鍛冶師のはずが⁉1
また短め……すみません(T_T)
「なるほどね。タオル、私は良いと思うよ」
「そうだな!これから暑くなるしなー」
翌朝の食堂。
落ち着いてきた頃に、一緒にいたカイルさんとアランに昨日の話をすると、ふたりからも良い反応が返ってきた。
「あ、オレは靴にもそういうのがあると良いと思うな。ほら、夏場って蒸れるんだよなー」
アランがうんざりしたように呟いた。
そっか、騎士はサンダルなんて履かないもんね。
ショート丈とはいえ、夏にブーツなんて、前世じゃ考えられない。
「ああ、確かに。虫に侵されるヤツも多いからな」
「虫……ですか?」
なにかよく分からないけれど、気持ち悪いなぁと思いながらカイルさんの話を聞いていると、どうやら水虫のようだ。
ああなるほど……と嫌に納得してしまった。
そんなに詳しくないけど、原因は菌の繁殖だった気がする。
とりあえず通気性を良くすると良いんだよね?
靴を作るのは……無理。
さすがに無理。
なら中敷きとか?
水と風の魔法を付与して、冷感と通気性を良くする効果を付与すれば、履いているときも蒸れないし、脱いだ後も靴の中を乾かしてくれるようにして……。
「それ良いな!ほら雨の後とか、湿地に行くとなかなか靴が乾かないしさー」
お、アランの反応は良さそう。
カイルさんも作ってみると良いんじゃないかと言ってくれた。
この様子を見ると、ふたりは水虫ではないようだ。
でも意外と若い人にも多いって、前世でも聞いたしなぁ。
同じようにブーツを履くことの多い冒険者にも、需要があるかも。
「商品開発も良いが、バレないようにしろよ」
そこへ、食事を乗せたトレーを持って、クリスさんが現れた。
どうやら今の話を聞いていたらしい。
「そうだな。ではまず、試作品を作ってもらって、騎士団で使ってみよう。特殊な繊維を開発したことにしておくか」
確かにいきなりギルドで売るよりも、そっちの方が安全かも。
カイルさんに、分かりましたと返事をする。
「それにしても、ぽんぽんとよくもまあ、思いつくものだな。町でのお前の商品の評判も、かなり良いみたいだし」
アランの隣に座ったクリスさんが、フォークを手に取りながらそう言った。
あれ、そんなことまで知ってるなんて、ひょっとして気にかけてくれているのかな?
「考えるのは良いが、ちゃんと俺たちに相談はしろよ。自分で思っている以上に、お前のスキルは貴重なんだ」
そしてクリスさんは、私の作った玉子焼きをぱくっと口に入れて、美味いと言ってくれた。
表情はそんなに変わらないけど、心配してくれているのが十分伝わる。
「はい、気を付けます。クリスさんたちの仕事が快適になるようなものも、たくさん考えますね!」
その気持ちが嬉しくて、つい頬が緩んでしまう。
そしてそんな私につられたのか、クリスさんも少しだけど笑ってくれた。
そんな私とクリスさんの様子を見て、アランが両片思いのカップルみたいだなと言い出し、クリスさんに叩かれていた。
ちなみにカイルさんは爆笑。
両片思いなんて言葉、この世界にもあったんだなぁとぼんやり考えながら、まあまあとクリスさんを宥めたのだった。
その日の修行中、不思議なことが起きた。
このところ仕事にも慣れて来て、矢じりやナイフ、ショートソードに肘当てなど、様々な武具を作らせてもらっている。
グレンさんが作るところを見せてもらい、どんなところにポイントを置いているかも教えてもらっていた。
技術もさることながら、イメージが大切だからね。
作るもののことがちゃんと分かっていないと、壊れやすかったり、うまく機能しなかったりするのだ。
だから、打って打って打ちまくって覚えろ!みたいな体育会系・熱血な修行では意外とない。
そりゃ数をこなすのも大切だから、作っては分析、足りないところを見つけてまた作る、みたいに繰り返してはいる。
ただ、なかなか良くなってきたわよ〜♡ってグレンさんに褒められたから、多分進歩はしているのだと思う。
でも他の従業員さんに見せた時には、なぜ?ってぎょっとした顔をされているから、甘めな審査なのかもしれないけどね。
まあコツコツやるしかないわね。
全てが一朝一夕で上手くいくわけじゃないのだから。
そう思いながら、作っている肘当てにハンマーを入れ終わると、ピロリンッと、この世界では聞いたことのない、機械音のような音がした。
「?グレンさん、今なにか聞こえませんでした?」
「いいえ?なにも聞こえなかったわよぉ?」
他の人に聞いても首を振られるだけだったので、気のせいかと思うことにした。
それよりも肘当ての出来がどうなのか気になる。
そしてその機械音のことはすぐに忘れてしまった私は、その日の修行を終えて帰宅したのだった。




