91:招かざる客との対峙① ~グレン~
あれからどのくらいの月日が流れたのか。
皆は無事にオアシスに辿り着いただろうか。
儂等3人は相変わらず異質なスルーアやバンシーなんかを倒している。
悪意を持った人間なんぞはゾンビの様にワラワラと溢れている。
どいつもこいつも首を切り落とすか灰になるまで燃やし尽くすか切り刻むかにしないとならない。
時間は掛かるし疲れるしベトベトして気持ち悪いしで中々首都へと辿り着かないでいる。
まぁお陰で儂が身に着けているアレは順調に育っているのだがね。
あの時、氷の大陸の世界樹の前でイシュカ神と話した時に聞かされた。
神域でも今大変な事になっているのだと。
やはり招かざる客は何処かの世界からの転移者だったようで、これまた何処かは解らないけど何処かの神から良からぬ力を貰っているのだそうな。
そいつが押しかけて来て魅了魔法を使って下僕を増やして、下僕に隷属魔法を使わせて奴隷を増やして世界を自分の物にしようとしているのだとか。
その何処からかやって来た神とやらは特定の担当世界を持たず彷徨っているらしく、なかなか足取りが掴めずにいて苦労しているらしい。
まぁ簡単に言えば姫プが自分の理想の世界を作ろうとしてるって事でいいのかな。
いやそんなの勝手に脳内で完結してくんねぇかな?
巻き込まないで貰いたいんだけども?
すでに深淵なる闇と一体化し始めてるから神々も手を出せずに困っているんだとか。
神々が深淵なる闇に触れてしまうと悪神になるとかなんとか・・・
そこで世界樹を使って、せめてガルドからは出られないようにと結界を張ろうとしたのだけども世界樹1本では抑えきれないらしくて。
対となる黒の世界樹が必要なんだそうな。
ただ、その黒の世界樹は・・・土台となる生命が必要なんだとかで今までは誕生させた事がないらしい。
じゃあどうやって誕生させるのか。
土台に植える、その生命体に種を植えるんだとかでそりゃまたなんというか。
つまりイシュカ神が儂の前に現れたって事はそういう事なのだろう。
そりゃ言いにくいからイシュカ神も言い淀むわなぁ。
「黒の世界樹になったらさ、土台の魂は消滅すんの?」
「いや長き眠りに就くだけだの」
「眠りって事はいつかは役目が終わって目覚めるって事?」
「んむ」
「その土台になる生命って目途はついてるのかな?」
「それなのだが・・・
もう1人の其方、テラ7の其方がな」
「は?待たんかい!
そのテラ7の儂だってこの世界で新たな人生歩んでんじゃないの?」
「それがの・・・
時間軸のズレでこれから転移する事になっておって」
「はぁぁぁ?!
転移前にいきなり人柱になって眠りに就けってか!
冗談じゃぁない、あんまりじゃね?
そのもう1人の儂だって行き成り巻き込まれてテラ7じゃ消滅扱いなんだよね?
よくもまぁそんな相手に行き成り人柱になれとか言えるね?
あぁもういいよ。ほれ種かせ。よこせ。はよ。
儂がなればいいんだろ?なってやるよ」
「良いのか?・・・」
「良いのかも何も、儂がそう言いだすのを見越してたんじゃないの?
言い出すのを期待してたんじゃないの?
その代わり、もう1人の儂は平和な時代?
この騒動が終わってからこの世界に転移させてよね。
それに・・・
役目を終えたら、次こそは!
次こそはのんびり暮らせるように配慮してよね!
勿論、もう1人の儂も皆もさ!」
「う・・・むぅ・・・」
なんか歯切れ悪いなぁ。
「解ってると思うけど、他の皆にはこんな無茶振りしないでよね」
「ああ、勿論じゃ」
「皆にこんな事させたら儂暴れるよ?」
「解っておる、其方が暴れたら世界が崩壊するわい・・・」
「そこまでの力ある訳・・・ あるの?」
「止めぬか、試そうとするでない!」
「やだなぁ、試す訳ないじゃない。皆が居るのに」ニッコリ
「では引き受けてくれるだろうか・・・」
「仕方ないなぁ。約束は守ってよ?」
「解っておる、すまぬな」
とまぁこんな会話をイシュカ神とて、今儂の心臓の上には黒の世界樹の種が根を張っている訳だ。
あれ?・・・
今思い出したけどさ。
転移前にイシュカ神はもう1人の儂について「時が来れば自然と遭遇する事となろう。その時は言葉を交わさずともすべてを理解するであろうよ」とかって最初の時に言ってなかった?
え・・・
待って? もしかして眠りに就いて再び目覚めた後にも何かあるって事?
ハッハッハ・・・
まさかねぇ・・・
たぶん当初の予定と狂ったって事だよね?
と言うかさ、神々ってのはもっとこうなんつーの?
威厳があって世界をバランスよく収めてるのかと思ってたんだけどな。
・・・・・・。
不安がよぎって来た。
(おいでませバハ様、バルドルくん、ブラフマーくん、ラーさん、トトくん)
『『『 呼んだか主 』』』
「あー、悪いんだけどちょっと神域に行って手伝ってやってくんない?」
『彷徨っておるヤツを見つければよいのか』
「うんうん、見つけたら滅しちゃっていいよ、はた迷惑なだけだし。
どうせ悪神とか邪神のたぐいになるんだろうし」
『なるほど、承知した』
「後はこの世界の神々とかテラ7の神とか遭遇したら
儂等の今後の平穏について確認してきてくれるとありがたいかな」
『あいわかった。時に主』
「ん?」
『バハムートと モガモゴモゴ・・・あにぼふるー』
『行くぞ、バルドル』
バルドルくんが何か言っていたけど聞き取れなかった。
まぁ彼等はゲームとは言え元々神だし神域行っても大丈夫だろう。
と言うか、あの彷徨ってるヤツになんぞ負けないと思うし。
儂ももうひと踏ん張りするかな。
頑張りゃあと数日で首都に着くだろ・・・
そう思いながらも思い出した。
儂いつから変態出来る様になったんだ?・・・
一帯儂は何になって行くんだ?
読んで下さりありがとうございます




