85:ポス草原横断② ~シカ・イザ~
*** *** シカ目線 *** ***
あれから私達はポス草原を横断している。
草原は気候的にも過ごしやすくって野生動物もノビノビしていて旅も順調!
のハズだったんだけど・・・
おかしいなぁ・・・
ぴちょんっ・・・
私は今、どこかの洞窟らしき場所の水たまりっぽい所に落ちちゃってる。
皆と話しながら歩いていたハズなんだけどなぁ。
あそこに飛んでる鳥が綺麗だねとか
キリンみたいなのがいるねーとか
あのバナナみたいなのがおいしそうだよねーとか・・・
あ、それだ!
バナナみたいな木の実に見とれて穴に落ちたきがする。てへっ
うん、怒られるねこれ・・・
落ちたって事は、上に穴が・・・見えない。
天井が高いのかな?
大声で叫んだら皆に聞こえるかな?
「おぉーいっ!」
叫んで見たけど反応が無さそう。
うーん・・・
よし、まずはライトだよね!
ライト! ポワンッ
ぬっと不気味な顔が浮かび上がる。
「うわあああぁぁぁぁぁぁ」
「うひゃあぁ」
へ?・・・
「脅かすんじゃねぇよ!」
ペチッと叩かれた。
「カ・・・カズラ?」
そう、あの不気味な顔はカズラだった(失礼な)
ちょっと安心した。
「迎えに来てくれたの?」
「 ・・・ 」
「カズラ?・・・」
「・・・おちた。」
え??
「ボブが、シカが落ちた!って言うから振り向いたら俺も落ちた・・・」
ちょ・・・
「どうすんの・・・」
「わからん」
これは困った。
「取り合えず、この水たまりから出ないか?」
「あ、うん。そうだね」
だよね、なんでずっと水たまりに座ってたんだろう。
壁際に移動して座る。
「皆助けにきてくれるよね?」
「今頃入り口とか探してるんじゃないかな」
「じゃぁこのまま、ここにじっとしてようか」
「その方がいいだろうな」
「あ、カズラのペットちゃん達呼び出して探しに行ってもらえば!」
「 ・・・ 」
なにその沈黙・・・
「散歩がてらに歩かせてたから上だな・・・」
「全員?・・・」
「全員・・・」
まじでぇ?・・・
チーン。
ジト目でこっちを見ている姐さんの顔が浮かんだ。
*** *** イザ目線 *** ***
目の前にはオロオロしたチビ、アン、コング。三匹のペットが取り残されていた。
まず先にシカがスポッと消え、次にカズラがズポッと消えた。
足元には穴がポッカリ・・・
うん、落ちたな、あの二人。
「はあ・・・。どっかこの穴に入れるような入り口あるかな・・・」
「イザ、向こうに何か洞窟っぽい物がありそうだ」
ライカが何か見つけたようだ。
「イザ、こっちにも入り口っぽい穴があるぞ」
「あら、こっちにもあるわよ?」
「こっちにもあるよ!!」
・・・
なんでそんなにあるんだよ!
「どうなってんだよこれ・・・」
片っ端から探してみるか?
時間が掛かりそうだな・・・
いっそ、ローブでシカが落ちた穴に降りてみるか?
「イザ、僕ロープ持ってこの穴に入ってみるよ。
それで30分進んでも見つけられなかったら戻って来る」
ふむ・・・
「じゃあまずボブが入って見て
その様子次第で手分けするか1箇所づつにするか考えるか」
「うん、行ってくるね」
とボブが入って行って5分
「うわあああああああああああああ」
ものすごい勢いでボブが戻って来た。
ウニョウニョウニョウニョ
続いてヘビの大群が・・・
ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ
皆で蜘蛛の子を散らす様に逃げ出す。
ゼェゼェ・・・
「うん、あそこはないな・・・」
「うん、ないね・・・」
「じゃ・・・じゃあ次は私が見付けた穴に入ってみるわね」
フィンがロープを握って入って行く。
10分後
「いやぁぁぁぁぁぁぁ、こないでぇぇぇぇぇぇ」
ものすごい勢いでフィンが戻って・・・
何が・・・・ぼふんっ
顔に何かが飛びついて来た。
ぶはっ、なんだこれ。
引きはがしてみれば、スポア?
フィンを見ればスポアに追われてる。
しかもスポアからハートが飛んでいるような気が・・・
何故ハート・・・
フィンがボブの後ろに隠れたものだから、代わりにボブがスポアにもみくちゃにされていた。
俺じゃなくてよかったと思った。
「なんか・・・入りたくないな」
「まあ・・・あんなのそう頻繁にはないんじゃ?」
「だといいが・・・」
ジークは腰が引けた格好で穴に入って行った。
しばらくすると、掴んでいたロープがクイッと引っ張られる。
見つけたのか?
ボブにロープを預けてライカ・俺・フィンの3人で入ってみる。
「ジーク、どこだ?」
返事は無い。
クイッ クイッ
再びロープが引っ張られるのでさらに奥に進むと
目の前にはグルグル巻きにされたジーク。
とシカとカズラが見えた。
何故そうなった。
「うわっ」
振り向けばライカがぐるぐる巻きになって転がっている。
「イザ、上よ!大蜘蛛が居るわ」
上を見れば・・・浸食大蜘蛛か・・・。
なるほど、こいつの仕業だったのか。
「フィン、焼き払おう」
二人で炎を撃つ。
不意打ちを喰らわなければ、どうと言う事は無い。
四人を焦がさないように縛っていた糸も焼き切ると
「「ぷはぁ・・・助かった」」
「ありがとう」
「ZZzz・・・」
シカさんは寝てやがった。
相変わらずどこでも寝るな・・・
「皆無事か?」
「「ああ、大丈夫だ」」
怪我も無さそうなので穴から出る事にした。
穴から出てみればボブの周りにはまだスポアが居た。
ぶっ、モテモテだなボブ・・・
ジークに抱えられたシカはまだ呑気に寝ている。
「スポアが離れてくれないよぉ・・・」
浸食している訳でもないしジャレているだけなら
そのままスポアが飽きて離れるまで放置しておいてもいいか。
まあ頑張れボブ。
本当に俺じゃなくて良かったと思う。
気が付けば日も暮れそうになっていたので穴の無い岩場で野営をする事にした。
火を熾し夕飯の準備を始めるとカズラの父親がやって来た。
「君達はいつもこんな感じの旅をしているのか?」
「ええ、そうですね。こう、ドタバタと言うか賑やかな旅ですね」(苦笑)
「そうか、楽しい旅の様で安心したよ」
安心はあまり出来ない・・・とは言えなかった(苦笑)
「たまに予想が出来ない事も起こったりはしますが、皆良い仲間達ですよ」
そうかと目を細めながらカズラの姿を眺めていた。
「ガルドに残ったあの三人は・・・」
「心配ありませんよ。あの三人なら大丈夫ですから」
そうか、と今度は遠くを眺めていた。
「そのうち、何事も無かったかの様に笑いながら戻ってきますよ」
さあ、肉も焼けたし飯にしましょう!と肩を叩くと頷いてくれた。
シカはやっと起きたようだった。
あの状況でも眠れるのがシカらしいと言うか
もう少し気を張ってくれというか。
諦めろ、あれがシカさんだ(笑)
グレンはきっとそう言うんだろうな。
「飯ができたぞー!」
皆が集まって来る。
シカは無邪気にボブに絡みつくスポア達とジャレていた。
なにやってるんだか、シカには後で説教だな(笑)
読んで下さりありがとうございます。




