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【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第一章

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私を取り巻く変化2

あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願い致します(*^^*)

「?この大型のフライパンで作った玉子焼き、重いだろうから俺がと思ったのだが……。玉子焼き器でもあれば、ティアにも扱いやすいのだろうがな」


頭上から聞こえる美声と、胸キュンなシチュエーションにどぎまぎしていたのだが、どうやらそれは私だけだったらしい。


そりゃそうだ。


何度も言うが、私は幼女。


「あ、ソウデスネ。すみません、ではお願いします」


クリスさんはそんなつもりじゃないのに、なに勝手にドキドキしてるんだ私。


心の中の自分に、バシッと喝を入れて冷静になる。


確かに大きい丸形フライパンで作っただし巻きは、かなりの大きさだ。


フライパンを持ち上げるのも難しいし、私では落としてしまうかもしれない。


あれ?でも、この世界に玉子焼き器なんてあるのかしら。


まだ見たことないけど……クリスさんが知ってるってことは、きっと存在してるのね。


まあ、鍛冶にも慣れたことだし、自分で作っても良いかもしれない。


「じゃ、どんどん焼くのでお願いしますね」


ひとりで顔を赤くしているのがバカらしくなってきた。


よし、今度は形が崩れないように、集中集中!


「そんな表情で頬を染められると、中身が大人だと分かっている俺には、目の毒だな……」


クリスさんのそんな呟きに気付かないくらいには、私は綺麗にだし巻きを作ることに集中していたのだった。






「ティア、君はなんて物を作ってくれたんだい?」


仕事を終えて帰るにはずいぶん早い時間。


夕食の準備中だった私を捕まえ、眉間をぴくぴくと痙攣させたカイルさんが、帰寮して開口一番、そう言った。


「え!?ひょっとして、何か不具合でもありましたか!?」


迷った末、二日間おいて今朝渡した例のタオルと中敷き、多分それのことだろう。


自分のお試し用にと作ったやつは何ともなかったのに、何か不手際があったのだろうか?


不安になって見上げると、そうじゃないと首を振られた。


良かった、失敗作だったわけじゃないみたい。


でも、じゃあ何?


「悪いが、団長から呼び出しだ。今からクリスと一緒に王宮に行ってくれるか?陛下が話をしたいらしい」


そう言うカイルさんのうしろから、クリスさんも姿を現した。


……っていうか、え? 


王宮?


呼び出し?


陛下、って……。


「えええええー!?」





「嘘でしょ……」


あの後、さすがにエプロン姿で登城するわけにもいかないので、簡単ではあるが身だしなみを整えた。


そうして乗り込んだ王宮へと向かう馬車の中、げんなりした顔でクリスさんと向かい合う。


カイルさんは別にやることがあると言われ、別行動だ。


つまり、ふたりきり。


王宮までほんの数分とはいえ、非常に居心地が悪い。


なぜかといえば、クリスさんがものすごく険しい顔をして、なにやら考え事をしているからだ。


普段は饒舌とまでは言わないが、ある程度の会話はしてくれるのに。


こういう雰囲気だと、僅かな時間であっても長く感じてしまうものだ。


ああ、早く着いてほしい。


いや、その後のことを考えると、着いてほしくない気もする。


内心あわあわとしていると、チリンと鈴の音が鳴った。


そうだ、ルナも一緒に来ていたんだった。


馬車に乗る時に、駆け込むようにして来てくれたのだ。


「……その猫、本当にお前に懐いているな」


その時、それまで黙っていたクリスさんが口を開いた。


「え、あ、はい。そうですね。もう、私の家族のようなものですから」


ごろごろとルナの首元を撫でる。


ふふ、気持ち良さそう。


しかし、口にしてからはたと気付いた。


しまった、設定では、両親を亡くしたことになっているんだった。


これでは天涯孤独の少女の、哀愁漂う姿に見えてしまうのではないか!?


ばっと顔を上げると、気まずそうに私から目を逸らしたクリスさんがいた。


あ、まずい。


「あ、いや、別にそういう……」


「お待たせいたしました。到着しました」


なにか気の利いたことを言わなくては!と思ったら、御者の方から到着を知らされ、クリスさんが立ち上がった。


「行こう。気を付けて降りろよ」


先に馬車から降りて、私の前に手を差し出してくれた。


うう〜。


クリスさんてば、騎士様だからか、こういうことが自然にできるし、非常に様になる。


こちとら侯爵令嬢とはいえ、中身は引きこもり歴の長い庶民なんです。


ジョブが与えられてからは、こんな扱いされたことないんですよ。


だからといって拒めるわけもなく、結局手を取って降りることになるんだけどね。


「……ありがとうございました」


一応お礼は言う。


恥ずかしいのは私の勝手な都合で、クリスさんには関係ないのだから。


それなのに、それを聞いたクリスさんがぷっと吹き出した。


「顔、赤いけど」


「!こ、これは!慣れてないから……!」


きっと子どもなのになに考えてるんだとか、そんなことを思われているのだろう。


恥ずかしい。


これ以上口を開くと、ますます余計なことを言ってしまいそうで、ぷいと顔を背けて歩き出す。



そのうしろから、まだくすくすと笑う気配を感じるが、知らんぷりだ!


「これから国王陛下に会うっていうのに、緊張も吹き飛んだよ。ねえルナ?」


にゃあ!と返事をする、腕の中のルナと話していると、聞き覚えのある声が前方から聞こえてきた。


「その姿……でも……」


私は、油断していたのだ。


こんなところで、私の知っている人に会うはずがないと。


はっとして前を向くと、そこには。


「セレスティアお姉さま……?」


久しぶりに見る、相変わらず天使のような可憐な風貌。


実の妹、シャーロットの姿があった――――。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] よしシャーロットを魔法の収納袋でサクッと殺ってしまいましょう。先手必勝です。 シャーロットがここに居るのは十中八九国王の差し金だと思うので戦闘準備をしたほうが良さそうですね。自由は自分…
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