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笑わない少女と時戻し

6月30日(木)

編集作業に入りました。

血盟兵器クランウェポン神話時代(E2O)から存在した兵器。

様々な物が存在し、古代アル=レギルス文明時代に複製もされたが、現在では残っている物は少ない。


だが現存する血盟兵器(クランウェポン)の一つがここにあった。

弩砲バリスタ、正確には魔導電磁加速式弩砲レールキャノン・バリスタ

長さ60センチ、直径12.7ミリの金属製の矢(ボルト)を電気の力で打ち出すそれは、巨人種ジャイアントすらたやすくほふると言う。

強力無比の兵器。しかし血盟員クランメンバー以外には使用すら出来ない物。



その魔導電磁加速式弩砲レールキャノン・バリスタより放たれた金属製の矢(ボルト)は地面に着弾すると閃光を伴う爆発で地面をえぐり吹き飛ばし、土煙で彼らの視界を塞ぐ。


「ヒュー! 相変わらず凄い威力ですね!」

「盟主、これは個人に使う兵器じゃなかったなぁ。掠っただけでも消し飛ぶほどの威力だしな!」

「あんな小芝居打つ必要なかったかもですね」

「だなあ」


取り巻きの二人は呑気にそう言い合いながら、弩砲バリスタにいる仲間に向けて手を振ってきた。


そんな彼らの目の前に仲間が落下してきた。


「「へっ?」」

間の抜けた声を上げた二人の見ている前で、30メートルほどの高さから落下した男は地面へ落ち鈍い音を立て地面とぶつかるるがうめき声も起きない。

なぜなら落下の前に死んでいるからだ。


「リディ? なんで!?」

取り巻きは地面に血の花を咲かせた物言わぬ死体に無意味な問いかけをする。


「しっかりしろテメエら! 上を見て見ろっ!」

ダイスの叱責が飛ぶと弾かれた様に上を、弩砲バリスタのあった方を見る。


そう《《こちら》》に向かって。

私はそんな彼らの前に姿を見せてやる。


「なっ!? 生きてやがる!」

「あの一瞬であんな所まで?」

三人は武器を抜き散開してこちらを窺う。



転移系魔法が封じられている中、どうやってここまでこれたか?

答えは実に簡単だ。



停滞時間ステイシスタイムで時間を止めて、その後移動スキル『空歩エアーウォーク』でここまで歩いてきたと、まあ言葉にしたら実に地味だなぁ』


カリヴァーンが言った通りの行動で私はこの高さまで文字通り歩いてきた訳だけど。

使えないのは転移系だけで移動系は使用出来る。

あの盾職タンカーが使用していたことでもわかるだろう。


「まさかあなたが自分で、私の指令語コマンド無しで能力を使用できるとはね……」

『さすが俺様! だろ?』


あの時、弩砲バリスタの矢が迫った瞬間、カリヴァーンが私の指令語コマンド無しで停滞時間ステイシスタイムを起動させ事なきを得る事が出来た。


『ちょっと気ぃ抜き過ぎだぞ?』

そうね、油断しすぎたわ。 それより……


「私が死ねばどうなると思う?」

迷宮ダンジョンを出る前、あの災厄魔竜ディザスタードラゴンに挑む前に聞いたことを再び尋ねてみた。


『前にも言ったろ? 復活するだろうな。ただしあの勇者育成迷宮(ダンジョン)の中でな』


やはり……


私が手に入れた能力、時戻し(リバイバル)は不死身になる訳でも、死からよみがえれる訳でもない。

文字通り時を戻すのだ。 私の時間だけを。

とはいえ、レベルやスキルなどはそのまま残る。

強くてニューゲームという意味のよくわからない事を言ったのはカリヴァーンだった。


私があの幸福毛玉ラッキーハッピーを喰らったあの場所で再生する。

死ねば再びあのクソッタレな迷宮ダンジョンへ。


二度と、二度と戻ってたまるか。


「カリヴァーン」

『なんだ嬢ちゃん?』


「……助かったわ」

『おおお!? デレ期か? ツンクールっ娘のデレ期きたかっ! クーデレってやつか! まあ嬢ちゃんの様な貧乳は俺様のハーレムに入る資格がないんだが、しかたねぇ特別だぞ?』


「……死ね、クソッタレの鉄屑」

私は振りかぶり鉄屑カリヴァーンをダイスの取り巻きに向かって投げつけた。


『ひでえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』悲鳴を上げながらもカリヴァーンは男の腹をたやすく貫通し地面に突き刺さる。


私はそれを追って浮遊レヴィテーションで降下していく。


「レッグス、ちくしょうっ!」

もう一人の取り巻きがこちらを凄い目で睨らんでくる。


『冗談だったのにひどいぜ!』

カリヴァーンが文句を言ったのを聞きつけた男が驚きで目を見開く。

「武器が喋った!? まさか知性武装インテリジェンスウェポン?」


『おうともよ! 聞いて驚け! 俺様こそはあらゆる伝説の中の頂点! 聖王剣エクスカリヴァーンなるぞ!』

頭が高いなどと言っている所までは聞こえていないような男は欲望に染まった目でカリヴァーンを見ると舌なめずりをしながら、その柄に手を添える。


「へへっ伝説の武器! そんな武器を手放しやがってバカか? とはいえ俺にも運が向いてきやがった!」

だがそんな男をダイスは止めようとする。

「よせ、それに手を触れるな! そういった武器には持ち主以外「こいつは俺のもんだ! ダイスあんたにも渡さねえっ!」


ダイスの言葉を遮ってそのままカリヴァーンを引き抜こうと力を籠め……

赤い水晶片をまき散らしながらその身体は砕けて消える。


「……そういった武器には持ち主以外触れない防衛機能があるんだよ。 バカ野郎が!」


ダイスは、成り行きを見守っていた私に振り返ると武器を構えた。

「わりいな。待たせちまって。だがこの武器は使わせないぜ?」

そう言ってダイスはカリヴァーンを私の視界から隠すように位置取りする。

カリヴァーンにれない様に。


……別に触るだけなら大丈夫だけどね。装備しようと思わなければ。


私は肩をすくめ、ストレージから魔犬騎槍ゲイロガルムを取り出す。


「別にいいわ。私の得物はこの槍だもの」

『おいおいそりゃねえぜ』


カリヴァーンのぼやきにダイスは困ったような顔をしたがすぐに表情を引き締める。


「なら、やりあおうぜ」

「あなたを殺してこの血盟戦ゲームを終わらせるわ」



血の薔薇とわせてあげるわ。

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