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【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第一章

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18/92

初めてのプレゼント1

「よしっ、できた!」


出来上がったばかりのアンクレットを掲げて、にんまりと笑う。


うん、我ながら良い出来だ。


先日描いたデザインをアランに見せたところ、とても気に入ってくれた。


『こんな本格的に作ってくれるなんてすごいな!』だって。


そりゃ人様にあげるのなら、ちゃんとしたものをあげたいし、どうせなら気に入って欲しい。


アランからすれば、何気なく言った言葉なんだろうけど、実は結構嬉しかったのだ。


作って欲しいなんて、今世では誰にも言われたことがなかったから。


「あと、これも作っちゃったんだけど……もらってくれるかな?」


作業机の引き出しを開け、そこに入っていた黒と紫、それに少しの金を組み合わせた飾り紐を取り出す。


これは、クリスさんのために作ったものだ。


さあアンクレットを作り始めよう!という時に、ふと思い立ったのだ。


クリスさんにも、作りたいなって。


お礼……と言えるほどのものではないけれど、私がこうしてここにいられるのはクリスさんのおかげだ。


それなら、ここに来て人に作る初めてのものは、クリスさんのものが良いような気持ちになった。


まあ、出来上がったのに結局渡せず、ここにこうして仕舞われているんだけどね。


作ったのは、剣の飾り紐だ。


イメージは中国の剣の柄頭にシャラッとついているあれ。


クリスさんの剣の柄頭にも、輪になっている部分があるので、そこにつけられるようにした。


でも、あんまり長いと剣を振るのに邪魔かもと思ったので、細めの糸を短めに何本か編んで、それを金具で留められるようにしてみた。


なぜ剣の飾り紐にしたかというと、助けてもらったあの時、剣さばきが速くて、すごく強いんだなって思ったから。


剣がクリスさんを守ってくれると良いなって、御守りみたいなものだ。


ただ、渡すタイミングがつかめずにいる。


「アランのが出来たら一緒に渡そうって思ってたけど……迷惑じゃないかな」


「なぁに?また悩んでるの?そんなの、はいどーぞ!って渡しちゃえば良いのに」


呆れたような声で覗き込んできたのは、精霊姿のルナ。


散歩してくると言って出て行ったのに、どうやら戻って来たらしい。


でも、ルナの言う通りだ。


もう三日もどうやって渡そうか悩んでいる。


クリスさんって、初めて会った時――――王宮までの道のりは、小さい子に慣れていない感じはしたけれど、すごく優しかったし、よく笑ってくれた。


でも、私がここでお世話になるようになってからは、ちょっと素っ気ない。


上手く言えないんだけど、話しかけても二言三言で会話が終わってしまったり、あまり笑ってくれなかったり。


無視されるとか、あからさまに避けられることはないんだけど、なんとなく道中とは違う気がする。


私、何かしたかな?って考えたけど、思い当たることもない。


「そんなに悩むなら、作らなきゃ良かったのに」


「もう!ルナの意地悪!」


はいはいとルナが私の肩に止まって、ため息をつく。


ルナの言う通りだ。



言う通りなんだけど……。


「でも、お礼に何かしたかったんだもん」


私に出来ることなんて、これくらいだし。


掃除や料理は仕事だから、お礼にはならない。


お菓子も考えたんだけど、甘い物があまり好きじゃないって聞いたから、断念した。


でも、こんな子どもが作ったものなんて、大事な剣につけたくないかもなぁ。


「……やっぱり、止めておこうかな」


だんだん弱気になってしまって、ついそんなことを口にしてしまう。


すると、ルナが私の頬をぷにっとつついた。


「ダメよちゃんと渡さなきゃ。何を心配してるのか知らないけど、大丈夫よ。ちゃんと喜んでくれるから!」


「……そう、かな」


励ましてくれるのは嬉しいけど、喜んでくれると確信は持てない。


面倒くさいと思われるかもしれないけど、意外と私は繊細なのだ。


「当たり前よ!だってそれには――――っと、これは言っちゃダメなんだった」


息巻いていたルナが、突然口を手で塞いだ。


?言っちゃダメって何が?


「とにかく、それはとっても良いものなの!喜ばないヤツなんていないから、自信持って渡しなさい!」


びしっ!とルナに指を差されてしまった。


この飾り紐が良いもの……って、どういうことなんだろう。


確かになかなかの出来だと自分でも思うし、クリスさんに似合いそうだなぁとは思ってるけど。


だけど、それほど高い糸で作ったわけでもないし、作ったのも素人の私。


大したものじゃない。


「前から思ってたけど、どうしてティアはそう自己評価が低いのよ……。勉強はできるし、魔法だってかなり使いこなしてる。料理や裁縫も上手で騎士たちもティアを頼りにしてるじゃない」


ルナはそう言ってくれるけれど、勉強は前世の記憶があるから、子どもにしては理解が早かっただけだし、家事は前世でひとり暮らしをしていたから、できても珍しくない。


魔法や裁縫は、ただ好きだからやり込んでいるだけだ。


「そんな、買いかぶりすぎだよ。……うん、でも、この飾り紐はちゃんと渡そうと思う。クリスさんのために作ったんだもんね。それに、ちゃんとお礼言いたいし」


きゅっと飾り紐を握る。


ルナに背中を押してもらったんだし、尻込みしてないでちゃんと渡そう。


「ありがとう、ルナ。ちょっと勇気出た」


「そう?なら良かったわ」


アラン用とクリスさん用、ふたつの小さな袋に入れてリボンでラッピングし、机に並べる。


明日、朝食の時に渡そう。


受け取ってくれると良いな……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 毎朝楽しみにしています! クリスさんの反応もすっごく楽しみで、明日が待ち遠しいです(^^)
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