天使たちは微笑む。
トーナメントはつつがなく進んだ。
ベスト16位まで出たところで、華姫が発表される。
華姫とは、この大会の優勝者へ祝福として花束を贈呈する女性である。
華やか、と花をかけているそうだ。
花を渡す女性は毎回美しく、そして婚約者が居ない女性だ。
大体ベスト16位のうちの誰かとその後婚姻を結ぶことが多い。
昨年はハルシフォン家の分家筋が優勝し、華姫にその場でプロポーズし婚約が結ばれたが、正に美女と野獣カップルであった。
さらに前の年は、10位だった者と華姫が結ばれている。
男性率九割を越える武道科にとってこの戦いは自分の実力を内外に示すと共に、婚活や出会いのチャンスでもあるのだった。
さて、華姫である。
なんと今回はー…
「今回は誰もが知る名家!!
その至宝と歌われる妖精姫、ヘイリー・ハルシフォン様だ!!!!」
一段高い台の上にヘイリーがあがる。
白を基調としたシフォン地のゆったりとしたドレスに身を包み、頭には花輪を乗せている。
ドレスにもところどころ、華の刺繍があしらわれており本当に正に妖精のようであった。
アナウンスが流れヘイリーが登壇した瞬間、会場はどよめきに包まれた。
ベルケルもどよめいた。
パパは何も知らされていなかったのだ。
妻は知っていたようで、なおかつ衣装まで手配したようだ。
私の見立てです、とニヤリと笑う姿にがっくりくる。
「何故、俺に言わないんだ!」
「色々五月蝿いからじゃないですか?」
「邪魔すると思われたんですわ。」
冷たく妻とボリスに言われ、がっくりくるベルケル。
過保護すぎる父は思春期の娘にとってはうざったくもあるのだった。
ふと、うざがられてもなお可愛い娘がある場所を見てふわりと微笑んだ。
可憐な笑みに会場は再びどよめいたが、ベルケルはその視線の先の人物に気付いてしまった。
「あれは…ザクイチ家の孤児院出身のガスト…か。」
「あなたが逸材と誉めやかしていた子じゃありませんか。
ヘイリーは見る目があるということですわね。」
「うちの可愛い娘をたぶらかしおって…ぐぬぬ…」
「たぶらかそうとしても全然気づいてもらえないようですわよ?」
「はあぁぁぁぁぁぁあ?!!!!!!!」
「うるさい。」
「うごごぎっ!!!」
あまりの衝撃に叫ぶベルケルに容赦なく妻からの裏拳が炸裂する。
彼女は武道家である。
軽い一撃でも成人男性をのたれうちまわすほどの力を秘めている。
筋肉達磨のベルケルの少し弱い場所をピンポイントで狙う辺り、えげつない。
「静かに見てくださいな。」
「は、はい…」
「相変わらず容赦ないですね。うちの妻は暴力的でなくてよかった。」
うっかり余計なことを言ったボリスに一撃、とばっちりでベルケルには二撃が追加され、貴賓席は男達の呻き声がしばし響いた。




