2、俺の友人枠は一つだけ
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俺のクラスには学校一の美少女と呼ばれている女子がなぜか二人いる。
なんだこの矛盾……なんてことを俺は入学当時から思っているのだが、この件に関しては理由がある。
俺のクラスに居る学校一の美少女二名の人気はほぼ同じなのだ。
それはこの二か月変わることがない。
男子の中では定期的にアンケートが秘密裏に行われるのだが、その結果も毎回引き訳で未だに決まらない。
だからうちの学校には現在学校一の美少女が二人いる。
そして、そのうちの一人が今現在俺の目の前に居る。
「………」
「………」
放課後の教室、俺と彼女以外に人は居ない。
目の前にいるのは学校一の美少女二号、井宮椿だ。
なぜ二号なのかは、俺が勝手に決めただけだ。
井宮はクールで大人っぽい女子だ。
服装も着崩しており、どこかギャルっぽい雰囲気がある。
男子には少し厳しい一面もあるが、女子から良く頼りにされているらしい。
長い茶髪のウェーブ掛かった髪が特徴で、スカートはこれでもかというくらい短い。
てかパンツ見えるぞ。
「……」
「……」
きっとここに実況が居たら「両者にらみ合って動かない!」とか言うんだろうなぁ……。
そもそもなぜこうなっているか、それは少し前に遡る。
俺はいつも通り放課後はさっさと家に帰って新作のゲームをしようと思っていた。
しかし、そんな俺をこの井宮が止め俺にこう言った。
「放課後……話あんだけど」
そう彼女が言った瞬間、クラスの全員が俺と井宮に注目した。
そして、何かを察したのかクラスメイトはいつもより早く教室を出て行った。
英司に目で助けを求めたのだが逆に睨み返されてしまった。
あの薄情者め……。
しかし、このままでは埒が明かない。
そして俺は早く帰ってゲームがしたい。
そして俺は女子と話なんてしたことない!
さてどうする?
「あ、あのさ……あんたってさ……」
「ん? な、なんだ?」
俺があれこれ色々と考えことをしていると、井宮が俺に話掛けてきた。
なんだ、一体何を言われるんだ?
ま、まさか俺の顔が生理的に受け付けないから整形しろとか言うんじゃないだろうな?
「あんたってさ……か、彼女とか居るの?」
「はぁ?」
何を聞いているんだ?
俺みたいな陰キャに彼女なんて居るわけないだろ。
こいつは何を分かりきったことを俺に聞いてるんだ?
もしかしてあれか!
「お前みたいな不細工に彼女なんて出来るわけねーだろ、わかったらその醜い顔をさっさとまともな顔に整形してこい!」
とか言われるのか?
はぁ……これだから女は嫌だ……面倒臭い。
というか、俺ってそんな不細工か?
「ちょっと! 聞いてる?」
「え? あぁ……わりい」
「い、いや……別にいいけどさ……」
うわぁ、こいつ相当怒ってるよ。
だって顔真っ赤だし、俺が顔見たら顔逸らしたし……。
「さっきの質問だけど、俺に彼女は居ない」
「そ、そうなんだ……」
「あぁ、それじゃ」
「え!? な、なんで帰ろうとすんのよ!」
「え? 終わりじゃないの?」
「違うわよ! も、もっとその……き、聞きたいことあんの!」
そういう井宮の顔は真っ赤だった。
きっと俺の言動にイライラしているのだろう……相当俺が気にくわないらしい。
しかし、俺も早くこの状況から抜け出したい。
なので、俺も舐められないように強気で行こう。
「悪いんだけど、俺も早く帰りたいんだ、早く済ませてもらえる?」
「わ、わかってるわよ……」
お、少し引いたぞ!
よし、あと一個質問に答えたらさっさと帰ろう!
ゲームしたい!
「あの……えっと……わ、私と……あの……」
なかなか言わないな……言いたいことがあるならさっさと言ってほしい、早く帰りたいから。
ま、まさかこれはあれか?
周りに他に人が居ないかを確かめてるのか?
さっきからもじもじしていろんなところに視線を移してるし、そうだきっとそうだ!
他人に聞かれたら困ることでも言おうとしてるのか?
も、もしかして……さ、殺害予告か!?
確かに昨今は殺すぞと言っただけで脅迫罪になる可能性もあると聞いたことがある気がする……。
「わ、私とその……友達にならない?」
「え、嫌だけど」
「え?」
「あ、じゃあ俺もう帰るから」
「え? え?」
「じゃあな」
「え? え? え?」
俺は井宮にそう言い教室を後にした。
まぁ俺の予想は外れたが……ある意味殺害予告と同じようなことを言われたなぁ……。
残念ながら俺の友達枠はもう英司で埋まってるし。
「ん? てかなんで友達? まぁいいか……考えるの面倒だし。さて早く帰ってゲームをしよう」
ようやく解放され俺は大きく伸びをする。
「な、なんなのよぉ!! あいつぅぅぅぅ!!」
ん?
なんか教室から叫び声が聞こえたぞ?
なんだ井宮の奴、電話か?
もっと静かにしてほしいものだ、女子は電話する時声が大きくなるらしいが、ここまで大きいとは……。
「やっぱり女は面倒だな」




