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嵐が来る!

「おーい、ボリスそろそろあいつらが来る頃だぞ?

身なり整えてきた方がいいんじゃないか?」



「……」



「こいつ、目を開けたまま寝てるだと…!」



朝日が僅かに射し込む執務室で目を開けたまま爆睡する宰相ボリス・メルビー。

銀の髪は朝日をあびて、それはそれは美しく輝いていた。中性的な美しさは見ようによっては女性にも見える。

それをあきれ顔で見やる男は騎士と似た服を来て、腰には剣を下げていた。

燃えるように赤い髪をかき、ため息をつく。

彼の名はバルド・グルモワール。第二のウォルクラウンの英雄と呼ばれる軍部の若き将軍であった。


二人は長年の親友であり、リロイの愛する姉上と共にかつて学園の生徒会をつとめた者たち。



「あらあらお兄様だらしないですわ。」


「まぁまぁ、兄様お久しぶりですわね。

私たち、とっくに城に来ているというのにボリスお兄様としか顔をあわせておりませんの。」


「そうですわ。

バルドお兄様、ご自分の姉妹と顔をあわせもせずに雲隠れなど烈火の将軍の名が泣きますわ。」



サッと扉が開き、二人の妖艶美女がしずしずと執務室へとやって来る。

金髪巻き毛の美女は元グルモワール家次女セレーナ、やや青みを帯びた銀髪ストレートの美女は元メルビー家長女ラクーア。

逆ハーメンツにとどめの一言を放ち、高笑いと共に去っていった美女達である。



「私達、早くアリサに会いたいのですけど。」


「そうですわ、学園視察なんてどうでもいいことですのに。」



口を尖らせ、バルドに詰め寄る姿すら美しい。



「無茶言わないでくれますかね、

あなた方、国賓なんですよ。自覚を持ってください。」



「まぁ、お兄様。

私達嫁ぎ先でとっても頑張ってますわ。たまには羽根を伸ばさせてくれても良いではないですか。

別にアバンチュールなど興味ありませんわ。」



「実家に帰ってゆっくりするのもダメ、可愛い妹や弟に会うのもダメ。

元々自分達の都合をごり押しした上、今更私の目に狂いは無かった感謝しろ的な厚かましいオーラを醸し出すグズ夫婦の相手をしながら城に滞在だなん拷問ですわ。」



「セレーナ、本音出すぎだ。

影に聞かれたらコトだぞ?」



けらけらと笑いながらバルドが妹に言うと、それはそれは蕩けそうなほど微笑んで彼女は答えた。



「うふふふ、戦争がしたいのでしたら相手になりますわよ。

私、夫にかなり愛されている方ですのよ?

そんな私を消そうなどとは片腹痛いですわ。

親愛なる兄様達と戦わなければいけないなど悲しいことですが…

本当の事言われて逆ギレした上、短絡的に私を消そうなどという狭量な王の治める国など…」



そこまで言って、言葉を切るとセレーナは扇で顔半分を隠し、首を切るジェスチャーをした。

そんな国滅んでしまえばいいと、言うことなのだろう。



「あらあら、セレーナ怖い冗談がすぎますわ。

そうならないために私達奮闘してますでしょ。

頭はいつすげ替えられても知ったことではありませんが、それ以外はとても大切に思ってますのよ。

私達。」



おっとりとラクーアが嗜めるが、言っている内容はけっこうひどい。

まぁ仕方ないだろう。

彼女らは王の妃への愛の犠牲者なのだから。

今でこそ、それぞれ嫁ぎ先の国になくてはならない存在となっているが、嫁がされた当初はかなりの風当たりや軋轢があったと聞く。



「ハイハイ、不敬話しはその辺でおしまいにしなさい。

王子の件も片付いたし、今夜から君達はうちの実家に一泊後帰国になったよ。

私達も不肖の兄ながら可愛い妹や妹分の苦労に報いようと頑張ったんだから愚痴はその辺にして支度をしよう。

旧友と、後輩たちを見に行こうじゃないか。」



「それではベイモス帝国皇太子妃様、レイバーン公妃様エスコート致しましょう。」



ボリスが話を打ち止めにすると、バルドが妙に芝居がかった動きで、騎士の礼をとる。

妖艶美女二人は顔を見合わせ、少女のように軽やかに笑うとそれぞれの兄の腕を取ったのだった。





次回から学園祭編はじめたい!

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