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【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第一章

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38/92

鍛冶師のはずが⁉3

************

セレスティア・エーレンシュタイン(偽名・ティア)

エーレンシュタイン侯爵家 長女 十五歳(七歳のフリをしている)

基本LV21

HP:208//328

MP:1005//1125

ジョブ:魔導具師(スキルのレベルアップにより、進化しました)

状態:健康

魔法:火属性魔法 LV5

   風属性魔法 LV5

   水属性魔法 LV5

   土属性魔法 LV6

   光属性魔法 LV2

   闇属性魔法 LV0

   時空属性魔法 LV3

スキル:鍛冶 LV5

    裁縫 LV8

    編み物 LV8

    料理 LV6

    魔法付与 LV8

    鑑定 LV1(ジョブの進化により、追加されました)

************


「…………」


シュッ。


待って。


ちょっと待って。


一旦落ち着こう。


開いたステータスを一度消して、よく考える。


魔法やスキルのレベルが上がっているのは分かる。


このところ頑張っていたもの。


それなりに上がっているのも頷ける。


だけどひとつ、いやふたつ、解せないことがある。


ジョブ:魔導具師(スキルのレベルアップにより、進化しました)ってなに!?


スキル:鑑定 LV1(ジョブの進化により、追加されました)ってなんなの!?


「ジョブ進化、おめでとうティア。そのうちなるだろうな〜とは思ってたんだけど、思っていた以上に早かったわね!」


あっけらかんとしたルナが、拍手をする。


「えっ!?ルナは知ってたの?っていうか、さっき天上界から知らせがあったって言ってたよね?どういうこと?」


事情を知っているらしいルナをがしっと掴み、ぶんぶん振って説明を求める。


ちょっと力を込めすぎてしまったらしく、苦しがられた。


ごめん、つい。


「もう……。っていうか、本当に気付かなかったの?ピロリンとかキラリンみたいな音が鳴ったでしょ?」


「あ、そういえば……」


グレンさんのお店で聞いたピロリンッという音、あれがそうだったらしい。


そしてルナは、私のジョブの進化についても教えてくれた。


聞けば、鍛冶師のようなものづくりジョブは、固定スキル(鍛冶師である私は鍛冶)と四属性の魔法、それに他のつくりもの系のスキルのレベルを上げると、魔導具師というジョブに進化するのだとか。


私の場合、鍛冶と魔法の他に、裁縫や編み物といったスキルだ。


ここ最近、鍛冶スキルと火属性魔法レベルが上がったため、魔導具師に進化するための条件を満たしたらしい。


そしてその進化とともに、魔導具師の固定スキルである鑑定が使えるようになった、と。


私は元々持っていたけれど、魔法付与もそうなんだって。


「まあ材料に精通していないと、魔導具は作れないからね。一度使ってみると良いわ。素材の性質とかが分かるはずよ」


ルナにそう言われ、恐る恐る鑑定を使ってみることにした。


とりあえず、ポリウレタンっぽい生地からやってみよう。


「鑑定」


************

布生地

ポリウレタン素材で作られている。

クッション性があり、足の疲れを軽減することができる。

汗を掻いたときや、雨の時は蒸れやすい。

************


……す、すごい! 本当に使えた!


ステータスを見るときのようなウィンドウが現れ、そこに中敷きを作るための情報が書かれていた。


「術者が今知りたい情報をピックアップして、教えてくれるのよ。便利でしょ」


「うん、すごい!他のも鑑定してみるね」


そして色々な布を鑑定して、クッション性のあるものと、蒸れにくい素材のものを組み合わせることにした。


「じゃあまず、ふたつの布を靴に合わせた形に切って……」


「ちょっと待った」


ハサミを手にして、いよいよつくり始めるぞ!というところで、ルナがストップをかけた。


「魔導具師になったんだから、そんな面倒な工程、魔法でぱぱっとやれば良いのよ」 


どういうこと?と首を傾げると、指先に魔力を込めて布を滑らせるだけで良いのだと教えてくれた。


それもイメージが大切だと言うので、指先に意識を集中させて布にあてる。


ルナに教わった通り、靴底の形をイメージしながら滑らせていく。


すると、綺麗な切り口でするりと切れていった。


次はこれを縫い合わせる。


これも同じように、縫い合わせるイメージで、ぎゅっぎゅっと押すように、ゆっくり形をなぞっていく。


その際、水と風の魔力を込めて、冷感と送風の効果を付与していく。


「すごい……簡単にできちゃった」


そうして出来上がった中敷きを手にして、感動する。魔導具師、すごい……!


「そうやって魔法を使って、様々な効果のある道具を作るジョブを、魔導具師っていうのよ。そう考えると、鍛冶師も捨てたものじゃないでしょ?人間の貴族はバカにしているみたいだけど、本当は磨けば光るジョブなのよ?」


得意気にルナが解説してくれる。


そっか、鍛冶師だからって、バカにする人や同情的な目を向けてくる人ばかりだったけど、胸を張って良かったんだ。


「周りに流されずに、自分にできることをコツコツと積み重ねてきたティアには、ぴったりなジョブだと思うわ。だから、おめでとう!」


満面の笑みでルナが称えてくれる。


今までの私を、全部受け入れてくれた気がして、胸がきゅうっとなって、目に涙が滲んだ。


「えっ!?ご、ごめんティア。あたし、なにか変なこと言った?」


焦ったルナが私の周りを飛び回る。


よく分からないけどごめん!って、あせあせしているのが可笑しくて、ふふっと笑った。


「違うの、嬉しくてつい。ありがとう、ルナ」


エーレンシュタイン家を出て、色々あったけれど、ここまで来れたのは、ルナのおかげだ。


そりゃあ、クリスさんたち騎士のみんなやグレンさん、アイザックさんたちにもお世話になっている。


だけど、ずっと一緒にいて、励ましたり、話を聞いてくれたりしたのは、ルナだ。


ひとりだったら、もっと心細い旅になっていた。


いつだって、ルナが明るく笑ってくれていたから、頑張れたんだ。


「私が私らしくいられたのは、ルナがいてくれたおかげ。だから、魔導具師になれたのも、ルナのおかげだよ。ありがとう」


たくさんの感謝の気持ちを込めて、そう伝えると、ルナがぶわっと真っ赤な顔をした。


「っ!も、もういいから!ほら、さっさと次のを作るわよ!タオルにも付与するんでしょ?」


照れ隠しなのだろう、早口でまくし立てるのがかわいくて、あははと笑うと、なんで笑うんだと怒られた。


だけど、それがなんだか嬉しくて。


私はまた、さらに声を上げて笑った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 毎日の更新ありがとうございます♪ 通勤時間まで待ちきれず、起きたらすぐに読むのが習慣になってしまいました!笑 タイトルの魔道具師が登場しましたね〜。 鑑定スキルもとっても便利で、これからま…
[良い点] 何事も極めれば凄い力になるという典型例ですね。 スキルも伸ばしていけばまだまだジョブも進化しそう。 [気になる点] 魔導具師のジョブ…お料理に使えないですかね? お肉や野菜を魔法を使って唐…
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