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【書籍化】ハズレジョブ持ち令嬢?いいえ、磨けば光るチートな魔導具師です!  作者: 沙夜
第一章

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王立騎士団2

「すまない、待たせた……って、おや?」


「……何をしているんだ、お前ら」


「団長、クリス隊長、おかえりなさい!美味しいですよー」


「あ、すみません、勝手に……」


しばらくしてクリスさんと団長さんが帰ってきた。


なぜふたりが驚いているのかというと、それは私たち三人がプチお茶会をしていたからだ。


繕い物が終わっても帰ってこなかったので、せっかくだから私がお茶を振る舞うことにした。


ポットや茶葉などは、お代わり用にと先程の見習い騎士が持って来てくれていたので、カップだけ用意してもらった。


よく見ると、茶葉はそんなに悪くないものだったので、要は淹れ方のようだ。


先程の物は蒸らしが長すぎたのか、少し渋かった。


茶葉とお湯の量、それに蒸らし時間さえ間違いなければ、割と美味しくできあがる。


「お菓子でもあれば最高なのにね。お嬢ちゃん、お菓子も作れるの?」


「えーっと、簡単なものなら」


それは食べてみたいなと、お色気青年が頬を緩めている。


おや、甘党なのだろうか?


「一応勤務中だろう?副団長ともあろう者が、菓子までねだるな」


呆れたようにため息をつく団長さんに、お色気青年が笑う。


え、この人まさかの副団長!?


「ああ、自己紹介がまだだったね。俺はカイル・アーレンス。ここの副団長をしている」


カイルさんは、明るめの栗色の長髪をうしろで緩く結んでおり、目元のホクロもだけど、エメラルドグリーンの瞳も優しげで色っぽい。


そしてすごくモテそう。


歳は二十代半ばくらい?


正直、副団長って言われても、似合わないって感想しか出てこない。


ごめんなさい、すごく仕事サボって女性と遊んでそうです。


「オレはアラン・ローレンツ。よろしくね、ティアちゃん!」


そう言うと、アランさんは私の手を取ってぶんぶん振った。


彼はその元気で人懐っこい性格によく似合う鮮やかな赤色の短髪と琥珀色の瞳で、歳はたぶん本来の私と同じか、少し上くらいじゃないだろうか。


「ならば私も名乗っておこうか。セドリック・コーンフェルトだ。ここ、王立騎士団の団長を拝命している」


それに続いたイケオジこと団長さんは、柔らかそうな短めの金髪で、ライトブルーの瞳が綺麗な優しい風貌のおじさまだ。


四十を過ぎたくらい?


若かりし頃はそりゃもうモテたんだろうなぁ。


奥様も美人なのかな?


見てみたーい!


とまあ、三人を改めて観察したわけだが……驚いたのは、その家名。


アーレンス、ローレンツ、コーンフェルトって、見事に有名な貴族ばっかりじゃない。


それぞれ伯爵、子爵、侯爵家の名前で地位に差はあれど、とても評判の良い家ばかりだ。


まあ私の場合、家庭教師の先生からの情報だけで、実際に茶会などで聞いたわけではないんだけどね。


クリスさんの一件があったのでなんとか驚きを隠したが、そういえば王立騎士団って貴族ばかりで構成されているんだった。


エーレンシュタイン(うちの家)はあまり騎士団と関わりがないから、バレることはないかな。


だけど用が済んだのなら、長居は無用。


孤児院の情報だけ聞いて、おいとましよう。


「せっかくお名前を伺ったのですが、私はそろそろ失礼しますね。あのそれで、できれば王都の孤児院について教えていただけますか?」


ついでに送ってくれると良いなぁと、邪な思いを抱きつつ聞いてみると、クリスさんは眉間に皺を寄せ、他の三人は目を見開いた。


「「「孤児院?どうして」」」


やっぱり気になりますよね。仕方ない。


そこでクリスさんに説明したように、同じ話を団長さんたちにもすることにした。


「それで孤児院、ね」


大して珍しい話でもないのか、すぐに団長さんたちは私の話を信じてくれて、表情を曇らせた。


そうしながらも、王都の孤児院のことはしっかり教えてくれたので、ありがたい。


クリスさんは私の事情を知っているから、空いていたソファに座って黙っていただけだったが、表情は険しい。


いえ、ただの設定なので、そう辛そうな顔をされるとこちらの良心が痛むのですが……。


「そんな顔をしないで下さい。先程も言いましたが、これでも裁縫とか家事は得意なので、孤児院でも上手くやれると思いますから」


膝の上のルナを抱えて立ち上がり、ドアの方へと向かう。


前世ではひとり暮らしをしていたし、今世でもほっとかれていたので、掃除とか料理とかは割とできる。


アンナに任せっきりも悪いから、部屋の掃除はできるだけ自分でしていたし、こっそり厨房を使わせてもらってお菓子を作ったりもしていた。


そういうことができれば、まあ孤児院でも困ることはないだろう。


「お嬢ちゃん、君、家事が得意なのか?」


カイルさんの声に、はいと答えドアの前で向き直る。


「危ないところを助けていただいて、ありがとうございました。孤児院のことも教えて下さって、助かります」


それではとドアノブに手をかけた時――――。


「ちょっと待って」


なぜかカイルさんが、出て行こうとする私を止めた。


なんだろうと首を傾げる私と、どうしたんだと目を瞠るクリスさんたち。


不思議そうな顔をする私を見て、カイルさんはにっこりと笑った。


「それなら、良いところを紹介しよう」

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