表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/92

初期費用を貯めよう3

「じゃあ猫が良いです!こんな感じで……」


ぱっと思いついたのは、猫姿のルナ。


側にあったペンと紙を取り出し、書き出してみる。


円形のプレートに、猫の全身図と月。


そこにルナの頭文字を入れる。


「どうでしょう!?」


思っていた以上に良い感じに描けた!


そう思いながら、グレンさんに勢いよく突き出して見せる。


すると、それを見たグレンさんは、驚いたように目を見開くと、真剣な眼差しを私に向けた。


「ティアちゃん、あなた……」


あ、あれ?私なにか変なことした?


七歳設定なのに、子どもらしからぬ言動だった!?


いや、そもそもロゴってなにかを知らないふりして聞くべきだったかも!?


「絵も上手なのねぇ!イイわ!とってもカワイイ!!冒険者の女性なら、絶対に目を惹いちゃうはずよぉ!」


そう言ってグレンさんは、きゃあきゃあと私の頭を撫でた。


……杞憂だったようだ。


全く怪しまれていない。


「それにこの作品たちも、カワイイだけじゃなくて、ちゃんと機能的ね。特にこのアイテムバッグなんて、すごく便利!アタシが冒険者の頃だったら、絶対買ってたわぁ」


セシルさんに作ったアイテムバッグと同じものも、お試し品として作ってみた。


セシルさんもすごく喜んでくれたから、同じようにアイテムを必要とする冒険者の人も、使えるかなと思ったのだ。


どうやら、グレンさんのお眼鏡にも叶ったらしい。


「せっかくだから、このプレートもひとつ作ってみましょうよ!それで、このアイテムバッグのチャックにつけましょ!」


あ、グレンさんのスイッチが入ってしまった。


繊細な仕事を得意としているだけあって、こういう細かなものが好きなんだよね。


ルンルンという擬音語がふさわしい足取りで作業場へと向かって行くグレンさん。


慌てて私もその後を追う。


でも、忙しいのに付き合ってくれるのは、すごくありがたい。


厳しいところもあるけれど、基本的にグレンさんは私に甘い。


どうやら、プレートに柄や文字を入れるのが初めての私のために、教えてくれるつもりらしい。


まず、小さな鉄を溶かしてハンマーで平たくする。


これは簡単!と言いたいところだが、今回のように一円玉よりも一回りくらい小さいサイズにしようと思うと、なかなか集中力がいる。


綺麗な円を作るのって、意外と難しい。


あ、でもちょっと待てよ。


ピンと思い付いた私は、平たくなったプレートを、コンパスで円状に切り取るイメージで魔法を使ってみた。


あ、綺麗にできた。


「は、初めてなのに上手ね。それにそんなやり方があるなんて……。ま、まあ良いわ。じゃあ、次はロゴを入れるわよ。試しにアタシがイメージした文字を入れてみるわね」


ひくひくと頬を引きつらせたグレンさんは、そう言うとペンのような先の尖ったものを取り出した。


そしてその先端をプレートにあてて、絵を描くように滑らせる。


すると、プレートが淡く光り、グレンさんの頭文字が刻印されていた。


「すごい!魔法みたい!」


思わずそう言うと、まあ実際精霊の力を借りているから、魔法のようなものよねっ!と返された。


確かにそうだ。


そう考えると、鍛冶師って意外と魔法の適性がないとなれない職業なんだなと、ぼんやりと思う。


それにしても、模様を入れるって、型に流し込むのかと思っていたけれど、こんなやり方もあるのか。


……まあ、前世ではないやり方だろうけど。


「ああ!大量生産のは型で作るわよ〜。魔力切れ起こしちゃうから、作る量に限りがあるもの」


そっか、精霊に力を借りる=魔力を使うってことだもんね。


型で作れば省エネにもなるのか。


ふんふんとグレンさんの説明を聞きながら納得する。


今までは、ただただ魔法を使う練習をしていただけなので、こういう新しいことを知るのは楽しい。


「で、これを磨けば完成〜よ。風属性魔法を使って磨けば、ピカピカになるわ!」


「わあ、素敵!」


完成したプレートを見せてもらうと、プレートは綺麗な円形だし、彫りも滑らかだ。


よし、私もやってみよう。


グレンさんの作り方を真似しながらペン的なものを握る。


えーっと、図形をイメージして……。


先程描いたロゴを思い浮かべながら、滑らせていく。


すると、本当にその通りの絵が刻まれていく。


「っ、できた!」


そして仕上げに風属性魔法で磨けば、完成。


「あら〜。カワイくできたじゃなぁい」


グレンさんが褒めてくれた。


そう、自画自賛ではあるが、私もすごく良いと思う!


「あとは金具を付けて、さっきのアイテムバッグに付けてみましょ」


そして休憩室に戻って、早速チャックの持ち手として付けてみる。


おお、イイ感じ!


「ヤダ、良いわね。さり気ないけど、女性はこういうのに目が行っちゃうのよねぇ〜。きっとコレ、すぐ売れちゃうわよ?」


パチンと本日二回目のウィンク、いただきました。


でも本当にすごく良い。


私が作ったもの、っていう印みたいで、嬉しい。


「ありがとうございます!グレンさんのおかげです!これ、後からギルドに納品して来ますね」


「ええ。今日はいつもより早く上がれば良いわよ。気を付けてね」


はーい!とはしゃいで返事をする。


ううっ、売ってもらうのが楽しみだぁ!


魅力が増したアイテムバッグを、他の作品たちと一緒に袋に入れてロッカーに入れておく。


後で精霊王様にもらったマジックバッグに入れれば、持ち運びも楽なのだ。


早めに上がれば良いって言われたし、あと一時間くらいかな?


「じゃあ私、お仕事に戻ります。本当にありがとうございました!」


グレンさんにお礼を言うと、うきうき気分で作業場に戻る。


よーし、しっかり働くぞー!


「……あのコ、来たときにあんな大荷物、持ってたかしら?それに、さらっと作ってたけど、いくら魔法レベルがそこそこあるとはいえ、一度見ただけであれだけのものを作れるのって……」


パタンと扉を閉めた後に、グレンさんが呟いた言葉は、私の耳には入らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ