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80:ガルド大陸 残る者 ~デュラハン・~

グロ表現が含まれております、苦手な方はご注意ください。

*** *** デュラハン目線 *** ***



「デューン、アリアン。すまんね巻き込むかもしれん。

 と言うか確実に巻き込むと思う・・・」


そう言ったグレンの顔は少し悲しげであった。

わざと我らを魔物だと言い、冗談交じりでも自分を悪魔だと言い

彼等に線引きをさせたのであろう。付いて来させない為に。


これから我らが対峙する事になるのはこの異質なスルーア達だけではあるまい。

おそらくはグレン達と同じ転生者や転移者を含む悪意を持った()()

それらの事を神は【招かざる客】と呼んでいるのだそうだ。

深淵なる闇の浸食が加速している原因も【招かざる客】が関連しているらしいのだが

何故(なにゆえ)グレンがそれらの対応をせねばならぬのか・・・解せぬ。


グレン達が元々居た世界では種族も人間と獣しか存在せず

クレン達の国では戦闘とは無縁の暮らしをしていたのだそうで

野生動物と対峙するのもごく一部の特殊な職業の者のだったそうだ。


「そんなあいつ等が悪意を持った人間と対峙した時戦闘は無理だろう。

 ましてやこの平和な世界で生まれ成人まで育ったのならなおさらだ。

 ジークやフィン・ライカにしてもそうだ。

 ガルドでの戦闘でいくら悪意があるとはいえ同族とも言える人間を斬った時

 あいつ等はきっと良心の呵責に苛まれるだろう。

 罪悪感で押し潰されそうにもなるだろう。

 最悪、彼等が命を落としかねない。

 儂はあいつ等に笑顔で幸せに生きていて欲しいんだよ」


そう言ったクレンの顔は笑っていた。


「1人で背負うと決めて、グレン様はお辛くないのですか・・・」

「其方はどうなのだ、それで良いのか。

 其方の幸せは・・・」

「ん?儂?

 罪悪感とか両親の呵責とかそういった感情は無くなったよ。

 実年齢でこっちに落とされてさ、皆が成人するまであちこち放浪したんだよね。

 まぁその時に色々と経験してさ。

 特にここガルドではあからさまな悪意を持つ者とも対峙したんだよね。

 変な言い方になるけど、人として超えてはいけない一線ていうのかな。

 それ超えてどうしても許せないって奴も結構いたんだよね。

 そんな奴等を躊躇なく殺せた。

 何の感情も湧く事も・・・いや怒りはあったな。

 今も後悔とかしてる訳ではないし。

 ()としては欠陥品かもね?フフフ

 でもね、あいつ等は無理優し過ぎるんだよ」

「「 ・・・ 」」」

「二人なら大丈夫でしょって言ってるのだから儂は酷い奴だよな。

 今なら断って引き返せるよ?」

「我は元より闇の住人。人々に恐れられ忌み嫌われておる存在だったのだ。

 何を今更」

「まったくでございますよ。我らの存在はグレン様と共にある。

 先程デュラハン様がおっしゃいましたように疾うの昔に決めております」

「そっか、儂はそれで十分なんだよ」


もう少し我等を頼りにしてくれればよいものを・・・

グレンは以前よりそうだった。

周囲に頼るのも、甘えるのも下手であった。

それ故に、側にいて守ってやりたいとも思ったのだがな。


夜が更け異質な者共が集まり始める。

様々な思念が頭に響いて来る。

これは奴らの思念か?

しばらくはじっと我等の様子を見ていたが

何かの合図があったのか一斉に襲い掛かって来た。

剣帯から己が剣を取り外し、斬っていくが次から次へとキリが無い。

しかもこれ等からは僅かだが人の気配?生気の様な物が感じられる。

なんだこいつ等は・・・

かつてこのような者とは対峙した記憶が無い。

何とも言い難い感触が剣を通して伝わって来る。

気圧(けお)されそうになる自分を鼓舞する。

我は原初より存在する誇り高き闇の騎士であろう?

この様な異質な存在に気圧されてどうする。

我が最愛と共にありたいのであれば、みっともない姿は晒せぬであろう!

力を込めて剣を握り直し薙ぎ払い続けた。


どの位時間が過ぎただろう。

どれ程倒したのかもわからぬ。

この状態が夜明けまで続くのであろうか。

と、数匹のスルーアがダンジョンに向かうのが見えた。

イザやカズラ達がいるので大丈夫だろうとは思うが・・・


「アリアン、悪いけどアッチの援護と伝言を頼みたい。

 ボブの居たオアシスに向かう様にと。

 もうすぐ夜が明けるとは思うが嫌な予感がする」


そうグレンが言うのと同時に新手が現れた。

人間(ヒューマン)?・・・しかも浸食され悪意を纏っている。

なるほど、これは皆では手が出せぬかもしれぬ。


「承知いたしました。すぐに戻ってまいります」


スッとアリアンは闇に溶け込んでいった。


悪意を纏った人間(ヒューマン)との対峙。

大丈夫かとグレンを見れば、笑っている?・・・


「浸食され欲に染まったか。なら遠慮なく暴れられるな」


そう言うグレンの手にはクローが・・・

いやあれは・・・ グレンの爪?

そう、まるで悪魔の様な長く鋭い爪に代わっていた。


「浸食されたのであればただの傀儡と変わらんな、ふんっ」


平然と喉元をかき斬り 肉を切り裂き 骨を砕いて行く。

返り血を浴び、どす黒く染まりうっすらと笑みを浮かべる姿はまさに悪魔とも呼べよう。


我と再会するまでの間に何があった? 

グレンは多くを語る事はなかったが。

あれか、あの称号のせいであろうか。

それとも、なにかのスキルなのであろうか。

いずれにせよ神とやらはグレンにこの様な所業をさせる為にこの世界に呼んだと言うのか。

言いようのない怒りが湧いてきた。

グレンが血に塗れると言うならば我も共に塗れよう。

我は原初よりの存在であり誇り高き闇の騎士 死を招く者。

鉄の匂いは(こう)のように辺りに漂い 

肉片が花弁の様に宙に舞い散り 

大地は赤く宮殿の絨毯の様に染められていく。

フッ。

このおぞましき光景もグレンと2人であれば舞踏会で踊っている様に見えるではないか。


戦闘にはいつのまにか戻っていたアリアンも参加していた。

やがて音も止みあたりに静けさが戻った。


「あー・・・ベトベトする。こんな姿皆には見せれんな」

「どこかの家でお風呂でも拝借いたしましょうか?」


つい先程まで激しい戦闘を繰り広げていたとは思えない穏やかな笑顔で2人は会話を交わしていた。

そう言えばイザが「いざとなれば女の方が肝が据わっているぞ」と言っていたがまさしくその通りであるな。

我等は警戒しながらも、少し休憩をする事にした。

流石に体力を回復させておかねばキツイ・・・


読んで下さりありがとうございます。

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