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76:氷の大地(北) 卵だったはず ~グレン~

その後も何度か遺跡散策に出かけてみた。

が、行く度に違う場所に辿り着くし、道順もさっぱり判らない。

それはそれで、楽しみがあってよいのではという結果になった。

悩んでも答えは見つからなそうだったし。


その後ものんびりとした日々を過ごした。

ヒョウアザラシを見たシカさんが


「姐さん姐さん、小さい恐竜がいる!!」


なんて騒ぐから何かと思ったよ。

まぁ見えなくもないけど・・・

ヒョウアザラシは普通のアザラシよりも大きいし、歯も鋭いし獰猛だけど

アザラシらしい可愛さも持っているんだよね。

実際に見る事が出来るとは思ってなかったけど。


ん?・・・ ここ海から離れてるよね?

なんで居るんだろう?

理由はすぐに判った。


シカさが釣りしようと言い出して、ボブが氷に穴をあけていたらしい。

拠点からは少し離れた場所だったけどさ・・・


「勝手に穴開けてんじゃねぇよ!すぐ埋めて来いやぁ!!!」

「「 スンマソン・・・ 」」


まったく、初日に氷割って島流しになりかけたのをもお忘れたんだろうか?

そう言えばゲームでも事あるごとに


【三歩歩いたら忘れる。それがシカさんクオリティ】


と自分で言ってたっけ。ハハハ・・・




イグルーは結局もう1個作った。

熊達が気に入って、入れ代わり立ち代わり占領しているから自分が入れる気配がなかったのだ。

イグルーは思ったよりも快適で、やっぱり先人の知恵ってすごいなと思った。

のんびりとチャイを飲んでいると ライカとイザが慌ててやってきた。


「 グレン!卵が!!! 」


卵?・・・ ああ!! あの卵か!

忘れてた・・・とかじゃないよ?・・・(汗)

見れば卵がほんのりと光っている。

なんだ? 生まれるとか?・・・

と、卵の表面に文字が浮かんだ。

文字?! 卵に?! どうゆう仕組みだよ。


【地面に置いて下さい】


・・・


あー・・・

なんだ・・・

あれだ・・・

何をどう考えればいいのかさえも判らんのだが?


イザ「取り合えず地面に置いてみるか?」

ライ「あ・・・ああ。そうだな・・・」


あー、うん、だね。

考えるのは辞めよう・・・

異世界だしね。

理解できない事は異世界だし!と思う事にした儂等だった。

拠点から離れて氷ではなく、ちゃんと地面が見えている場所に皆で集まる。

ここに住むモフモフ達も数匹集まっていた。


イザ「じゃあ、置くよ?」


何が生まれるんだろうか。

イザがそっと置くと ピカッと光り現れたのは・・・

背丈くらいの青々とした樹だった。


フィ「世界樹?・・・」


あのレリーフで見た世界樹カリンバの世界樹を思い浮かべた。

世界樹の若木って事?

卵ではなく、種だった?・・・

いやいや、どう見ても卵だったよね?

そもそも樹って卵から生まれるか? んな訳無い。

だいたい、なんであの海岸に落ちてたんだ?

色んな考えが駆け巡って眩暈がしそうだった。

皆もあっけに取られている。


デュ「世界樹の誕生に立ち会うとは・・・」

グレ「いやそもそもこれが本当に世界樹なのかも判らん」

フィ「新たな世界樹が誕生したと言う事は

   カリンバの世界樹の寿命が尽きたのでしょうね」

ジー「なるほど、世代交代という事か」


気が付けば、樹の根元には多くのモフモフが集まっていた。

この風景は・・・あのレリーフそのものではなかろうか。

樹の大きさや生き物の種類こそ違うがまさにあれだ。




 長い間待っていた。


 ずっとずっと待っていた。


 これでやっと安心できる。




モフモフ達の言葉だろうか、頭に流れ込んでくる。

スリッと樹に頭をすりよせては消えていくモフモフ達。

ああ、帰って行くんだなと不思議と理解した。


フィ「あの白いモフモフ達は精霊だったのかしらね」

ジー「卵を見つけ連れて来た事もなにかの導きだったのかもな」

アリ「あの遺跡も何か意味があったのかもしれませんね」

シカ「カズラのお宝掴まれたのも何か意味があったのかな?」

パコーンッ

ズラ「シカーーー!」


ブッ・・・ シカさんや・・・

雰囲気台無し!!!

フィンは真っ赤になってるし、カズラはシカ追いかけ廻してるし。

なんでこうなる。 感動的に締めくくれないのかよ!

あー・・・、まあ仕方ないか。

これが儂等だよなぁ。


結局すべてのモフモフが精霊では無かったようだ。

残ったモフモフ達はきっとこの世界樹を見守り続けていくのだろう。

儂等はこれ以上ここに滞在するのを辞める事にした。

人がほぼ訪れる事が無いこの地を世界樹が選んだのならば

このままそっとしておくほうがいい。

儂等の滞在が何か影響を与えてもよろしくないと思ったので近々この地を離れようと思う。


その夜、儂は世界樹に呼ばれたような気がして目を覚ました。

皆を起こさないようにそっと抜け出し世界樹の元へ向かう。


『待っておったぞグレン』


世界樹の元にイシュカ神が立っていた。

嫌な予感しかしないんだけども・・・


『まぁそう言うでない。

 実はな、其方に頼みがあってのう』


ほらやっぱり・・・

(だが断る!)と言えたらどんなに良かっただろうか。



イシュカ神の話を聞いて儂は魂を手放しそうになった。


『これグレン。戻ってまいれ!』


イシュカ神は儂の魂を掴んでグイグイと喉に突っ込んでいる。

いやさ、なんで毎度儂なのかね?


「イシュカ様さ、1つ聞きたいんだけど。

 もう1人の儂は変な事に巻き込まれずに元気なの?」

「あー、その事も今回の話に関連していてのう」

「マジか・・・」


再びイシュカ神の話を聞いて頭を抱える。

しばし考え込んで腹を括った。


「役目を終えたら、次こそは!

 次こそはのんびり暮らせるように配慮してよね!

 勿論、もう1人の儂も皆もさ!」

「う・・・むぅ・・・」

「解ってると思うけど、他の皆にはこんな無茶振りしないでよね」

「ああ、勿論じゃ」

「皆にこんな事させたら儂暴れるよ?」

「解っておる、其方が暴れたら世界が崩壊するわい・・・」

「そこまでの力ある訳・・・ あるの?」

「止めぬか、試そうとするでない!」

「やだなぁ、試す訳ないじゃない。皆が居るのに」ニッコリ

「では引き受けてくれるだろうか・・・」

「仕方ないなぁ。約束は守ってよ?」

「解っておる、すまぬな」


儂は世界樹からソレを受け取り()()()()()()()()()()


『ではなグレン』

「これ以上の無茶振りはしないでよね」


イシュカ神は眉を下げて微笑みながら姿を消した。

世界樹も苦労させられてるのかなぁ、お互い大変だよね。

取り敢えず今夜の出来事は皆には内緒かな。

そして儂は来た時と同じようにそっと拠点に戻って行った。


翌朝、儂等は撤退作業を開始した。

凄く名残惜しいけど仕方がない。


「さて次は何処へ行こうか」

「あー、俺の故郷に寄りたいかも・・・」

「カズラの故郷ってガルドか」

「ガルドと言っても北東の小さな集落だから大丈夫じゃないか?」

「ふむ、小さな集落なら大丈夫・・・かな」

「いやぁ・・・そろそろ妹が成人してるかなと」

「「「 あー、妹さんの結婚式!! 」」」


なるほど、それならば行かねばなるまい!

と言う事で海を南西に移動し、カズラの実家へ向かう事にした。


出発前に儂等はもう一度遺跡に向かった。

散策はせずに入り口から全体を見回す。

もう少しゆっくりとしたかったなと思うが仕方がない。


イザ「名残惜しいがまた来ればいいさ」

シカ「そうだね、南にも氷の大陸があるならそっちにも行ってみたいよね」

ボブ「うんうん」

ズラ「もしそこにも遺跡があったらまた散策したいですね」

ジー「その時は俺もクジに参加させてくれ・・・」


あー、うん。気持ちは察するよジーク。

もう一度神殿を眺めてからその場を離れた。


海岸へ移動し、サテ船を出すかと思っていたらバハ様がやってきた。


「カルドならば我が運ぼう」


ズモモモッと影に包まれて、気が付けばガルド大陸の海岸に立っていた。

早いね? というか行き成りだったね?

モフモフ達に挨拶出来てないじゃないか!


「む、戻るか?」

「いや、今更いいよ」(苦笑)


カズラの故郷カラエチリまでは3日の距離だと言う。

んじゃ行きますかね。

読んで下さりありがとうございます。

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