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16、女子と出かけるって男にとっては一大イベント

「じゃ、じゃぁ……前橋君の信頼を得られれば良いってこと?」


「え?」


 高城はそう言うと涙目で俺にそう尋ねてくる。

 いや、まぁ確かに信頼さえ出来れば別に良いな……友達になるわけじゃないし、井宮みたいな感じの関係は一人増えるだけだし。


「まぁ……それなら」


「わかった! じゃあ私前橋君の信用を得られるように頑張る!!」


「な、なんでそこまで……」


 別に俺みたいな不細工でボッチで根暗な男にこだわらなくても……。

 井宮と仲良くなる方法は他にもあると思うのだが?

 まぁ、俺から信頼を勝ち取るのは俺の匙加減次第だし、まぁ大丈夫だろう。

 なんてことを思い俺は簡単に条件を飲んでしまった。

 それを聞いて居た井宮は再び俺の裾を掴んでクイクイと引っ張る。


「ね、ねぇ良いの? 私の勘だけどあの子あんたの為ならんでもなるわよ?」


「いや、それはないだろ。俺みたいな不細工になんでそこまでするんだ?」


「だからあんたは不細工じゃないって言ってるでしょ! 一回鏡見てきなさいよ!」


「まぁ、そんな話はさておき、どうせすぐに飽きるだろ?」


「そうかしら……」


 俺と井宮はそんな話をしながら高城を見る。


「私頑張るね!」


 笑顔でそう言う高城。

 一体この美少女は何を考えているのか……。




 井宮と知り合って初めての休日、俺は井宮と初めて一緒に買い物に行くことになっていた。

 まさか俺が女子と買い物に行くことになるとは……。

 事の発端は井宮とのメッセージのやり取りからだった。

 なんでも今とあるゲーム機本体とソフトを同時購入することで、4000円の値引きが受けられるという割引イベントをゲームショップでやっているらしいのだが、井宮はゲーム機を新しくしたいがソフトがいらなく、俺はソフトが欲しいがゲーム機はいらないという状況であり、それなら協力してお互い安くゲーム機とソフトを購入しようという話になった。

 そんなわけで駅前で待ち合わせをしているのだが……なんだか緊張するな、学校以外でクラスの女子と会うなんて。

 姉に言われて髪型のセットなんかはちゃんとしてきたつもりだが……大丈夫だろうか?


「あ、あの……今お暇ですか?」


「え? 俺ですか?」


 なんだこの女は? 

 いきなり話掛けてきたが、俺に何か用だろうか?


「良かったら私とお茶でもしませんか?」


「え?」


 こ、これはもしや!!

 噂に聞くマルチ商法の勧誘か!!

 美人な女性が甘い言葉で儲け話をしてきて、高いツボを売りつけたり、どこぞの会員にさせられるあれかじゃないのか!?


「すいません、友人を待ってまして」


「じゃぁ連絡先交換しませんか! 今日がダメでもまた今度お茶でも……」


「い、いやですから……」


「何やってるのよあんた」


「あ……井宮」


 俺が対処に困っていると、私服姿の井宮が駅の中からやってきた。

 井宮は俺の状況を見ると、俺の手を掴んでこういった。


「すいません私の連れなので」


「え? あ……す、すいませんでした!!」


 井宮の言葉に女性は直ぐにどこかに行ってしまった。


「流石ギャル、強いな」


「何がよ……何ナンパされてるのよ」


「ナンパじゃない、マルチ商法の勧誘だ! はぁ、やっぱりリアルは怖いなぁ……」


「あんたはもう少し自分自身を理解しなさいよ」


 ため息を吐きながら井宮はそう言った。

 井宮の私服は何というか……オシャレだった。

 しかも熱くなり始めて来ている六月の終わりともあってか、少し露出が多い気がする。

 肩だしのシャツにはエロさを感じるな……。


「な、何よ」


「いや……」


 ヤバイ、少しジーっと見すぎてしまった。

 ここは何とかごまかさないと!!

 だが、ごまかすよりも素直に思った事を言った方が良いんじゃないか?

 うーむどうしよう……。


「なんか……いつもと雰囲気が違って良いな」


「な! 何よ急に!」


「いや、私服姿が新鮮でな……だが少し露出が多すぎはしないか?」


「あ、あんたには関係ないでしょ! 私の勝手よ」


 顔を真っ赤にし、自分の胸元を隠すようにしながらそう言う井宮。

 まぁ確かに少し言い過ぎたかもしれない。

 あまりに露出が多くて、お父さんみたいな事を言ってしまった。


「あ、あんたも意外とちゃんとした格好してきたわね……」


「あぁ、姉貴が女の子と一緒ならちゃんとしてけって……服なんかも姉貴が決めるから、編ではないと思うんだが……どうだ?」


「え? あ、あぁ……い、良いと思うわよ……その……私服の方があれね……良い感じよ」


「そうか、ならよかった不細工が少しはマシに見えるかな?」


 良かった、井宮からもオーケーをもらえれば俺の服装は普通なのだろう。

 

「よし、じゃあ早く行こうぜ! ゲーム機が売り切れてたら洒落にならねーし」


「そ、それもそうね」


「ん? どうした井宮? なんか顔赤いけど?」


「な、なんでもないわよ馬鹿!!」


「いや、馬鹿はひどくね……」


 一体どうしたというのだろうか?

 井宮は俺と顔を合わせようとしない。


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