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29、宿泊学習編6

 そんな話をしている間に、大林はドンドン近づいてくる。

 作戦のおかげで向かって来るのは大林一人だけだが、その一人が手ごわい……。

 

「はぁ……仕方ないわねぇ……」


「おいどうした? 井宮? 前に出て」


「あの大男私がなんとかして来るわよ」


「は?」


「え?」


「な?」


「「「いやいやいやいいや!!」」」


 そう言う井宮に対して、俺と池内、そして英司は声をそろえてそう言い、井宮を止める。


「無理に決まってるだろゲームじゃないんだぞ!」


「井宮さん君の細い手足じゃ絶対に力負けする!」


「そうだよ、ここはここに居る馬鹿大将に任せて下がろう!」


「おい英司、いましれっと俺を馬鹿大将って呼んだな」


 そう言う俺たちに対して井宮はため息を吐いて口を開く。


「あのねぇ! あんたら男子がそんなんで頼り無いから私が行くって言ってんでしょ! まったく……やるときは女の方が強かったりすんのよ!」


 井宮がそう言うと、後ろにいた女子達もどんどん前に出てきた。


「確かにそうね、こんな頼りない男共より女子全員で掛かった方が簡単そう」


「あんな大男でも股間を狙えば勝ち目あるんじゃない?」


 いや、女の子が股間とか言うなよ!

 たかうちの女子連中、男子より男らしいんだけど!!


「行くわよみんな!!」


「「「「おぉぉ!!」」」」


 行っちゃったよぉぉ!!

 井宮を先頭に五人の女子が大林に向かっていく。

 ヤバイ、力の差がありすぎる!!


「おい英司! 池内! 援護に行くぞ!!」


「やっぱりそうなる!」


「あれじゃあ無駄死にだしな!!」


 俺達三人は走って井宮達の元に向かった。

 しかし、なぜか大林の動きは先ほどよりも鈍くなっていた。

 なんだ?

 一体どうしたんだ?


「おい、大林の動き鈍くなってないか? てか、顔赤くね?」


「はっ! まさか大林は女子に対する免疫が無いんじゃないか?」


「そんな理由で!? あ! でも確かに顔が真っ赤だ!!」


 おいおいマジかよ……まぁ確かに柔道部って女子とかにもあんまりモテそうにないし、部員も男子だけみたいだけど……。

 そんな理由であっちの大将動きが鈍るのか?

 ま、まぁ良いや……井宮さっさと大将をやって旗を奪ってくれ……。


「く、くそぉ……ど、どいてくれ……」


「どく訳ないでしょ! あんた女だからって手加減してるでしょ!」


「お、俺は女子に暴力は振るわない主義なんだよ! 頼むからどいてくれ!!」


 あぁ……なんか勝手な想像だけど、あいつ良い奴そうだなぁ……。

 まぁでも俺も勝たないと後でクラスメイトに何を言われるか分からないし。


「井宮下がれ!」


 そう言って俺は井宮と大林の前に出る。

 

「悪いなぁ……女子が苦手って知らなかったんだ」


「お前は前橋! くそぉ! お前の差し金か! 女子を差し向けやがって!」


「いや、だから悪かったって……なんでも良いけど、もうお前達の負けだ、降参とかしてくれない?」


「生憎だな、俺もやるからには負けたくなんだ!」


 そう言って大林は剣を俺に向かって振り下ろす、俺はその剣を避け、大林の胸のターゲット目掛けて剣を突き刺す。

 しかし、大林はその突きを避け、今度は俺の胸のターゲットを狙って来る。


「あぶねぇ!!」


「む……やるな」


 そうは言うが、かなりギリギリだったぞ。

 力だけじゃなく俊敏さまで……普通の化け物だろ。

 俺みたいな陰キャオタゲーマーに勝てる訳ねぇだろ……。

 しかも、いつの間にか池内と英司はどっか行っちまったし、先に来ていた女子達も後からきた一組の奴らと交戦している。


「さて……どうするかな」


「女が居なくなれば、お前になんか負けるかよ!!」


「あぶねっ!! お、おい! それ本当にスポンジか!? お前のだけ鋼鉄製とか言わないよな!!」


 俺は大林の剣を避けながら、大林のスキを狙う。

 しかし、体のわりに俊敏な動きをする大林になかなか剣が当たらない。

 

「なんでそんな早いんだよ……」


「練習のたまものだ!」


「練習でそうはならんだろ……」


 あんまり疲れることはしたくないんだが……仕方がない。

 

「終わりだぁ!!」


 大林は叫びながら剣を振り下ろす。

 俺はその剣を手で受け止め、大林の動きを止める。


「よっ!」


「なに!?」


「隙あり!!」


 俺は大林の動きが止まった一瞬のスキをつき、大林の胸のターゲットに剣を叩きつける。

 大林のターゲットは翠から赤に変わった。


「くそっ! まさか負けるなんて!」


「悪知恵は働くもんでな」


 俺はそう言いながら、大林の背中の旗を抜く。

 とりあえず一勝って事で良いのか?

 俺が大林から旗を奪うと、またしても放送が鳴った。


『一組の旗が奪われました、一組の生徒は速やかに先生達の居る救護スペースに戻って下さい』


「どこで見てるんだよ……」


「くそっ。負けちまったか……中々やるな前橋、顔だけの男じゃなさそうで安心したよ」


「そりゃどうも」


 大林はそう言いながら、先生たちの居る救護スペースに戻って行った。

 俺達二組も勝ったには勝ったが、すでにクラスメイトの三分の一がリタイアしている。

 一方で先ほどの一組とうちの戦いを傍観していたであろう三組は無傷だ、完全にこっちが不利だな……。

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