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【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第二章

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新しい魔導具2

「おーおチビちゃん、相変わらず色々持って来てんなぁ」


「アイザックさんの意見も聞きたくて。すみません、お仕事中に」


色々と騎士たちのための便利グッズを作ってはみたが、やっぱり現場と売る側の声も聞きたい!ということで、その両方の立場を知っているアイザックさんを頼って、ギルドのアイテムショップを訪ねてみた。


ちょうど休憩しようと思ってたから気にするなと言ってくれて、ほっとする。


休憩を潰して申し訳ないと思いつつ、アイザックさんにお礼を言って応接室へと案内してもらう。


ソファに座り、机の上に試作品たちを並べていると、胡乱な目で見られていることに気付いた。


「……まぁ、もう驚かねぇけどよ。どうやってそんな大荷物持って来れたんだって、普通は怪しまれるからな?」


「あ、あはは~。そこは企業秘密ってことで!さっ、作った物の説明していきますよ!」


確かに事情を知っているアイザックさんの前だからって、油断しすぎたかもしれない。


こちらも陛下の方から、協力者としてある程度の事情は伝えてもらっている。


でもさすがに、精霊王様のことや容量百倍バッグのことは誰にも話していない。


幼女姿のことだって、陛下は契約精霊(ルナ)の力だって思ってるしね。


こうしてやらかしてしまうことを考えると、カイルさんといいアイザックさんといい、事情を知っている協力者を作っておくのは賢明だった気がする。


……それを提案してきたということは、陛下の予想通りということかしら?


うーん、短い付き合いだが、そんな私の迂闊さを知られているとは……情けないと言うべきか、陛下がすごいと言うべきか。


「んで?見た目じゃ分からん物が多いな。用途を説明してくれるか?」


「あ、ごめんなさい。えーっとまずこれ、水筒といいまして……」


思考のズレてきた私をアイザックさんが引き戻してくれて、魔導具の説明を始める。


試作品を作ったのは、水筒の他に、シュラフ、合羽、クーラーボックス。


聞いてお分かりの通り、キャンプ用品を参考にしている。


シュラフ、つまり寝袋だが、野営の際、基本的に騎士はその辺に転がって寝ているらしい。


さすがに寒い季節は毛布などを巻いているということだが……それにしたって雑すぎる。


折り畳み式のシュラフ、前世のキャンプ用品店でよく見たが、本当にコンパクトで軽量、持ち運びも楽々だった。


何とか真似できないかなと試行錯誤して、いわゆるミノムシ型で素材はダウンにして保温効果を高め、弱点の湿気は魔法付与でカバーすることにした。


もちろん軽量化も付与したので、男性用でも五百グラムくらいかな。


「お、ぺしゃんこかと思いきや、広げるとふわふわしてるな」


ダウンだからね、かなり軽いわりに寝心地も悪くない。


そして合羽、これは既存のものがあるにはあるが、重くてかさばるとの弱点が。


でも雨天時には必須だし、寒さしのぎにも使えるから、どうにかして使いやすくならないだろうかと、ベンデル男爵直々にリクエストがあった。


前世で合羽といえば、ナイロン素材。


でもこちらに撥水加工や防水透湿加工などがあるわけがなく、ナイロン素材なんて見向きもされていない。


しかし私には魔法付与がある。


裏技万歳。


「なんだこりゃ、めちゃくちゃ軽いじゃねーか!ちゃんと水はじくの……はじいてる、な」


「でしょ?しかも合羽って、汗かくと蒸れたりしません?それも通気性を良くして少しは快適になってるはずです」


実際に霧吹きをかけて確かめるアイザックさんに、えっへんと胸を張る。


何度も言うが、魔法付与、便利すぎる。


そして最後がクーラーボックス。


食材を長持ちさせるために、あると良いのではと考えて作ったものだ。


これ、保冷庫という冷蔵庫的なものが存在しているので、存在しているだろうと思っていたのだが、なかった。


どうやら保冷庫には、氷の魔力が込められた鉱物が使われているらしい。


そう鉱物、魔石。


石=重いのだ。


そしてクーラーボックスの容量を冷やそうと思ったら、なかなかの重さの魔石が必要となる。


『そんなくそ重いもの、遠征に持って行けるか!』とベンデル男爵も言っていた。


そりゃそうだ、ただでさえ荷物が多いのに、小さくてもかなりの重さがあるなんて、使えないに決まっている。


それならばということで、プラスチックに似た素材でのクーラーボックスを作ってみた。


ついでに保冷バッグも。


といっても、魔法付与のおかげで保冷剤を入れなくてもひんやりしているので、簡易冷蔵庫みたいな感じかな?


ボックスとバッグ、どっちが使えるかはベンデル男爵たちに判断してもらえば良い。


「おっ、本当に中は冷えてるな。んー?この銀色のはなんだ?」


「それが保冷の秘密なんです!」


お弁当とかの保冷バッグの内側についている、アルミニウムをフィルムに付着させたあれ。


魔石を砕いた粉も一緒に付着させ、冷却魔法の効果も高めている。


それをボックスとバッグの内側に貼り付け、保冷の効果も高めている。


もちろん魔法だけでもある程度の効果はあるけど、素材にもこだわった方が効果は上がる。


「どれもこれも、使えると思うぞ。少なくとも俺が冒険者時代にあったら、絶対に買ってたな!」


にぱっとアイザックさんが、嘘のない本音だとひと目で分かる表情で笑う。


「本当ですか!?やったぁ!」


だから私も、素直に喜びを口にできる。


「お前さんの魔法付与がないとこれだけの効果は期待できねぇが……このシュラフや保冷バッグは、付与がなくてもそこそこ使えそうだな」


あ、そうか。


「そうですね。シュラフは毎日干したり風属性魔法で乾燥したりすれば、かなり湿気を抑えられるかと。保冷バッグも氷の魔石の効果さえあれば、ある程度の時間保存が利くと思いますよ。バッグくらいの大きさなら、そんなに大きい魔石じゃなくて良いですし。冒険者さん用に、ですよね?」


アイザックさんは冒険者ギルドのアイテムショップ店長だ。


冒険者たちにも使わせてやりたいと思ったのかもしれない。


「おチビちゃん、よく気が付くなぁ。そうだな、騎士団にこれらが浸透したら、他の職人たちに作り方を教えてもらえると助かる」


陛下だって元冒険者だ、騎士団内だけで独占しようとは思わないだろう。


「落ち着いたら、陛下かベンデル男爵に聞いてみます」


そう答えると、アイザックさんは私の頭をがしがしと撫でた。


ちょっぴり痛かったけれど、アイザックさんが嬉しそうな顔をしていたから。


「もう、頭ボサボサじゃないですか!」


笑って、そう言うだけにとどめたのだった。

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