魔法付与3
「じゃあ、ルナは私の隠れスキルのこと、分かってたの?」
「うーん、分かっていたというか、そうじゃないかなーと思ってただけなんだけど」
とりあえずこのことは極秘でと言いつけられ、カイルさんの部屋から解放された後、私は自室でルナと魔法付与について話をしていた。
どうやら、以前から私から闇の精霊の気配がすると感じていたらしい。
それどころか、光の精霊まで最近はうろうろしているのだとか。
「たぶん、精霊に好かれやすい魂を持っているのね。魔法が得意なのも、その証拠」
好かれやすい……そうなのだろうか?
魔法は小さい時からコツコツ特訓していたから、こんなものだと思っているのだが。
でも、火属性だけはなかなかレベル上げられないのよね。
ほら、自主練習で火って、扱いにくいじゃない?
下手したら火事になっちゃうし。
風、水、土は自主練習で扱いやすいからレベルもまあまあ上がったけど、火だけがねぇ。
「ちょっと。思考がズレてきているわよ」
ルナがすかさずぺちんと私の頭を叩いた。
ごめん、つい。
いや、軽かったから痛くないんだけどね。
「まあとにかく、私のことを案じた闇の精霊さんが、魔法付与のスキルを隠してくれたってことなのね?」
そう、どうやら魔法付与は、鑑定と同じくらいレアなスキルらしい。
実際この国では、分かっているだけでだが、三十人程度ではないかと言われているんだって。
そんなレアなスキルを子どもが持っていたと知れたなら、悪用しようと企む輩が出てくる。
そう危惧した精霊が隠したんだろうと、ルナは言う。
うーん。
ありがたい話だが、ちょっと過保護ではないだろうか。
そもそも鑑定されなきゃバレないわけだし。
「子どもなんて、すぐに口を滑らせるじゃない。とくに親相手にはね」
な、なるほど。
あの損得勘定で動く両親なら、魔法付与のことを知ったら、喜んで私のことを利用しそうだ。
それにしても、作ったものに効果を付与する魔法かぁ。
ものづくりが好きな私にはもってこいのスキルだわ。
あ、そうだ。
セシルさんに頼まれていたアイテム入れ簡易バッグ、それにもなにか効果をつけたい。
そこでルナの姿が目に留まる。
あっ!
「ね、ルナ。私いつの間にか時空属性魔法が使えるようになってたんだよね」
「ああ、あたしと契約したからね」
「そう、けいや……契約!?」
思いもよらない単語に、驚いてルナを二度見する。
「あら?気付いてなかったの?あたしに名前を与えたでしょ?そしてあたしもそれを受け入れた。ちゃんと精霊王様の許可も得てるから大丈夫よ!」
そういえば、精霊に名前を与えることで契約を行うって、魔法学の先生に習ったっけ。
いやでも、ルナのことは猫だと思ってたし、精霊って知らずに名前をつけたからノーカンじゃない?
って言ってみたけど、精霊の姿を見せた後も名前を呼ばせていたら、契約したことになるのよ〜って笑顔で言われた。
私は嬉しいけど、ルナはそれで良いのだろうか?
「良いに決まってるわ。だってティアを助けたいって思ったんだもの。あ、でもね、精霊界の掟で、なんでもべらべら教えられるわけじゃないの。いくら契約主でも」
そうか、魔法付与のことや闇の精霊のことを黙っていたのもそのせいか。
ルールなら仕方ないよね。
自分で気付くことも大切なことだし、ルナに頼りきりになってもいけないもの。
「でも、あたしにできることは協力するし、言っても良い範囲ならちゃんと教える。ティアを守るために契約したんだもの」
きゅっとルナが私の指を握ってくれた。
うん、その言葉は信じられる。
「頼りにしてます。改めて、よろしくねルナ」
ふふっと笑い合う。
そして、先程ルナに聞いてみようと思っていたことを話してみた。
それは、セシルさんのためのアイテムバッグに、時空魔法を施し、容量を増やせないかというものだ。
まあつまり、精霊王様が私のバッグにしてくれたみたいなやつね。
ほら、容量百倍、重さ百分の一ってやつ。
さすがにそこまでの増加は望まないけど……。
二、三倍になったら嬉しいよね。
「うーん、できないことはないけど、まずは魔法レベルを上げないと」
え。
レベル上げ、必要なの?
「そりゃそうよ。付与の内容は、術者のレベルによって上下するわ。良い効果を付与したいなら、それに関係する魔法レベルを上げないと」
「じゃあ、私は光と闇の魔法が使えないから、それに関する効果は付与できないってこと?」
「そういうこと」
そっかぁ。
HP回復率が上がる腕飾りとか、MPを吸い取る剣の飾り紐とか、すごく便利だなぁと思ったんだけど。
ゲームにはそんな武器や装飾品があったけど、現実はそんなに甘くないみたい。




