それを言ったらいけねぇぜ
リロイが暴君系妹シンシアと美しき女傑な皇太子妃と公妃with強烈な兄ズ達の襲撃を受け終わった頃…
庶民で孤児院出身の自称リロイの親友なガストも、ある意味襲撃を受けていた。
「ガストよ、愚息が居ない今…ザクイチ家の名を落とさないようになるべく勝ち進むのだ。
昨年…愚息ですら三位入賞だった。
お前に入賞を目指せとは言わん。しかし、軍部の内定ぐらいは決まるほどには実力があるのだ、せめてベスト8…いや、16でも構わん。
善戦してくれ。」
厳しい顔でザクイチ家当主な近衛騎士団長が言う。
一歩下がった場にいる夫人は無言を貫いている。
お嬢、早く来て下さい…!と内心ガストは思った。
武闘大会は武芸科の総あたり戦。
6位までが入賞となり褒賞もでる。
学年問わず武を競うデスマッチである。
最終学年になるまで、ガストが勝ち上がるブロックには必ず、逆ハーメンツとなりざまぁ展開され男ばかりの砦送りされた甘やかされきった末っ子跡取りアムロ・ザクイチがいた。
アムロは確かに実力はある。おまけに顔も良い。
お綺麗な御前試合とかなら軽く優勝できるのである。
城を守る近衛騎士としてならばこれ以上ないくらい、実力的にも家柄的にもぴったりの男だった。
が、実践となるとガストの足元にも及ばない。
軍部の内定が満場一致でトップで決まるくらいには実力があると自他共に認められてるのだ。
近衛騎士として…の声もあったが、生まれで弾かれた。
王が住まう至高の場に庶民は相応しくない…とのこと。
近衛になれば自然とアムロの部下という保育係になっていたことを思えば、その判断グッジョブであった。
まぁ、そのよいしょしなきゃならん男と試合になればどうなるか…
見当がつくであろう。
今まで接待で負けていた。
知らぬはバカボン達ばかりなりである。
学園としても現役の貴族である近衛騎士団長の息子が入賞もしないのはまずいと忖度が働いた結果のトーナメントの組み合わせである。
平和な城内でぬくぬく過ごしてる(軍幹部談)近衛騎士団長は軍部が騎士より劣ると内心思っているようだが…実際は違う。
ぶっちゃけ一番王都が安全安心な場所なのだ。
国境に近づけば近付くほどキナ臭くなる。
そんな場所の治安を守り、時に物理で解決している集団が軍部なのだ。
近衛騎士団長はちょっと夢見がちな所がある美中年なので、彼からすれば最強の実力者が王都にいることで国の平和が守られてると本気で信じているのだ。
彼の中では軍部は近衛騎士の次に実力があると思っている。
がちで信じている。
なので、彼の中で近衛騎士になると言われていた実子は軍部に内定をもらったガストより上なのだ。
そんなわけで、冒頭のような声かけが生まれるのだ。
ガストはとりあえず愛想笑いを浮かべて、全力を尽くします!と言っておいた。
今年こそは全力で暴れられると思ったのになぁ…とガストは内心ぼやく。
こんな風に声をかけられては、はしゃいで3位入賞とかしたらものすごくがっかりされるんじゃなかろうか。
近年…貴族で忖度ついても上位入賞できるのはアムロ位だった。
数年前は生まれてきた時代が間違っていたなぁ的なごりごりの武闘派貴族もいたのだが、今は空白期だ。
おまけに武闘派はそろって近衛を蹴って軍部に進んでいる。
他にも色々あって近衛騎士と軍部は仲が悪い。
そんな中でガストが強いと分かればややこしくなること山のごとしだ。
「ガスト…」
それまで黙っていた現実主義の奥様が口を開く。
「やっておしまいなさい。
孤児でも実力があれば上を目指せるのだと知らしめるのです。
貴方の活躍は平民や出自が訳ありの者にとって誇りとなります。
ザクイチ家云々は忘れなさい。
アムロの行いで地に落ちていますので、これ以上落ちることはありません。だからこの人の言ったことは毛ほども気にせずに自由になさい。」
「奥様…!」
「家の事や、孤児院の事その他諸々を投げているのにも関わらずこの様な華々しい時だけ来て上から目線でプレッシャーしか与えない者の言うことなど聞く必要はありませんから。」
「お…奥…様…!(汗)」
それだけ言うと、奥様は颯爽と去っていった。
近衛騎士団長は落ち込みながらその後を追う。
「来る途中、アムロがああなったのはお前のせいだ的なことを遠回しに言ったらしくて…報復受けてるみたい。」
いきなり背後から出てきたハナに告げられ、なるほどなぁそれなら仕方ないかとガストは納得した。
「どう考えても奥様がしっかりしめたのを台無しにしてたのって当主様なのになぁ…」
「ねー」
なんだか試合開始を前にして、どっと疲れがたまるガストであった。
近衛騎士団長は妻の逆鱗にふれた!!
近衛騎士団長は逃げ出した!
失敗!!
逃げられない!
近衛騎士団長は瀕死の重症をおった。




