表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/167

93:しばしの眠り ~グレン・バハムート~

区切りの都合で少し短めです。

*** *** グレン目線 *** ***



「バハ様、そろそろ頼むよ」

「本当に良いのか?」

「うん、バハ様も解ってるだろ?

 儂が皆にしてやれる、最後の事なんだ」

「承知・・・した・・・」


納得していないような、眉間に皺を寄せた顔でバハ様は頷き姿を消した。


まったくさぁ、なんでこんな事になったかなあ。

なんで儂だけ0歳スタートじゃないんだとかさ、

称号の悪魔ってなんだよとかさ、思うところはあるよ?

何こんなクソめんどくせぇ事に巻き込んでくれてんだとか。

皆でバカ言って笑って楽しく過ごしたいだけだったのにさ。

そのついでに気が向けば深淵なる闇の浸食スピードを押えるだけのはずだった。

イシュカ神もそれでいいと納得してたはずなのにさ。

ほんとなんでこんな事になったんだか。

この世界の為とかじゃない。

この世界の住人の為とかでもない。

儂の大事な仲間とその仲間達の家族の為だ。

別に儂が消滅する訳でもないし、ちぃとばかし眠るだけだし(たぶん)

でもあいつ等は納得しないだろう。

だから、バハ様に頼んであいつ等の記憶から儂を決して貰う事にしたんだ。



旅の間にゆっくり儂の生命力を吸収しながら育った世界樹の種は準備万端の様だった。

地面に手を付き種に意識を向ける。


目覚めよ黒の世界樹


ベキベキと指先が枝葉へと変化を始める、

その変化は指先から手の平へ、手の平から腕へと進んでいく。

足は根へ体は幹へと変化を遂げその幹からは枝葉が広がる。

儂の体は様変わりし、黒の世界樹の誕生だ。

だが残念ながら儂一人では可愛らしい小さな樹だった。

そう言えば氷の大地の世界樹は精霊を取り込んでいたっけか。

するとデューンとバハ様、バルドルくんにゲイザーくんまでもが樹に触れ、光となり吸い込まれた。

「え?」と思った瞬間メキメキッと樹が大きくなった。

(無茶するね4人共・・・)

(なぁにグレンと共に眠りに就くだけだ)

(グレンが目覚めれば我等も目覚める)

(常に共にあると申したであろう)

(キュッ)

(そっか、ありがとう)

アリアンも手を触れようとしたけど、儂は頑張って弾き飛ばした。


だってさアリアン、カズラの事好きだよね?まだ告ってないよね?

カズラさ、前の世界でもずっと独身貴族だったんだよ。やっと春が来そうじゃん?

カズラだってまんざらでもなさそうだったしさ。ニヤニヤ

て、事でアリアンは儂等の事忘れてカズラへの恋心だけ持って行っておいで。

バハ様、最後の力貸して?アリアンをオアシスまで送ってあげよう。

ポワンとアリアンの姿は消えていった。

何か言ってた気もするけどごめんね。

儂もお聞こえないし見えないや。

デューンもバハ様もバルドルくんもゲイザーくんもごめん。最後まで付き合わせちゃった。



*** *** バハムート目線 *** ***



仲間達から自分の記憶を消す様にと、我は頼まれた・・・

「あいつ等の事だからさ、きっと儂を思い出せば辛いと思うからね」

そう言ったグレン、其方は辛くないのか?

辛くない訳がない。

だがそう決めたのだな。

ならば我はそれに従うまでだ。


「バハムート殿。我の記憶は消してくれるなよ。

 たとえグレンが世界樹になろうとどうあろうと

 我はグレンと共に在ると決めたのだ」

「私もですわ・・・」


グレンは苦笑していた。


「案ずるな。何処であろうと我等は常にグレンと共に在る」


影に身を沈め、オアシスに居る彼等の元へ向かう。

気取られぬように、何事も無かったかのように。



『『『 バハ様?! 』』』


皆が一斉に駆け寄って来る。

ああ、共に旅をして来たこの顔ぶれも見納めになるのだな。


「皆揃っておるな。グレンからの言伝がある。

 イザ。水晶はまだ持っておるか?」


イザが水晶を手にすると淡く光を放ちだす。

ホワンとグレンの姿が映し出された。


『『『『 姐さん!!! 』』』』


彼等がグレンの名を口にした次の瞬間、強烈な光が放たれた。

これで、彼等の記憶からグレンや我等の事は消え去るだろう。

皆、またいつか巡り合うその時まで達者に暮らせ。



その後にグレンの元へと戻れば、変化は既に始まっていた。

だがどうやら力が足りておらず黒の世界樹は小さな若木だった。

我はバルドルと頷き合い手を翳す。

同時にデュラハンも手を翳していた。

ゲイザーはそのまま体当たりで吸収されていった。

アリアンが手を伸ばしかけた時、枝が跳ね飛ばした。

(バハ様、最後の力貸して?アリアンを草原まで送ってあげよう)

(承知した)

すまないなアリアン。

其方からも記憶を消させて貰う。

其方の幸せを皆で願っておるぞ・・・


「待って、待ってください!

 私もお側において下さい! 共にあると誓ったではありませんか!

 嫌です!私も・・・待って、まっ・・・」


アリアンを転移させたが黒の世界樹に力を注いだせいで少し座標がずれたやも知れぬ。

まぁそこはフレイヤがそれとなく導いてやってくれ・・・

次第に意識が遠のいていく。

姿形は無くとも近くにグレンを感じる事が出来る。

眼が覚めた暁にはこの世界の神々に遠慮などしてやるものか。

我等はグレンの為に存在するのだ。

なぁグレン、其方は目覚めた時に何を望むだろうか。

グレンのはにかんだ笑顔を思い出しながら

しばしの眠りに就くとしよう。


読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ