王都で幸せの魔導具店 はじめました
本日、前のお話と同時に投稿しております。
ひとつ前からお読み下さい(・∀・)
「ついに!この日が来たわね!」
「ルナってば、はりきりすぎ。オープン初日からそんなにお客様は来ないと思うよ?口コミが広まって、少しずつ増えると良いなぁとは思ってるけど」
キラキラした表情でそわそわと落ち着きのないルナを、オープンの準備をしながら笑う。
早いもので――――いや、本当に早い。
王様のうしろ盾ってすごい。
もうお店のオープン日だ。
この二ヶ月、建物を探して内装工事をして、必要なものを揃えて……って、ほとんど陛下が手配してくれた、王宮の人が請け負ってくれたの。
私は意見を言うだけ。
しかもきちんと取り入れてくれている。
私好みの、私の小さなお城。
「うふふ」
「なによ、ティアだって浮かれてるじゃない」
そりゃそうだ。
浮かれないわけがない。
実は今朝、王宮を通して手紙が来た。
誰からだろうと封を開けてみれば、なんと両親からだった。
どういうわけか、そこには私を自由にしてくれるとの内容が書かれていた。
シャーロットとも、少し前に話す機会を設けて和解しているし、気がかりだったアンナのことも、元気にしていると聞けて、ほっとしている。
今度手紙でも書こうかなと思っているところだ。
これで心のモヤモヤはなくなった。
こんな晴れ晴れとした気持ちで開店を迎えられるなんて、少し前までは考えられなかった。
「さあさあ、そろそろ開けるわよ。あ、女性がふたり、覗いてるわ。声かけてきましょう?」
窓の外には、ちらちらと店の中を覗く姿がある。
お客様だと良いな。
「いらっしゃいませ!ちょうど今、オープンするところです。ようこそ、“幸運の月”へ。あなたに幸せをもたらしてくれる、素敵な出会いがありますように」
* * *
「ふふ、ふたりとも元気そうで良かったわ」
そんなティアとルナを、天上から二対の目が見守っていた。
ひとりは、時空の精霊王。
まるで我が子の成長を喜ぶかのような、慈しんだ瞳でふたりを見つめる。
「ずいぶん目にかけているんだな。精霊はともかく、人間相手に珍しい」
そしてもうひとり、人間には“神様”と呼ばれている、その人物にふさわしいジョブを言い渡す存在。
「うーん、あの子は私が向こうの世界から連れて来たようなものだからね。とてもきれいな魂だったから、あそこで終わらせてしまうのは勿体ないなと思って。あのクリスって子も」
時空の精霊王。
時を超え、空間を超える者。
ここではない世界とも、もちろん繋がっている。
「あのお嬢さんなら、きっと心を慰めてくれると思ったの。前世での苦難を抱えたまま、転生してしまったあの子を」
そこで精霊王は、開店祝いだと花を持って現れたクリスを見つめた。
相変わらず、セレスティアの前だと表情が柔らかい。
「ふん。まあ、私が出した試練を乗り越えて、魔導具師へと進化できた娘だからな」
神もまた、セレスティアの努力と純粋さを認めた。
「磨けば光る。必ずしも自分がそうなるとは分からない中で、それでも精一杯やろうとする姿勢に、好感を覚えたわ。それに、私のところの子も助けてくれたしね。ルナ、なんて、良い名前をもらったわね」
そうして精霊王は、ルナが一生懸命セレスティアの役に立とうと、あちこち動き回る姿を見て、ふふっと笑った。
「これからあの子たちがどう成長するのか、楽しみね」
いつになく嬉しそうな精霊王の表情に、神もまた、ひとつため息をついた後、そうだなと頷き返した。
それから――――
まるで冬の夜空に浮かぶ月のような髪色の女の子が営む、身につけているだけで幸運を呼び寄せる雑貨を売る店が、王都民の間で話題になるのは、もう少し先の話。
ということで完結となります。
感想や評価等、たくさん応援して頂き、ありがとうございました!!
そして無くならない誤字の数々も教えて下さってありがとうございます(^^;)
落ち着いたら、後日談とかショートストーリーを何話か書くかもしれません。
なにはともあれ……
最後までティアたちのお話にお付き合い頂き、ありがとうございました(*^^*)♡




