罪悪感を覚えた。



 自責の念に駆られた彼らはすぐに国王のもとへ馳せ参じ、口々に犯した罪を償うと言い出したのだ。



 そんな出来事が起これば王城は混乱し他国に攻め入られる隙となるのだが、周辺国で敵対している国はセコンド王国のみであり、そのセコンド王国もローランドがかけた結界によって封じ込められてしまったため、他国が攻めてくる心配はない。



 それに加えて国王がここぞとばかりに本気を出し、やってきた貴族たちを片っ端から捌いていったため、混乱は一時的なものとして収拾した。



 しかし、いくら本人たちが償うと口にしても、いきなり多くの貴族家が潰れるのは国が運営する上ではあまり好ましくなく、シェルズ王国の上層部は対応に追われることとなってしまった。



「とりあえず、どうしようもないところは取り潰すが、基本的には爵位の降格で対処するしかあるまい」



 罪を犯したといっても、領地の運営については真面目に取り組んでいる者も多く、大罪を犯した者は意外にも少ない。精々が重税をかけて領民を苦しめた程度だ。



 しかも真人間となった彼らはすぐに取り過ぎてしまった税金の余剰分を領民たちに返還し、それによって一時的なバブル状態となっており、経済が活発化していた。



 当然その恩恵は国にもあり、のちのち上がってくる国の納税額を見て財務担当者が驚愕していたほどである。



「なにがどうしてこうなってしまったんだ!」



 なにはともあれ、国王にとっては青天の霹靂甚だしい出来事であり、悪態の一つもつきたくなるのは仕方のないことである。



 ただでさえ国の運営という多忙の日々を送る中、一部とはいえ領地経営を任せている貴族が、己の罪を独白しながら自首してくるという異常なことが起きているのだ。



 しかし、嘆いてばかりもいられない。国は待ってはくれないのだから。



「他人事だと思って好きに言いおって! なら、俺と変わるか? おぉ!?」


「……お戯れを」


「冗談ではない! 一度俺の苦しみを味わってみるがいい!!」



 などと、宰相バラセトの一言に過剰な反応を見せる国王。それから、自分がどれだけ苦労しているかという彼の独白会となってしまい、最終的にバラセトが解放されたのは、昼食の支度ができたことを告げる侍女が部屋に入ってきたときであった。

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