77:ガルド大陸 違和感 ~シカ・カズラ・グレン~
*** *** シカ目線 *** ***
「空気が違う・・・」
海岸から移動を始めてすぐに姐さんが言った。
それは皆もなんとなく感じたみたいだった。
私はガルドに来た事が無いからぼんやりとした感覚だったけど
それでもヴァルや氷の大陸とは違うのが解る。
ズラ「ふむ、集落がどうなっているか気になるな」
ジー「ああ、気を引きしめつつなるべく急ぐか」
何がと言われても困るけど心がザワつくと言うか、背中がゾクリとすると言うか。
何事もありませんように・・・
集落に着けば何事も無く平和で気のせいだったと思えますように。
気を紛らわせたくて何か喋ろうと思っても言葉がみつからない。
カズラは家族が心配なんだろうな、気が逸っているのが解る・・・
イザとライカは野生の本能なのかピリピリと神経を研がらせている。
いつもならどこにでも森に居る野生動物や魔獣・魔物の姿も見当たらない。
なんだろう、この世界って平和的な世界のはずだったんじゃないの?
「ガルドって、こんな元々こんな感じだったのかな?」
愚問だと思いつつ、口に出てしまった。
ズラ「いや、少なくとも俺が居た集落は普通に平和だった」
カズラが答える。
グレ「儂が見た限りだとこうゆう小さな集落、言い方悪いが僻地は普通だったよ」
ただ、中心付近の町は・・・と姐さんが言った。
姐さんの話を聞く限りだと、ろくでもない印象だったよね。
フィ「森がこんなに静かすぎるのも変よね」
フィン姉さんが言う。
私もそう思う。
まるで大災害でも起こる前兆かの様にすべての生き物が逃げだしたような・・・
重い空気を引きずりながら3日。
カズラの集落カラエチリに辿り着いた。
・・・
静かすぎる。人は居るのだろうか?・・・
まるでゴーストタウンのような感じがする。
カズラの家に来たけど人の気配がない。
と、私はいきなり掴まれた。
「ぶぇっ・・・」
変な声がでて皆が一斉に私を見た。
「何か用か・・・」
低い声が聞こえた。
ズラ「父さん?!」
父さん?
「カズラ? カズラか?!」
あのー・・・
感動の再会?
お邪魔する気はないのだけど・・・
手、離して貰っていいですか?(汗)
そう思い私を掴んでいる手を軽く叩いた。
「おお・・・すまない。
取り合えず場所を変えよう」
そう言って案内されたのは集落から少し離れたダンジョンだった。
「今はダンジョンの方が安全なんだよ・・・」
どうゆう事だろう?
中に入れば、多くの人が身を寄せ合っていた。
*** *** カズラ目線 *** ***
「お兄ちゃん?!」
妹が駆け寄って来た。よかった元気そうだ。
しかし何故ダンジョンなんかに居るんだ。
「元気そうだな」
「うん・・・」
ああ、母も伯父も居る。良かった。
あれ?伯父が固まっている。
「伯父さん?・・・」
「カズラ、なんでお前師匠と一緒に居るんだ?」
「へ? 師匠って?」
伯父が指刺した先には・・・姐さんが居た。
まさかの?・・・
「鬼師匠・・・」ボソッ
「あ"ぁ?!」ぺちっ
父や伯父から話を聞いてみれば・・・
中央の町で自称勇者や聖女などが溢れ、
色々な集落などのダンジョン攻略をして歩いたのはいいがとてつもない報酬を求めたり、普通の温厚な魔物や魔獣まで手当たり次第に狩っているらしい。
酷い場合は略奪行為もおこなっているのだとか。
なんだそりゃあ・・・
あげくに町中では冒険者や一部の金持ちが縦横無尽に振る舞っているらしく
ヒューマン以外の種族はガルドを離れていったとの事だった・・・。
たった3~4年でこうも様変わりする物なのか?
いったい何があったというのだろうか。
「聞きたいんだが、昔から勇者や聖女・救世主なんて言葉はあったのか?」
黙って話を聞いていた姐さんが口を開いた。
ジー「いや、無かったと思う」
デュ「我も聞いた記憶はないと思う」
アリ「私も聞いた覚えはございませんね」
うんうん、と転生組以外が頷いている。
「だとすれば・・・
すっげぇ考えたくないんだけど・・・」
なんだろう?・・・
「もしかしてもしかしなくても私達以外の転生者?」
「シカさんビンゴ」
・・・
だがどういった理由で?
そんなにポンポン転生者って増やしてもいいのか?
何がしたいんだ神々は・・・
「なんなんだよいったい・・・」
「これさ、一回問いただしたいよね?」
とは言えそんな都合よく神様に会えるわけも無く・・・
「それはそうと、なんで父さん達は洞窟にいるんだ?」
スルーアやバンシーが夜な夜な徘徊しているのだと言う。
ライトで避けれるのでは?と問えば
ダンジョンのや今までのと違い家の中にも入り込んでくるのだという答えが返って来た。
だがそんなスルーアやバンシーも何故かダンジョンには入って来ないのだと。
益々わからないと俺は困惑した。
*** *** グレン目線 *** ***
「悩んでも仕方がない毎度ながら。
ちょっと今夜、儂集落で様子見るわ」
「「「 え?? 」」」
『じゃあ俺も』『皆で行こうよ』などの声も上がったが
グレ「デューンとアリアンだけでいい。
言い方悪いけど、デューンもアリアンも魔物だよね。
万が一、自称勇者や聖女のあふぉ救世主や冒険者に遭遇しても
魔物としてやり返せる。(ニヤリ)
他種族の住人だと、後々問題視されても面倒なんだよね」
シカ「でも姐さんは?」
グレ「ん?儂?鑑定で儂を見てみ、称号とんとこ」ニヤニヤ
「「「 ゴフッ・・・ 」」」
ライ「なんと書いてあるんだ?」
「「「 眠れる悪魔・・・ 」」」
ジー「伝説の魔物かよ・・・」
グレ「別に儂が悪魔なんじゃないから!
なんかいつの間にかそう書いてあったんだよ!」
シカ「でもこれ太文字で書かれて・・・」
ペシッ!
グレ「まあそんな訳で? 三人で様子見てくる。
ダンジョンの中でも、まだMOBが湧く可能性だってあるし、
あふぉ共が来ないとも限らん。
だから皆でここを守っていて欲しい。
シカさん、カズラの家族と一緒に居てね。絶対離れないように。
他は必ず二人一組で行動するように。頼んだよ。」
そう言ってから儂は三人で集落の中へと戻る事にした。
皆不服そうだったけど我慢してもらいたい。
最悪、人間を叩き斬る事になるかもしれんし。
あいつ等にそんな事させたくないしな。
「デューン、アリアン。すまんね巻き込むかもしれん。
と言うか確実に巻き込むと思う・・・」
「フッ、何を今更。我等は常にグレンと共にあると決めておる」
「ええ、そうでございますとも」
「そうか、ありがとう。
2人には事情を少し話しておくね」
集落の空き家で様子を伺いながら、他のメンバーは知らない事なのだと前置きをした後で話した。
招かざる客と呼ばれる儂等以外の転生もしくは転移者がガルドに来ている事。
神々ですらその原因がまだ掴めていない事。
その招かざる客達の存在が深淵なる闇の浸食を加速させている事。
本来の儂等の役目は深淵なる闇の浸食スピードを押える事で普通にダンジョン攻略をしていればよかったはずだった事。
招かざる客への対応は遭遇した時の状況により儂に一任されている事。
今のガルドのこの状況はその招かざる客が関係しているのではないかと予想している事も話した。
「他の者達は知らぬのか・・・」
「儂がイシュカ神に頼んだからね、招かざる客についての記憶は消してくれって」
「1人で背負うと決めて、グレン様はお辛くないのですか・・・」
「1人じゃないさ、サモンとされてはいるけど仲間は大勢いる。
それだけじゃない、デューンやアリアンも一緒に背負ってくれるんだろ?」
「「 当然だ!(です!) 」」
「儂はそれで十分なんだよ」
なぁんて少しは格好つけさせてもらってもいいだろう。
読んで下さりありがとうございます。




