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84:ポス草原横断① ~シカ・イザ・カズラ~

*** *** シカ目線 *** ***



どうしよう。

折角助けて貰ったのに・・・

怖くて差し出された手を掴む事が出来なかった。

一瞬だけ見えたアリアンの寂しそうで悲しそうな、困ったような顔。

あんな顔をさせたかった訳じゃないのに・・・

謝らなきゃ・・・

ちゃんと謝らなきゃ・・・

私はフラフラと川に向かって歩き出した。

怖くないと言えば噓になる。

でも大切な仲間を傷つけたままでいい訳がない。

そもそも、私がちゃんとしていれば・・・

攻撃は無理でもちゃんと防御が出来ていれば・・・

せめてヒールやバフでも出来ていれば・・・

ちゃんと周囲を警戒していれば・・・

あんな事をさせずに済んだはずなのに・・

ごめんねアリアン。

本当にごめんね・・・


アリアンはいつも笑顔で・・・

優しく包み込んでくれて・・・

嫌な顔1つせず、色々と手伝ってくれていたのに・・・


「シカ! 何処に行くの?! 待ってシカ!!」


後ろからボブの声が聞こえる。

ボブは危ないから来ちゃダメだよ。

これは私の問題だから・・・

だからね、ちゃんと謝りに行かなくちゃいけないの。


パシンッ!


強い衝撃が頬を走った。


「目を覚ましなさい!シカちゃん」


フィン姉さん?・・・


痛いよ・・・

でもね、アリアンはもっと痛かったと思うんだ、心がね・・・

だから・・・ね。

私、行かないと。

行ってちゃんとアリアンの顔を見て謝らないと。


「今ここで戻って、アリアンをもっと悲しませるの?

 彼女の思いを無駄にするの?

 シカちゃんの自己満足で彼女をもっと苦しめるつもりなの?

 今戻っても・・・私達が出来る事は何もないのよ。

 ちゃんと現実と向き合って!」


でも・・・


でも・・・・・


「謝らないと・・・謝らないといけないのぉ!

 だって私・・・

 私・・・ ぅわぁぁんっ」


その後は言葉にならなかった。

ただただ 子供の様に泣きじゃくった。

わかってる。自己満足だって。

わがまま言ってるって。

今戻ってまた襲われたら、アリアンはまたあの姿になってでも守ろうとしてくれるって。

それでも・・・

謝りたかった・・・


「ごめん・・・ごめんねアリアン。

 待ってるから、ずっと待ってるから!!」


この叫びが届いたかは判らない。

それでも私は力の限り大声を上げた。



*** *** イザ目線 *** ***



「俺達に今出来る事。

 それは誰一人欠ける事無く無事にオアシスに辿り着き

 集落の皆が、非冒険者が落ち着いて暮らせる環境を作る事だ。

 忘れるな、それがあの三人の頼みであり願いだ」


ジークの言葉に皆頷いた。

シカも今は落ち着いたようだった。


イザ「大丈夫だ。あの三人は必ず戻って来る。

  その時、自信をもって笑って迎えられる様に進むしかない」

ボブ「うん、こんな所で立ち止まってたら

   『おめぇらさっさと行けつっただろー!』

   って姐さんに怒られそうだし!」

「「「 確かに・・・ 」」」

ズラ「其方達なぜまだここに居るのだ、とか言って首に刀当てられそう」

フィ「皆様進まないのでしたら飲み込んで差し上げましょうか?

   とかも言われたり・・・?」

「「「 あり得る・・・ 」」」


三者三様に言いそうな言葉が皆の口から出てくる。

フッ ハハハ・・・ こんな時でさえ、あの三人は。


「さあ、どやされる前に行くか」(笑)


てかカズラ、デュラハンのマネうますぎだろ。

フィンも特徴捕らえてるし!

ああ、そうだなグレン。

しんみりしたってお前は喜ばないよな。

俺達は俺達らしくしてろってお前なら言いそうだ。

気をとり直してヨイショと立ち上がる。


「「 どっこいしょういち 」」


へ?・・・


フィン?・・・

ジーク?・・・


シカ「ちょ・・・止めて・・・」(汗)


まさか・・・


「シカ?」

「教えてないよ?! 教えてないからね?! 違うからね?!」


シカがブンブンと顔を振る。


「だってあなた達の世界ではこう言うんでしょ?」


いやいやいや違うから、フィン違うから!


「ん?シカもカズラも言っていたじゃないか。

 イザは言わないのか?」

「言わない! 俺もグレンも言わんぞ!」

「「 ええー・・・ 」」



*** *** カズラ目線 *** ***



ポス草原を横断しオアシスへ向かう旅は再開した。

イザはグレンについて何も言わなかった。

だから俺も何も言わなかった。

ただ頭の中に

『カズラー!何やってんだよまったくよぉ』

と笑う姐さんの顔が時々浮かぶ。

そして着替えでズボンを見る度にアリアンのちょっと眉の下がった笑みが浮かぶ。

あの時、何も声を掛ける事が出来なくてすまん。

だから次に会った時、俺は意を決して抱きしめようと思った。



道中は穏やかで、あのガルドでの出来事が嘘のように思える。


「今日はあそこで野営だな」


イザの声が聞こえた。

ちょっと開けた場所は草が生えていない焚火のしやすい場所だった。


「ふっふっふぅ~♪

 今日はスペシャルメニュー。カレーライスを作っちゃうよ!」


シカが張り切っている。空元気に見えなくもないが。


ん? カレー?・・・

この世界に来て初めてだな。スパイスとかあったのか?


「シカ、材料なんてあったのか?」

「フッフッフッ」にやぁ~


なんだその顔は・・・


「ジャジャーンッ!」


取り出したのは・・・カレー粉??

へ?そんなのあったのか?


「なぁんとぉー!今日のドロップ品にありましたぁー!!」


なぬぃ~?!

昨日は・・・そう言えば大型の荒くれ者がいたっけか。

ん?・・・


ズラ「シカ、米は?・・・」

シカ「ある訳ないよぉ!」

ズラ「じゃぁパンか?」

ボブ「さすがにもぉコナの実もないよ!」

ズラ「じゃあ何で食うんだよ」

シカ「・・・」

ボブ「・・・・・」

ズラ「おぃ・・・」

シカ「カレー風味のシチューって事で?・・・」


期待させてんじゃねぇよ!

まぁカレー風味のシチューでも嬉しいが。


シカ「あ・・・」

ズラ「あ?・・・なんだよ?」

シカ「じゃじゃいもがない・・・」

ズラ「おぃ・・・」

ボブ「シカ!人参もないよ!」

ズラ「おい・・・」

イザ「タマネギも無くね?・・・」

ズラ「おいぃぃぃぃ」

シカ「シシカバブもどきで!」テヘッ


テヘッじゃねえよ!

まあいいけども!

皆もう呆れていいのか笑っていいのか判らなくなってきている。

だがこれがシカクオリティーだったりもする(笑)

いつものように笑っていつものように騒ぐ。

ただそこに姐さんたちが居ない・・・


夕食後、イザとまったり茶を飲んでいると横にシカがやってきた。


シカ「立ちわかれ いなばの山の峰におふる 待つとしきかば 今帰り来む」

ズラ「なんだそれ?」

シカ「迷子が戻って来るおなじない!姐さん達が道に迷わないように!」


・・・


ズラ「シカ・・・おなじないってなんだ?」(わかるけども)

シカ「へ?・・・おなじないって言わない?」

イザ「それを言うなら おまじない では?

   ついでに言うとシカが今言ったのって()()()()()()()()()()()()な!』


ぶほっ・・・


 儂は猫かーいっ! って姐さんのツッコミが聞こえた気がした。


読んで下さりありがとうございます。

シカサンはじゃが芋を「じゃじゃいも」といい、トウモロコシをトウモコロシと言います(*'ω'*)

これはモデルとなった子がそうだったのでそのまま採用しましたw

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