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【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第一章

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自立への第一歩3

「え、じゃあクリスさんはアランの直属の上司ってことですか?」


「はい、そうなりますね。彼らは魔法騎士といって、剣に魔法を宿し、剣と魔法をバランス良く使って戦うことを得意とする隊に、所属しています。クリス隊長が、彼らをまとめているということですね」


なにそれかっこいい!!


魔法剣ってやつ?


前世で弟たちがやっていたRPGとかでよく見たわ。


確かにクリスさん、若いけどすごく強かったし、隊長さんなら納得よね。


そしてどうやら王立騎士団は、それぞれの戦い方、得意分野でいくつかの隊に分かれているようだ。


弓兵隊、槍兵隊、衛生隊みたいな感じ?


「それにしても、あなたは幼いのに理解がとても早いですね。今まで子どもの相手をするのはあまり得意ではなかったのですが、あなたと話をするのはとても楽しいです」


「あ〜、両親が教育熱心だったので……」


あはは〜とはぐらかす。


先程から昼食を食べながら色々教えてくれているのは、セシル・フェンドラーさん。


金髪碧眼の優しげな目元のイケメンで、初めて見たときは王子様だ!!と思った。


見た目通り言動も上品で、部屋ももちろん綺麗だった。


みんな見習ってほしい。


今日は夜勤明けで、こうして昼食を食べに食堂に来ており、これは良い機会とばかりに、色々教えてもらっている。


確かに、七歳児が直属の上司とか難しい言葉使ってたら変よね。


そのあたりも気を付けないと。


「そういえば、今日の昼食はあなたが作ったのですか?ケイトさんの料理ももちろん美味しいですが、あなたの料理も優しい味がしますね」


亡くなった両親の話が出てきて、あまり触れられたくないだろうと思ったのだろうか、話を変えてくれた。


ここの人たちは、基本的にみんなそうやって私のことを気遣ってくれる。


みんな貴族出身だっていうから、もっと鼻につく人ばかりなのかと思ったのだが、そんなことはなかった。


カイルさんも言っていたが、実力も良識もある人ばかりなのだ。


……ちょっと片付けとか掃除は苦手みたいだけど。


「ありがとうございます!ケイトさんに教えてもらいながら一緒に作ったんですけど、お口に合って良かったです」


気遣いに甘えて、料理の話にのることにした。


実際、ケイトさんと作ったスープはとても美味しくできたし、褒められるとすごく嬉しい。


おかわりもありますよ!と勧めてみれば、セシルさんはくすりと微笑んで、お皿を差し出してくれた。


「ではもう少し頂きましょう。かわいいレディが一生懸命作ってくれた昼食ですからね。残ってしまっては勿体ないですから」


イ、イケメーン!!やばい、リアル王子様!!


あわあわとお皿を受け取ると、くすくすと笑われる。


「こんなに素敵な家政婦見習いさんが来てくれて、皆喜んでいますよ。クリス隊長に感謝しないといけませんね?」


くっ……! 笑顔が眩しすぎて、直視できないわっ!!






「……随分楽しそうだったわね、ティア」


「だっ、だって!セシルさんてば私の好みド真ん中なんだもの!!」


その日のお昼休み。


いただいた自室で私はルナと話していた。


先程の私とセシルさんとのやりとりを、どこからか見ていたらしく、ジト目でにゃーんと鳴かれた。


そんな顔しなくても良いじゃない!


だってかっこいいんだもの!!


顔だけじゃない、所作も話し方も綺麗だし、何より優しい!


女子たるもの、一度は王子様キャラに憧れるものでしょう!?


「まあ確かにね。でも、なーんかあの人の笑顔って嘘くさいのよねぇ」


こしこしとルナが自分の頭を掻きながら言う。


あ、その仕草かわいい。


「それで?アランに腕輪を頼まれたんだっけ?」


「そうなの。糸を編んで作ろうかなって思ってて。あ、ルナの首飾りと同じ作り方ね。あと、腕だと訓練の時に邪魔かも?って思ったから、足首につけるやつも作ってみようかなって。アンクレットっていうんだけど」


アランと相談して、彼はどちらでもいいとのことだったので、とりあえず両方採寸させてもらった。


腕輪はシンプルで細い方が邪魔にならないかな。


アンクレットはある程度太くてデザインがあっても良いよね。


チラリと見えた時にオシャレだし。


持っている糸の色に合わせてデザイン画を描いていくと、素敵ねとルナも褒めてくれた。


うん、アランに似合いそう。


「よし、できた!あ、そろそろ夕食の手伝いに行かなきゃ。続きはまた夜ね」


並べていた色とりどりの糸もきちんとしまっていく。


たくさん持って来ておいて良かった。


これも精霊王様の容量拡張バッグのおかげだ。


「じゃあルナはここでお留守番しててね。後で夕食、持って来るから」 


精霊のルナは別に食べなくても良いんだけど、人間の食べ物は美味しいからってよく食べている。


今朝も私が作ったチーズオムレツをぺろっと平らげていた。


まったく、どこに入っているのやら。


ばいばいと手を振ると、しっぽを振ってくれた。


うーん、かわいい。


今度お菓子を作ったらルナにもあげよう。


甘い物、好きかな?


それはともかく今日の夕食!


みんな訓練でお腹を空かせているだろうし、たくさん美味しいものを作らなきゃ!


そう張り切って私は食堂へと向かうのだった。



* * *


セレスティアが出て行った後、ぱたんと閉まった扉を見つめて、ルナはため息をついた。


「ティアったら、活き活きしちゃって。よっぽど作るのが好きなのね」


しかしこの独身寮に落ち着いてからのセレスティアは、毎日とても楽しそうだ。


あの打算的な両親や自分本位な妹と一緒にいるよりもよほど、彼女にとっては幸せねと思う。


思っていたよりも騎士たちは良い人間が多いし、猫の自分のこともかわいがってくれている。


「それにしても、ティアってば自覚してるのかしら?私の()()もそうだけど……」


そう言いながら、ルナは猫の手で自身の首元を飾る紐に触れた。


「このところ、ティアの周囲で光の魔力を感じられるのよね。まったく、あの子ったら精霊タラシってこと?ライバルが多くて、嫌になっちゃうわ!」


ぽんっ!と本来の精霊の姿に戻ると、周りに自分と同じ存在がふよふよと集まって来た。


しばらくティアは戻らないと伝えれば、彼らはしょんぼりと肩を落とした。


「お店を持ちたい、ね。この分じゃ、思っているよりも早くその時が来そうだけど」


それに――――とルナは、助けてくれた黒の騎士、クリスの姿を思い浮かべた。


()()も、気のせいじゃないんでしょうね」


となると、今回の社会勉強はなかなか大変になりそうだ。


まあ精霊王様はそれすらも楽しんで傍観するのだろうと思いながら、ルナはもう一度ため息をついた。

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