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【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第二章

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魔導具の評判2

本日、書籍の発売日となっております!

無事にこの日を迎えることができたのも、皆様のおかげです♡

タイトルが若干変わりましたが、これからもどうぞよろしくお願い致します(*´ω`*)

「そりゃ、怖くないわけじゃないですけど。でも、クリスさんが一緒だから大丈夫かなって思って」


「……俺が?」


今度はクリスさんがぽかんと口を開けた。


「はい。クリスさんは初めて会った日から、いつも私を守ってくれました。すごく強いってことも知っているので、クリスさんが一緒なら安心かなって……。あ!でも、油断はしてませんよ?十分に気を付けるつもりですし、足手まといにならないよう、勝手な行動も慎みます。それに、大したことはできませんが、魔法でお手伝いできるなら何でもします!」


「「「…………」」」


あ、あれ?


何でだろう、三人とも押し黙ってしまった。


「やっぱりそうなるわよね……」


そしてなぜかルナまで呆れたように呟く。


ええっ!?ルナにはこの反応の予想がついてたってこと!?


「えっとそれから、もちろんカイルさんたち、独身寮のみんなが一緒なのも心強いです!気心知れた人が多いっていうのも安心ですし!それに、騎士として名高い辺境伯までご一緒だなんて、私ってばすごく恵まれてますよね!」


みんなの様子に、慌ててそう続けると、最初に石化を解いたのは辺境伯だった。


「ははははは!これは嬢ちゃんが一枚上手だな!クリス、そういうわけだ。ちゃんと守ってやるんだな」


「……言われなくても、傷一つつけさせませんよ」


いや、転んだりするかもですし、それは無理じゃないですか?


そう突っ込みたくなったけれど、この空気の中でそれを口にできるほど、私は無神経ではない。


「全く……末恐ろしいね」


「うーん、無意識ってのがすごいですよね」


カイルさんと、いつの間にか話を聞いていたらしいセシルさんまでもが、うんうんと頷き合っている。


皆さん私を置いて話を進めていますけど、一体どういう意味!?


そんな私の質問には答えてくれず、カイルさんたちは話を終え、騎士たちに合図を出して目的地の森へと出発するのだった。






ニ時間ほど馬で移動し、森の手前まで来て、一度休憩をとることになった。


魔導具の納品は昨日済ませていたので、水筒はすでに全騎士へと支給されている。


休憩時の水分補給でも、いちいち水を配給せずに済むので楽だなと、そこかしこで声がした。


中身のなくなった人だけ水を補給するようにしたようだ。


でもやっぱり、大の大人だとペットボトル一本分の量では少ないのか、すぐになくなる人が多い。


もう少し容量拡大できると良いのだが……こればっかりは私の時空属性魔法のレベルにかかっているからなぁ。


レベルアップまでは、もう少し大きめの水筒を作って、個人の好みでサイズを選んでもらうのが良いかもしれない。


うーん……と悩みながら騎士たちを観察していると、辺境伯が声をかけてきた。


「どうかしたか?嬢ちゃんの作ったこのスイトウ、なかなか良いじゃないか。騎士たちの評価も良いぞ」


「そうですね……でも、まだまだ改善の余地があるなと思いまして」


「ほう?嬢ちゃんは向上心が高いのだな」


そして、よしよしと撫でられた。


…………。


いやいや、ここはどんな?とか、なぜそう思う?とか聞くところじゃないですか?


「ああ、俺に助言を求めるのは無駄だぞ。考えることは苦手だからな!」


……はい?


「“感覚派”だとよく言われる。そして、教えるのが下手すぎて“教師には向かない”とも。作戦とか、そういうのは得意な奴の仕事だ」


――――ええっと、つまり。


「嬢ちゃんの魔導具についても、珍しくて興味はあるが、何がどうなってそうなっているのかは全く気にならないからな!便利ならばよし!」


あークリスさんが“脳筋”って言ってたのは、こういう意味もあったのね……。


そういえばお店に来てくれた時も、魔導具の用途や使い方は聞いてきたけど、仕組みについては何も問われなかった。


教えるのが下手って言ってるし、剣についても、いわゆる天才肌なのだろう。


そりゃ感覚で動いているなら、人に教えられないよね。


“ぐわっ!”とか、“ぶわっ!”とか、擬音語で伝えようとするやつだ、きっと。


見た目はちょっと厳つくて恐いけど、強くてすごく頼りになりそうなイケオジで、しかも辺境伯なんて地位まである方なのに……と、ちょっぴり残念な目で見てしまったのは、許してほしい。


そして、ますますクリスさんのお父様というのが疑わしい。


私のジト目に気付いた辺境伯だったが、不快な顔はせず、わははと笑って、今度はがしがしと少し乱暴に私の頭を撫でた。


「ちょ、辺境伯様!」


「だが、そうだな。意外と別の方向から物事を考えると、解決策が見つかるかもしれんな。賢い嬢ちゃんのことだ、きっと良い案が閃くはずだ」


流石に止めてほしいと声を上げたが、見上げた先に見えた辺境伯の目は、クリスさんと同じ、綺麗な深い色の中にしっかりとした光をたたえていた。


別の方向から、かぁ……。


となると、容量を増やすのとは違う方法ってこと?


ボサボサに乱れた髪をおさえて頭を捻ると、頑張れと言い残し、辺境伯は去って行った。


クリスさんは辺境伯のことを“脳筋”って言ってたけれど、それだけじゃない気もする。


例えるなら……答えをすぐに言わずに部下の成長を見守る上司、みたいな?


「ふーん。あのオジサン、ただの考えなしってわけじゃなさそうね」


ルナも同じように思ったのか、騎士たちと談笑する辺境伯の背中を、じっと眺めている。


クリスさんやベンデル男爵からの言葉もあって、単純明快な方かと思ったけれど……。


意外と、そうじゃないのかも?

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