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『赤毛猫海賊団 カタリナの野望』 ~カタリナ様はワガママ貫き通すってよ~  作者: ひろの
第1章 カタリナ、ついでに弩級戦艦もらっとく  ~ 弩級戦艦 2号 強奪編 ~

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第31話 遺言、見てもいい?

~ 弩級戦艦 2号 強奪編 ~

「モカ様、お願いがあります。」


「あ、うん。」


ミネのただならぬ気合に気おされてサクラモカも説教をやめ、ミネに注目した。


「あのポンコツスクラップ……”ポンコツ見かけ倒しネコパンチ号”と、とりあえず命名しますが。」


「え?待って、あれは私の美学の結晶なのにそんな変な名……ぎゃひ」


サクラモカが拳骨の脳天に落としてカタリナを黙らせた。


「”ポンコツ見掛け倒しネコパンチ号”はゴミ同然ではありますが捨てないで欲しいのです。」


「え?分かった。」


「あれにはなぜかお父さんの魂が宿っているような気がします。きっと役に立ちます。攻撃と防御は諦めますが、推進力だけは修復しておいてください。」


「了解。会社の経費で修復しておく。でも、あんなの何に使うの?何か名案が浮かんだってこと?」


「いえ、まだ何も。方向性すら決まっていません。ですが、ご安心を。私はお父さんの娘ですから。サプライズを期待していてください。」


そういうとミネはにっこり笑ったが、目はまったく笑っていなかった。


「ミネ、私にもできることは何かない?何でも言うこと聞くよ!」


申し訳なさそうにカタリナも問いかける。


「そうですね……。何か思いついたらお願いすると思います。あ……いえ。ありました。」


カタリナが床に正座して背筋を伸ばして神妙な顔で聞く。


「お菓子の食べ歩き禁止!」


「はっはい。」


「食べたお菓子の袋はちゃんとゴミとして捨てる!」


「はい!」


「時々、何でここから出てくる!?みたいな所にお菓子のゴミを捨てるな!」


「はいぃぃ!」


「食べこぼすな!

 食べこぼしたご飯粒を、自分で踏んずけて歩き回るな!

 仮に気づかずに歩き回ってしまったら、歩いたところ全部の床を拭け!

 スリッパの裏もだ!」


「はいぃぃぃぃぃぃぃ!」


頭を深々と下げて、おでこを床につけながら万歳した手を土下座風に床につけて返事した。


サクラモカが呆れながらつぶやいた。


「依頼内容、なんか思ってたのと違った。」


「まだまだありますけど、たくさん言うと絶対忘れるのでその4点は厳守してください。」


カタリナがゆっくりと頭を上げて上目遣いで問いかけた。


「ねぇ………こういう時って、アーティファクトを悪党から奪い取ってきて欲しいとか、なんかそのさ………漫画とかだと凄い冒険が始まる感じだったんだけど……食べこぼすな…の流れで終わり??」


「はい、カタリナ様は邪魔なので食べこぼさなければ、それで結構です。」


「ねぇ、モカ!酷くない!?」


サクラモカは無視した。


「私は自室に戻ります。」


カタリナがギャーギャー言ってそうだったが、それを無視してミネはその場を立ち去った。


そして主のいなくなったコタの部屋を訪れた。


彼の不在中も、部屋は完璧に保たれている。

書斎、研究室、そして彼が愛用していた無数のガジェットが整然と並ぶその空間は、まるで彼の存在そのものが凝縮されたかのように感じられた。ミネは静かに扉を閉め、部屋の空気に身を委ねた。


「お父さん…」


ミネは、コタが残した膨大な数の手記やデータを手に取った。そこには、過去の作戦の記録、失敗の分析、そして未来へのアイデアがびっしりと書き込まれている。


『天才とは、運命すら操る虚構の物語を紡ぐ者である』


手記の冒頭に記されたその言葉が、ミネの胸に深く刺さった。彼女は、これまでの成功が、コタの天才的な発想と、偶然手に入った「重力井戸投射機」や「AI干渉弾」というアーティファクトによるものだったことを改めて理解した。

アーティファクトは、まさに運命を変える切り札だった。


「お父さんなら、どうしたか…」


ミネはコタと同じように、まずアーティファクトを探すことにした。


ふと、遺言箱に入っていた、壊れた記憶型ホログラフ装置を見つけた。


何かヒントが入っているかもしれない。


拾い上げて再生しようとする。力いっぱいぶつけた影響で派手に壊れていたが、なんとか起動できるように修理する。


「ミネ……私………下………で…………ジャ…ク…マル…ン…………………………た。…………………………が……………………………………………………だ。…は………………………………る。また………………………………………う。」


何かしゃべっているようだったがホログラフは途切れて表情が見えない。そして音声もほとんどが聞き取れなかった。全てを再生し終わった後、今度こそ、その再生機は小さな爆発と共に飛び散った。

おそらく恥ずかしいので1回再生したら自爆する装置だったんだろう。


”私は生きている。また会おう”


最後そう言っているような気がした。


「人間の脳って、欠けた情報をホントに都合がいいように補完して解釈するわね。それくらいお父さんに会いたい、助けて欲しい。……私はそう思ってるのかしら。」


そう呟くと飛び散った破片を片付けた。

その時ふと記憶がよみがえった。あの遺言ホログラフに出てきたジャ…ク…マル…ン?

どこかで聞いた気がする。


もう一度、ミネはコタの膨大な手記の中から関連しそう単語を検索した。


ジャ…ク…マル…ン


ジャンク・マルザン、父、コタが愛用していた闇商人。この世界では最も胡散臭く、役に立たないものしか売らないと噂される、ろくでなしのガラクタ屋。

まさかあのガラクタ屋がお父さんにあのアーティファクトを提供した?

あるいは、お父さんの最後の行き先を知っているのかもしれない。


今、悩んでも何も答えがでない。そんな時は行動あるのみだ。お父さんならそうした。


だが、マルザンがいる場所は、地下世界でも危険な場所。

お父さんは、あのように見えて、実は強かった。

だが、ミネはそれほど強くはない。あの危険な場所でマルザンを探すことが出来るだろうか?


そんな時に、カタリナの顔が思い浮かんだ。


「いい用心棒が居た!」


再び、カタリナ達が居たダイニングに走った。


「カタリナ様!!」


部屋に飛び込んで叫ぶ。


カタリナがお菓子を食べ歩きながら、飲み物を取りに冷蔵庫に向かっていた。


「あ!?」


ミネに気づいて、カタリナがお菓子を背中に隠す。


ばさばさばさ。


誤って袋の口を下に向けてしまい、派手にこぼした。


「あぁぁぁぁ!?!?」


カタリナはこぼしたお菓子を見た後、恐る恐るミネの方に視点を移す。

鬼の形相で立っているミネがいた。


「カァタァリィナァ!!!……さまぁぁあぁああぁああ!!!」


カタリナはド叱られた。

挿絵(By みてみん)

…ここまでお読みいただき、ありがとうございます。連続で執事補佐のミネ・シャルロットです。


怒りのループから抜け出し、ようやく冷静さを取り戻しました。

あれがカタリナ様なのです。お父さんも私もそのカタリナ様を支えてきたのです。

今更あれがなんだ!ですね!


そして、衝撃的だったのが、お父さんの残した言葉です。

「天才とは、運命すら操る虚構の物語を紡ぐ者である。」

これまでの私たちの成功は、お父さんが用意した「虚構の物語」だった。

私は、その物語の「裏方」として、お父さんの手足となることで、その「虚構」を現実のものとしてきました。

ですが、お父さんがいなくなった今、次に進むべき物語の道筋は、私自身が見つけなければなりません。

「虚構の物語」……わかるようでわからない。難しい言葉ですね。私に実践できるでしょうか?


「遺言」に残された、ほとんど聞き取れない言葉…その中に隠された唯一のヒント、「ジャンク・マルザン」。

お父さんが、私に新たな冒険の始まりを示してくれたのだと、私はそう解釈することにしました。


そして、その冒険には、どうしてもカタリナ様の力が必要です。

邪魔だと言った手前、ちょっとだけ気が重かったんですよ。

…ええ、もちろん、食べこぼしやゴミをきちんと管理させることも、大切な訓練の一環です。Gが湧いてはたまりませんからね!。


少しは下手に出て、お願いしようかと思ったのに……お菓子の食べ歩き……あの約束は何だったんでしょう。Gが湧いたら許しません!もう、良いです!次回はカタリナ様をこき使うことにします!


【執事補佐ミネより、運命を紡ぐための支援要請】

「天才とは、運命すら操る虚構の物語を紡ぐ者である。」


お父さんが去った今、この言葉の意味を理解し、**次なる「虚構の物語」**を紡ぐのは私の役割です。

皆様の「ブックマーク」と「評価ポイント」こそが、この物語を次に進めるための、 最も確かな「運命の道標」 となります。

感想をいただけたら、 「ジャンク・マルザン」 のいる地下世界での最適な交渉術や、2隻目強奪の解決策を何か思いつくかもしれません。


私に、お父さんに代わる「知恵」を貸してください。

さあ、いよいよ、新たな節目、**”弩級戦艦 2号 強奪編”**が開始です。


では、また次話でお会いしましょう。

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