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『赤毛猫海賊団 カタリナの野望』 ~カタリナ様はワガママ貫き通すってよ~  作者: ひろの
第1章 カタリナ、ついでに弩級戦艦もらっとく  ~ 弩級戦艦 2号 強奪編 ~

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第34話 噂を流していい?

「……私では、お父さんの代わりにはなれない。」


地下世界から戻ってきたミネは、そう言ってサクラモカに調査結果を詳細に報告した。


「あの重力井戸投射機グラヴィ・スパイクも、AI干渉弾オルゴール・コードも、お父さんがどれほどの危険を冒して手に入れたものか……。

 修復不可能のガラクタを、ニャニャーン神聖帝国23星系の闇を牛耳るボスを騙して、直させたらしいんです。」


サクラモカは、その言葉に絶句した。


「…帝国の闇を……?コタ、一体何をやってたのよ……本当に大丈夫なの?!」


「私にもわからなくなりました。

 でも、今は信じるしかありません。

 そして、私にお父さんと同じことはできません。

 到底、真似できることじゃない。」


ミネは深くため息をついた。


「だから、アーティファクトに頼るのは諦めます。

 アーティファクトじゃなくても、私にできることはあるんです。

 それをお父さんが夢の中で気付かせてくれました。

 信じてついてきていただけますか?」


サクラモカは、ミネの表情から、その言葉が本心であることを悟った。

しっかりと首を縦に振った。


「アーティファクトの代わりに、お父さんのもう一つの武器を使います。

 お父さんは、天才とは『運命すら操る虚構の物語を紡ぐ者』だと言っていました。

 今回の作戦は、その『虚構』を最大限に利用し、私の出来ることで勝負します。」


「虚構?」


サクラモカが首を傾げると、ミネは静かに頷いた。


「まず、モカ様には二つの噂をこの星系の商人、そして軍部と裏社会に流して欲しいんです。」


「二つの噂?」


「一つは、赤毛猫海賊団が『重力井戸投射機グラヴィ・スパイク』と『AI干渉弾オルゴール・コード』を再入手したという噂。

 もう一つは……赤毛猫海賊団は、生まれ変わっても三回くらい遊んで暮らせるほどのとんでもないお宝を手に入れた、という噂です。」


「は?なぜ、そんな噂を?」


サクラモカはますます困惑した。ミネは、その問いには答えず、ただにやりと微笑んだ。


「サプライズです。2人の度肝を抜くので、期待してお待ち下さい。そして、カタリナ様。」


ミネがカタリナを呼ぶと、彼女は恐る恐る近寄ってきた。


「あ、あの…今度は何を…?えっと……悪い事はしてませんよ。

 1回牛乳こぼしただけです。ちょっと臭いだけでででで、いでででで」


ミネは怒りの形相でこめかみをぐりぐりした後、また語りかけた。


「カタリナ様には、とある海賊を襲撃して、金銀財宝を奪い取って欲しいんです。」


カタリナは目を丸くした。


「え!?私一人で!?」


「はい。一人で。その海賊は、さほど強くありません。

 ですが、少量ながらも本物の金銀財宝を貯め込んでいると聞きました。」


「うわぁ!冒険だ!やるやる!私に任せて!」


カタリナは目を輝かせ、すぐにでも飛び出していきそうな勢いだ。


「…ですが、一つ条件があります。」


ミネがそう言うと、カタリナは一瞬で真顔になった。


「その金銀財宝は、私に渡してください。」


「…え?いやだ!なんでよ!」


「あれを有効活用したいのです。

 カタリナ様は弩級戦艦をもう1隻欲しくはないんですか?」


「ほっほしい………。わっ分かったよ。渡す。」


カタリナは不満そうに口を尖らせたが、ミネの真剣な目に気圧され、しぶしぶ頷いた。

その後、ミネはサクラモカが雇った技術者たちを格納庫に集めた。

彼らの前には、無惨な姿を晒した『ポンコツ見かけ倒しネコパンチ号』が鎮座している。


「一体何をやるんだ、嬢ちゃん?」


技術者の一人が尋ねた。


「この艦に、最新鋭のメガキャノンとアーク放射器の張りぼてを装着してください。

 私は兵器マニアです。

 それらは国家極秘級の武器ですが、1mmのズレのないほど、外観の寸法は暗記しています。」


ミネの言葉に、技術者たちは唖然とした。


「すっすげえな。でも張りぼて?何に使うんだ、そんなもん。」


「戦闘力は要りません。

 ですが、その存在感と見た目は、弩級戦艦そのものです。

 遠目から見れば、本物と区別がつかない。この巨体と巨砲、それだけで十分なんです。」


技術者たちは、ミネの真剣な眼差しに気圧され、文句を言いつつも作業を開始した。


「本当に、こんなんで上手くいくのかねぇ……」


サクラモカは不安そうに呟いた。


「モカ様、大丈夫ですよ。私たちは、お父さんの物語の続きを紡ぐんですから。」


ミネは不敵に笑った。その顔は、まるでコタの生き写しのようだった。

一方、カタリナはドリルヘッドコルベット、エクリプス号に乗り込み、エレノア船長と一緒に、指定された海賊船にドリル体当たりを敢行していた。ドリルハッチを開放して双剣を手に中に突入していった。


「一人で乗り込むなんて、冒険だなぁ!よーし、お宝ゲットするぞー!」


彼女は胸を躍らせ、嬉々として海賊達の中心に突撃して大暴れする。

海賊たちは、突然現れたカタリナを見て笑い声を上げた。


「なんだ、こんな小娘が一人で乗り込んできやがったぞ!なんだコイツ!?うぶへっ!」


「お宝は、全部、私のものだ!」


カタリナは欲望を露わにし、海賊たちに向かって突進していった。


その間に影薄い大臣のエレノア船長他、影薄い系海賊達がそそくさと中に入っていって、宝や武器、金目の物をエクリプス号に運び入れた。



数時間後、ボロボロになったカタリナとエレノア達が、大きな麻袋を担いで帰ってきた。


「ミネ!お宝、ちゃんと取ってきたよ!」


カタリナは、誇らしげに麻袋を差し出した。

ミネは中身を確認し、満足そうに頷いた。


「ありがとうございます、カタリナ様。

 では、このお宝は私が預かりますね。

 あ、そうそう。そのポケットの中のも出して下さい。」


カタリナのポケットは不自然に大きく膨らんでいた。


「くそ。めざといな!」


大きな宝石を取り出す。


「これはいいものですね。作戦には使わずに売って海賊団の軍資金にします。」


「きぃぃぃぃ!」


あくまで表情を崩さず、カタリナは内心ほくそ笑む。


(あのダイヤは惜しいが、あれは囮だ!本命は指輪や金貨さ!はははは!ミネ。破れたり!!)


「ん?カタリナ様、他にもありそうですね、出して下さい。」


「ぎいいい!!!お前、心読めるのかよ!?」


仕方なく一握りの宝物も涙ながらに取り出した。


「えー!ちょっとくらい、私にもちょうだいよ!」


「ダメです。」


「ケチー!」


カタリナは不満を口にするが、ミネは聞く耳を持たず、お宝を手にポンコツなネコパンチ号の最深部にあるカタリナの部屋へと向かった。


カタリナの部屋では、団員にそこら中のワンコインショップで買いしめさせた、大量のおもちゃの金貨や銀貨、メダルや札束が、山のように積まれていた。

ミネは、そのおもちゃの山の上に、カタリナが持ち帰った本物の金貨や宝石をパラパラと振りかけた。

その光景は、まるで大量の本物の財宝があるかのように見えた。まるで大宇宙海賊が自室に宝を無造作にぶちまけて、示威を示すかのように、壮観な眺めだった。


「……さてと。これで、準備は完了ですね。」


ミネは満足そうに微笑んだ。


「待ってミネ!何してるの!?」


遅れてやってきたサクラモカが、その光景を見て絶叫した。


「このお宝が、二つの噂を現実にするんです。弩級戦艦を強奪できるほどの力と、生まれ変わっても三回遊んで暮らせるほどのお宝があるという、虚構をね。」


「……?どうする気よ?」


サクラモカは、ますます疑問符を浮かべた。

ミネは、その問いには答えず、ただにっこりと笑った。


「すべては、作戦通りに。これこそが、私の『物語』です。お父さんにも負けない、"私の"サプライズです。」


ミネの瞳は、コタから受け継いだ決意と、底知れない企みに満ちていた。

挿絵(By みてみん)

はーい!カタリナだよ!第34話、読んでくれてありがとね!


いやー、久々に冒険した!やっぱり私には、こういうのが一番だよね!

一人で海賊船に乗り込んで、ドカドカ倒して、お宝ゲット!

最高!ギャハハ!私の強さは、もう惑星1個分くらいあるんじゃない?


でもさー、せっかく頑張って手に入れたお宝、全部ミネに取られちゃったんだよー!

しかもさ、ポケットに隠しておいたやつまで見つかるんだよ!?

「心読めるのかよ!」って言ったら、無言で睨まれたし…もう、ミネはケチ!

あの子、なんか「虚構」とか「物語」とか、難しいことばっかり言ってさ。

しかも、弩級戦艦に張りぼてくっつけて、おもちゃの金貨を部屋にまき散らしてるし。

一体、何がしたいんだろ?わけわかんなーい!


でも、なんかワクワクするよね!

ミネが言うには、次はもっとすごい冒険が待ってるらしいんだ!

お宝は全部取られちゃうけど、冒険できるならいっか!


みんな、次の話も楽しみにしててね!

ミネが「サプライズ」とか言ってるけど、絶対私がもっとすごいサプライズにしてやるんだから!

感想とか、応援のメッセージ、いっぱい送ってね!


もし送ってくれたら大臣にしてあげるよ。何大臣がいい?


では、また次回!

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