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【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第一章

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妹の本音2

思わず口に出てしまった。


あれは間違いなく、使える人が限られている、闇属性の魔法だ。


呆気にとられる私とは対照的に、シャーロットは、わなわなと体を震わせている。


「そっちがその気なら!」


そして目を鋭くさせると、次々と魔法を繰り出していく。


無数の風の刃が私たちを取り囲むが、クリスさんが剣や魔法でそれを弾いていく。


情けないことに、実戦経験のない私は、クリスさんに守られるだけになってしまう。


でも、足手まといなんてごめんだ。


せめて防御魔法だけでもと思い、震える足を叱咤し、手をかざす。


魔法障壁(マジックバリア)


なんとか詠唱することができた魔法が、シャーロットの攻撃を防いでいく。


けれど、防いでも薙ぎ払っても、シャーロットの魔法は止まない。


こうなったら、時空魔法で時を止めて、シャーロット自身を拘束するしか……。


ちらりとルナを見ると、小さく頷き返してくれた。


「クリスさん、私が魔法であの子の動きをしばらく止めます。その間に、魔法でも物理でも構いません、動きを封じて下さい」


魔法障壁で攻撃を防ぎながら、小声でクリスさんに囁くと、少し驚いたような表情になったが、分かったと返事をしてくれた。


この際、時空魔法が使えることがバレてしまうのは、仕方がない。


そんなことよりも、今は。


時間停止(ストップ)


シャーロットを止めるのが先だ。


「今です!クリスさん、お願いします」


拘束(リストレイント)


そうクリスさんが唱えると、黒いモヤのようなものが、シャーロットをうしろ手に縛り上げ、足も拘束した。


停止状態から回復したシャーロットは、自分の状況に気付くと、観念したのか、悔しそうに唇を噛み、震える口を開いた。


「まただわ!どうして?どうして、お姉さまには、みんなそうやって力を貸すくせに!認めてもらっているくせに、何もない風に振る舞って……!わた、私だって、本当は……」


そして、膝から崩れ落ちると、ぼろぼろと涙を流した。


そんなシャーロットに私は戸惑う。


なんて声をかけて良いのかも分からない。


だけど、シャーロットが私のことで悩んで、悲しんできたということは分かった。


「!?おい……」


そっと一歩踏み出し、シャーロットに近寄ろうとする私の腕を掴んで、クリスさんが止めようとした。


私はそれに、ふるふると首を振って大丈夫だと告げる。


少し戸惑うような表情を見せながらも、クリスさんは私から手を放してくれた。


そして、一歩一歩、シャーロットに近付く。


俯いた肩は震え、泣きじゃくっているのが分かる。


侯爵家にいた時は、こんな姿見たことなかった。


いつだってみんなに愛されて、褒められて。


私の前では無邪気に振る舞っていた、たったひとりの妹。


だけど、私は?


シャーロットに、姉として接してきたかしら?


前世を思い出したあの日から、距離を取ったのは、私も同じじゃなかった?


どこか他人を相手にするように、幼い我儘に付き合うことも、窘めることもせず。


両親からの愛情を失ったからといって、それを妹にまで押し付けるのは、間違っていたのではないだろうか?


甘やかされて、ちやほやされて。


それだけで彼女が幸せだと、なぜ思ったのだろう。


もしかしたら、シャーロットはずっと、私を姉として見てくれていたのかもしれないのに。


ううん、この姿の私を見ても、『お姉さま』って気付いて、呼んでくれた。


小さくなったシャーロットをしばらく見つめた後、すっと腰を下ろした。


「ごめんなさい」


囁くような声で、謝る。


背を向けているし、このくらいの音量なら、クリスさんには何を言っているかまでは、聞き取れないはずだ。


「私、ちゃんとあなたを見ていなかった。あなたはずっと、私を見てくれていたのに。だから、ごめんなさい」


声は小さいけれど、しっかりと伝わるように言葉にする。


こうやって心から謝ったことも、今までなかったかもしれないね。


すると、シャーロットからは、まるで小さな子どもが泣いた時のような嗚咽が聞こえてきた。


「ほら、だめよそんなに泣いては。侯爵家の令嬢ともあろうものが、人前でそう簡単に涙は見せちゃいけませんって、マナーの先生にも習ったでしょう?」


涙をお拭きなさいと、ハンカチを差し出す。


なんの変哲もない、ただのハンカチの端にイニシャルの刺繍をしただけのもの。


「お姉さま……今までずっと、ごめんなさい」


泣かないのよと言ったのに、シャーロットの流す涙は、なかなか止まることはなかった。


やれやれとその背中をさする。


こんな風に叱ったり、慰めたりするのも初めてかもしれない。


「今は人を待たせているから無理だけれど、今度、ちゃんと話をしましょう?」


それまでただ泣くだけだったシャーロットが、この時だけは、しっかり頷いてくれたのだった。

ざまぁ希望だった方、すみません……(^^;)

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― 新着の感想 ―
えぇ、許しちゃうの?
[良い点] こんばんは。最近この作品を見つけて此処まで読み進めました。 まぁ人によって捉え方は千差万別ですので色々な意見があるでしょうが。個人的には『子は親の背中を見て育つ』という言葉がある以上、や…
[一言] 城内で許可もなく魔法をぶっ放したら普通は犯罪では?それを許したら色々まずい気がするかと… たしかに色々葛藤があったのかもしれないけど、年寄と婚約させる原因を作ったやつを許すのは厳しい気が……
2022/01/10 21:02 退会済み
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