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86:ポス草原横断③ ~イザ~

ドドンッ!


目の前に山の様に積み上げられた木の実や肉類。

その後ろには目をウルウルさせた野生動物達。

更に後ろには魔獣や魔物達・・・

そして正面には困惑する俺達。


何をしているかと言うと・・・

ダンジョンに大きな気配がして怖いから何とかして欲しいと依頼をされている訳なのだが。

まさか野生動物や魔獣・魔物から依頼が来るとは思っても居なかった。


皆と顔を見合わせる。

ここのところ、フィールドもダンジョンもスルーア達の数は減っていた。

これもガルドでの異常が関係しているのだろうかと話していたらこの依頼が来たのだ。


ズラ「まあほってはおけないよな・・・」

ライ「大きな気配ってのが気にはなるよな」


確かに大きな気配が何なのかは気になる。

それに・・・

あのウルウルされた目で見つめられて断れる訳がない。


「まずはダンジョンの大きさを確認だな」


全員で行くわけにもいかないのでボブ・シカ・フィンには待機してもらう事にした。

代表らしき魔物にダンジョンまでの案内を頼んだ。


『ありがとうございます。我々では近づく事さえできなくて・・・』


彼等達は普段ならダンジョン内の深淵シリーズは自分達で何とかしているのだと言う。

ただ今回はその気配がする場所に近づけないでいるらしい。

何か強烈な威圧でも放っているのだろうか?

ここですと言われた場所にはそれほど大きくは見えない洞窟がポカリと口を開けていた。

確かに・・・他のダンジョンと違い何かの気配を感じる。

なんだろう?・・・


カズラに入り口の見張りを任せ、俺・ジーク・ライカで中に入る。

確かに内部のMOBはほぼ居ない。

進むにつれ、気配が大きくなっていく。

5Fに辿り着いた時、気配の正体が見えた。


これは・・・

例えるならクリオネ?


見た目は愛らしいのだが食事姿はまさにモンスターだとグレンが言っていた気がする。

クリオネは氷の下の海に生息する小さな生き物だ、貝の一種だったか?

目の前のソレは大きさが明らかに大きさが違うし陸上に居る時点でクリオネではないよな。

異様な気配も感じるし・・・

魔物達が言っていたのはコイツの事だろう。


「ライカ・ジーク。これ見た事あるか?」

「いや、ないな」


ふむ・・・


「まあ浸食シリーズなのは判るが、やってみるか」


其々剣を手に構える。

と、それに反応したのか パカッ と頭らしき部分が大きく開く。

口かよ!

開いた部分からはウネウネと何本もの触手が伸びてくる。

なるほど、この触手で魔物達は近付けなかったのか。


「先ほどまでは愛らしいとも言える姿だったのに・・・」


まったくだ、この姿だとまさにモンスターかエイリアンじゃないか。

なんならバイオのプ〇ーガに見えてくる・・・


「シカとボブが留守番で良かったかもな」


ああ、そうだな。

あの二人だと「カワイイー!」とか言って

駆け寄って行ってアッサリ捕まっていたかもしれない。


その光景が頭に浮かぶ。

すぐに浮かぶのも問題な気がするが。


距離を詰めようと一歩進むと・・・

それの反応は早かった。

足を狙いスタタンと触手が伸びてくる。

かわしながら反撃し、伸びてくる触手を切り落とすがそれはすぐに再生してくる。


ピタッと急にウネウネが止まった。

なんだ?・・・

プルルルッと身を震わせたかと思うと


ポンポンポンポンッ


小さなクリオネがワラワラと生まれた・・・


イザ「えぇぇ、まさかの今出産?」

ジー「増えたな・・・」

ライ「んむ・・・」


小さなクリオネはクワッと口を広げて一斉に襲い掛かって来る。

うげぇ、こうも数が多いとキモイ!


「すまん、魔法に切り替える」


物理攻撃だとキリが無さそうなので魔法攻撃に切り替える事にした。

稲妻がミニクリオネに連鎖するようなイメージで・・・


パシッ ピカッ ゴロゴロゴロッ


ゴロゴロ?・・・

いやいやその音の再現はいらんから。

ドドンッと音が響き目の前を閃光が走る。

ミニクリオネはパタパタと焦げて落ちていき

本体?母体?はピリピリと体を痺れさせている。


と、体の色が半透明から赤に変化していく。

これは警戒色?それとも激高?

ガバッと口は更に広がり中にはおびただしい歯だか牙だかが見える。

触手の数もさらに増え、体部分は隠れて見えなくなっている。

うげぇ・・・

何かのホラー映画に出てきそうだ。

触手の数が増えた事でジークやライカは苦戦を強いられている。

振り払うのに精いっぱいで本体までなかなか辿り着けずにいるのだ。

さすが本体とでも言うべきか

雷の通りがイマイチなので炎も試してみたがやはりイマイチだった。

ならば凍らせて動きを止めるか?

が、これも通用しなかった。

耐性でもあるのだろう。

さてどうする・・・


ライ「触手がどうにかなれば・・・」


触手・・・

触手が出ている場所は口からな訳で。

もしかしたら・・・

俺は1つ思い出したことがあった。

ごそごそ・・・

鞄をあさると・・・・あった!

これが役に立つかもしれない。

口の中心をめがけて力いっぱい投げる。

が、届かない。クッ・・・


ひょいっ  ぱくっ  ごっくん。


・・・・・・

触手が掴んで飲み込んでくれた、なんのコントだろうか。

まぁ結果としては助かったのだが。

次の瞬間、巨大クリオネはもんどりかえった。


グエェェェェ グボグボ 


伸びたり縮んだり 青くなったり白くなったり

最後には泡を吹いて動かなくなった。

あの大きかった嫌な気配も消えている。


「死んだか?・・・」


近付いて剣でつついてみたが動く気配はない。

やがて泡の中に溶けるように消えていった。


「終わったな」


無事依頼完了。

良かった。


ライ「戻るか」

イザ「ああ、そうだな。おっとドロップ品を回収しないと」

ジー「で、イザが投げたのは何だったんだ?」


「ん?・・・ たぶん激辛のトウガラシ系?」


そう、俺が投げたのはいつだったかのドロップ品で小さな袋に入った赤い粉だった。

シカ・俺・カズラの三人で粉を指に付けて舐めてみた事があったのだが・・・

ほんのわずかな量だったにも関わらず

口から火が吐けるんじゃないかと言うくらい辛かった。

シカの唇はまさにタラコ唇だと言わんばかりに腫れ

俺とカズラはしばらく尻が痛かった・・・


料理に使うのは無理と判断しずっと鞄に眠っていたのだが今日はそれに救われたのだった。


ジー「そんなにヤバかったのか?・・・」

イザ「ああ・・・試してみるか?」

「「 え?! 」」

イザ「まだ2袋残っている・・・」

「「 遠慮しておく・・・ 」」


そんな話をしながら外へ戻るとカズラがうずくまっていた。


「カズラ、どうした?・・・」

「あ、ああ。お、おかえり?」


何故か涙目で声が上ずっている。

何があったのだろうか・・・


コッソリと魔物が教えてくれた。

待っている間にそこに座っていたのだけれど?

地面からニョキッとハノコが伸びて来て?

プッスリと?


ブハッ・・・


ハノコは筍に似た植物だ。

土から芽吹いたハノコの先がカズラの尻にクリーンヒット・・・

それはそれは・・・

ご愁傷様な事で・・・

ぶふっ

俺達が戻ってくるまでに何とか平静を装いたかったらしいのだが無理だったようだ。

笑っては悪いと思いつつも笑えてしまう。


「カズラ 無理するな。痔は万病の素って言うしな」

「痔じゃねぇし! 

 それに痔は万病の素じゃねえよ!風邪は万病の素だろ!」


笑うと響いて痛いから止めろと言われた。


「いや 痔は万病の素だろ? 前世の母親にそう教わったぞ?」


あれ?・・・


「ま・・・まぁ。まずは野営地に戻ろう。 ククッ」


肩が震えてるぞ、ライカ。

ジークも・・・


キャンプに戻りシカとボブにも聞いてみた。


「なぁ、痔は万病の素だよな?」

「「 え?・・・ 」」

「え?・・・」

「イザたん、風邪は万病の素だよ?」

「うんうん」


マジかー・・・

俺は天を仰ぎ前世の母親に言いたかった。

なんで風邪が痔になったんだよ!!!

どうしてそうなった!


横では薬を手にしたシカとカズラの攻防が始まっていた。


「遠慮しなくてもいいんだよ?ホラ、尻出して?」ニヨニヨ

「いいよ!自分で塗るよ!やだよ!」

「私とカズラの仲じゃん?何を今更。 ホラホラ、はよぅせぃ」


ニヤニヤとにじり寄るシカ。


「来るんじゃねぇよ、自分でやるってばよ!」


ゆっくり逃げるカズラ。

アリアンが居たら有無を言わせずに薬を塗っていそうだと思った。

あー、とうとうボブに押さえつけられたか。

シカが嬉々としている(苦笑)

せめて武士の情け、見ないでおいてやろう。

南無~。

読んで下さりありがとうございます。

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