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81:ガルド大陸 川越え① ~イザ・シカ~

*** *** イザ目線 *** ***



カサッと姿を現したのは、アリアンだった。


アリ「皆様、急いで身支度をして下さい」

イザ「アリアン、何があった。グレンはどうした」

アリ「説明は後程いたします。 急いでください!」


アリアンのただならぬ様子に皆顔を見合わせる。

身支度と言ってもここにいる者達はほぼ着の身着のままだった。


住人B「準備とは?」

住人A「俺達もなのか?」


集落の人々は心配そうに見つめ合っている。


「ボブ様。ボブ様の故郷であるオアシスへ向かう様にと

 グレン様より言伝を賜っております」


ん?

どういう事だ?


ボブ「僕の、オアシス?・・・」

アリ「故郷を離れる事が辛い決断だとは承知しております。

   ですがお急ぎください。

   危険すぎるのです」

ズラ「アリアン、落ち着いて説明を・・・」

アリ「時間がないのです!」


アリアンの言葉が強めの口調に変る。

そんなに緊迫している状態なのか・・・


イザ「解った・・・

   ボブ先導してくれ。ジークもボブと先頭に立って欲しい。

   集落の方々はボブ達の後ろを。

   シカさんは集落の人と一緒に。カズラの家族と一緒がいいな」


シカさんがコクコクと頷く。


イザ「カズラとフィンは皆の左右へ。俺とライカで最後尾に付く」

住人A「なぁ、どうしても移動しなければだめか?俺は正直離れたくない」

住人C「ああ、俺もだ。生まれ育った集落をはなれるのはちょっと」

イザ「だが」


言い掛けた俺をアリアンの手が制した。

その顔は・・・険しい表情だった。


「残りたいのであれば()()()()()()()()

 無理にとは申しません。

 イザーク様、準備が整ったのでしたらすぐにご出発願います」


「あ、ああ。判った。

 アリアンも来るのだろう?」

「私は残ります」


なっ!

なんだと?・・・


住人A「な、なんだよ。脅かすなよ。あんたが残るなら俺達だって」

住人B「ああ、そうだ。残っても大丈夫だろう」

アリ「構いませんが、()()()()と申し上げたはずです。

   その意味はご理解していらっしゃいますでしょうか?

   私はここから移動するようにと忠告は申し上げましたので

   後の事はご自分でどうぞご判断下さい」


アリアンは冷ややかな笑顔を浮かべている。

何かよほどの事があったのだろう。


「ここを発ったらポス草原まではなるべく急いでください。

 休憩も最低限がよろしいかと。

 ガルドさえ離れてしまえば安心できるかと思いますので。

 オアシスに着きましてから、これを・・・

 では、また後程お会いしましょう」


すぐに追いかけますから、そう言ってアリアンは出発を促した。

手に渡されたのは、クリスタル?・・・

なんだ?と聞きたかったが今は急いで出発した方がいいのだろうと判断した。


イザ「ボブ、行こう」

ボブ「え?でも・・・」

ズラ「行くんだ、ボブ」


カズラは何かを察してくれたのだろう。

ボブは何か言いたげだったが、言葉を飲み込み歩き始めた。

俺もまた、アリアンに問いたかった言葉を飲み込む。

後程とはいつなのか。

すぐに追って来てくれるのか。

グレンとデュラハンは・・・

何があったのか。


不安はよぎるが歩を進める。

不安げな顔で着いて来る者。

ブツブツと文句を言いながら着いて来る者。

愚かにも残る者・・・

気にはなるが、アリアンがあそこまでハッキリと切り捨てる言い方をしたのだ。

アリアンにも他者を守るだけの余裕が無いと言う事だろう。

そもそも、そんな余裕があるのであればここを離れてオアシスまで行けなどと言わないはずだ。

歩を進めながら一度だけ振り返ったが、アリアンの姿はすでに見当たらなかった。


「イザ・・・」

「ライカ・・・

 俺にも何がなんだかわからない。

 だが、今は進むしかないと思う・・・」


草原までは・・・2~3日はかかるだろうか。

何が起きているのか、これから何が起こるのか。

何も解らない旅の出発となった。



*** *** シカ目線 *** ***



出発して二日、明日には草原に入れると思う。

夜にか出ないはずのスルーアとバンシーは何故か昼間も時々見かける。

アリアンは 後で説明します と言ったけど

そのアリアンはまだ追いかけて来ない。

姐さんとデュラハンからも連絡すらない。


夜は交代で見張りをしながら睡眠をとっている。

移動の時はカズラのコングやチビ・アンも交代で出て来てくれている。

カズラのお父さんと伯父さんは戦闘にも参加してくれているけど

他の住人達はとてもじゃないけど戦闘なんて無理だった。

その人達を守りながらの移動は少し大変だった。

それでも怖いだろうに悲鳴を上げるのを我慢したり、

食事の用意を受け持ったりもしてくれて。

皆自分に出来る範囲で協力してくれているのはありがたかった。


「姐さん大丈夫かなぁ」


思わず漏れでた言葉に自分でもしまったと思った。

皆だって気になってるに違いないのに。

でも敢えてそれを口にしないんだと思うから気を付けているつもりだったのに。

一度口にしてしまったら、その思いが溢れてしまった。

無理はしないと思う。思いたい。

でも仲間の為に、友の為になら無理をするのも姐さんだし。

自分の事は平気でも仲間を傷付けられるのを嫌がる姐さん。

皆に無理をさせない様に、いつも陰で無理をする姐さん。

つい強い口調になる姐さんだけど、それは皆を本気で心配してるから。


昔からそうだった。

一緒に悩んで一緒に笑って一緒に怒って・・・

一歩を踏み出せない時は背中を押してくれて・・・

自分でも気づかない内に無理をしてるのを気づいてくれて

【大丈夫か。無理してないか。

 また自分で気づかない内に溜め込んでるだろ?】

そう言う姐さんだって無理して抱え込むじゃん。


そんな事を考えていたから・・・

私はやらかしてしまった。

周囲への注意がおろそかになってしまって

気が付けば皆より少し遅れてしまっていた。

そんな私に向かって近づいて来る足音が聞こえる。

向かって来たのはスルーアやバンシーでじゃなくて・・・

人?

1人2人じゃなかった。

殺気立った集団だった。


「シカ!こっちに走れ!」


カズラの低い声が聞こえる。

この人達はなんなのだろう。

私達のように逃げて来た人達?

雰囲気からしてそんなはずないと思うのに

私の頭はまだそんな悠長な事を考えてしまっている。


すぐに集団は追いついて来て乱闘が始まった。

金属がぶつかり合う事が響く。


「シカ、戦うのが無理なら回復に専念してろ!」


カズラの声が聞こえる

戦う・・・ってなんで?

だって深淵シリーズじゃないよね?

むこうも人だよね?

話し合いとかじゃ無理かな?


ザクッ キンッ


剣のぶつかり合う事がすぐ近くで聞こえる・・・

怖い・・・

なんで人間同士で戦ってるの?・・・

戦っているというか、相手の集団は私達殺そうとしているの?

なんで? わかんないよぉ・・・

やらなきゃやられる・・・

そう思っても体が動かない。

血の気が引いていく。


なんでだろう。

攫われた時はちゃんと考える事も、動く事もできたのに・・・

あ、そうか。

あの時は殺気もなくて、殺される心配もなかったからだ。

今は・・・殺されるかもしれない。

その恐怖が私の動きを止めているんだ・・・


どうしよう・・・

どうしよう・・・

どうしたらいいのか、わかんないよぅ。姐さーん・・・

ボブは?ジークは?皆は?

キョロキョロと辺りを見回したら視界に何か光る物が飛び込んできた。 

それは血のこびりついた剣だった。

え?

私を狙ってる?・・・

読んで下さりありがとうございます。

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