31、宿泊学習編8
面倒な奴と一騎打ちをすることになってしまい、俺は目の前のイケメン最上と対峙していた。
周りは俺のクラスの奴と三組の生徒が囲んでおり、俺たちはその中心に立っている。
はぁ……これもそれも全部池内のせいだ、あとで何か陰湿な嫌がらせでもしてやろう。
「それじゃあ行くよ」
「おう」
最上がそう言うと、最上は持っていたコインを上空に向かって弾いた。
高く上がったコインは数秒で地面に落下し、試合の開始を告げた。
「行くよ! 前橋君!!」
「おわっ! い、いきなりかよ!!」
いきなり襲ってくる最上、俺はそんな最上の突きを交わしながら間合いを取る。
「前橋気をつけろ! 噂だと最上はフェンシングをしているらしいぞ!」
「早く言えよ!!」
聞こえてくる池内の声に反応しながら、俺は最上の猛攻撃を交わす。
突きだけのはずなのに俺はどんどん追い込まれ、周りで見ているクラスメイトの近くまで下がっていく。
「バカこっちくんな!」
「英司お前後で覚えてろよ!」
「よそ見をしていて良いのかな!!」
「うぉっ! あ、あぶねぇ……」
俺は最上の攻撃を避けながら、何とか攻めようと剣を振る。
しかし、最上も俺の剣を交わし、攻撃を仕掛けて来る。
狙いが正確であり、一瞬でも気を抜けば最上の剣が俺のターゲットに当たってしまいそうだ。
しかし、狙いが正確なぶん次の攻撃が読めるので、避けるにも慣れてきた。
「なかなかやるね」
「まぁ、剣道も少しかじってたからな」
まさかこんな場面で役に立つとは思わなかったけど。
「聞いたよ、君かなりモテるんだってね」
「はぁ? 急になんだよ」
そもそも俺はモテないし。
「何となく理由がわかるよ、顔立ちも整っているし運動神経も良い。おまけに先ほどの一組との闘いでの見事な作戦。モテる理由が分かったよ」
一体こいつは誰の話をしているんだ?
まぁ、俺でない事は確かだが……。
「だからこそ、僕は君に勝ってもう一度井宮さんに告白するんだ!!」
「うぉっ!」
なんかさっきよりも動きが早くなってないか?
てか、もう一回告白ってそもそも何?
一回こいつ振られてるんじゃないの?
まぁ、面倒そうな性格だからなこいつ……井宮も可哀想に。
なんてことを俺が考えていると、俺は足を滑らせて後ろに倒れてしまった。
「やべっ!」
「もらった!!」
最上はその瞬間を見逃さず、俺の胸のターゲット目掛けて剣を突き付けてきた。
やばいと思った俺も咄嗟に最上の胸のターゲット目掛けて剣を振るう。
しかし、俺振った剣はあろう事か最上の股間を直撃した。
「はぅ!?」
「あ……」
やっべ……。
俺はそう思ったが、既に遅かった。
最上は股間を押さえてうずくまり、倒れた衝撃で胸のターゲットは緑から赤になっていた。
「お、おい……大丈夫か?」
『終了ぉ~!! 勝利を手にしたのは一組の前橋圭司君だぁぁぁぁ!!』
「いや、だからどこで見てんだよ!!」
決着がついた直後、広場のスピーカーからは先ほどとは違う先生のハイテンションな掛け声が聞こえてきた。
どうやら決着はついたらしいのだが……なんとも申し訳ない勝ち方をしてしまった気がする。
「うぉぉぉ!! 流石だぜ前橋!」
「よくやった前橋!!」
「流石前橋君!」
いや、俺何もしてないよ?
どっちかって言うと、反則みたいな事をして勝っちゃったよ?
良いの!?
こんな勝ち方でお前らそれで良いの!?
盛り上がるクラスメイトを他所に俺は最上に手を差し出す。
「わ、悪い……大丈夫か?」
「うっ……き、君って人はなんて卑怯な真似を……」
「い、いやわざとじゃないんだ……悪い……」
「うぅ……認めない!」
「え?」
「僕はこんな結末認めないよ!!」
ですよねぇ~!
こんな終わり方認められるはずないもんねぇ~!
最上はそう言って自分のクラスの戻って行った。
なんだか可哀想な事をしてしまった。
*
「えぇ、それでは成績発表を行います」
レクリエーションが終わった後、先生の方からレクリエーションの総括と生成期発表が行われていた。
「それでは見事に勝利を収めた二組の大将前橋君、前に出て来てください」
マジかよ……もういい加減注目されるのはごめんなんだけど……。
俺はそんな事を考えながら先生の前に出ていく。
「それでは見事に勝利した二組にはお菓子を贈呈します」
俺は先生からクラス全員分のお菓子を受け取る。
まぁレクリエーションだしこんなものだろう。
そう俺が思っていると、急に先生がはぁはぁと息を荒くし始めた。
「そ、それと……はぁ……はぁ……副賞として前橋君には先生と結婚出来る権利をプレゼントします!」
「はぁ!?」
なんだその果てしなくいらない副賞!!
石城先生、結婚出来なさ過ぎてついに生徒に手を出してきやがった!!
「さ、さぁ前橋君!! この誓約書にサインして! 卒業したら先生と結婚するって約束しなさい!!」
「そ、それは景品じゃなくて脅迫じゃないですか!!」
「良いからサインしなさい! 君の成績なんて先生がいくらでも操作出来るのよ!」
もうこの人が先生なのかも怪しくなってきたぞ!
俺がそんな事を考えていると、石城先生の後ろから村上先生やって来た。
村上先生はため息を吐きながら石城先生の頭を叩く。
「バカ言ってないで、さっさと次の準備するわよ」
「あぁ~ん前橋くんとの結婚がぁ~!!」
そう言いながら石城先生は村上先生に連れていかれた。




