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8:フライングで闇の領域へ⑧

暴力的な表現や暴言などの悪態が含まれます。

苦手な方は飛ばして下さるようお願い申し上げます。

*** *** グレン目線 *** ***


「此度はこのような事態となり誠に申し訳ございません。

 遅くなってしまいましたが不肖シムカ、お迎えに参上いたしました」


そう言ってシムカ神が儂の手の平に何かをそっと置いた。

なんだろう。


「!!」


手の平に置かれた小さな蝙蝠みたいな翼と1本の睫毛を見て

一瞬それが何なのか何を意味するのか解らなかった。解りたくなかった。


「コレ・・・」


その後の言葉が出てこなかった。

だって足元にゲイザーくんは居るよね?

随分と小さくなってるけどさ。

でも・・・目の前にシムカ神が居るって事はさ・・・

そのシムカ神がこの翼と眉毛を渡してくれたって事はさ・・・

そうゆう事なんだよね?・・・

視界が滲んで行く。

泣くな儂。ゲイザーくんは儂の泣き顔なんか見たく無いはずだ。


なんで?誰も教えてくれなかったんだよ・・・

最後に挨拶くらいしたかったよ。

ぎゅって抱きしめたかったよ、(モヤ)っぽいから出来ないけど。

解ってるよ、ゲイザーくんが口止めしたんだよね?

水臭いなぁ・・・ 

つれないなぁ・・・ 

ゲイザーくん・・・


悪戯っ子みたいに目を輝かせてクスッと笑うゲイザーくん。

子供みたいに目を輝かせてお菓子を食べるゲイザーくん。

皆のご飯まで食べてアリアンに叱られてしょげるゲイザーくん。


様々なゲイザーくんを思い浮かべれば

1つ2つと涙が頬を伝う。

せめて声が漏れないようにと歯を食いしばる。


うぅ・・・ ふぐっ・・・


変な声が漏れる儂をデュラハンさんがそっと抱きしめてくれた。


「我慢せずとも泣けばよい・・・」


うわぁぁぁっ

なんでこんな事になってんだよ!

ゲイザーくん、ゲイザーくんっ!

逢いたいよぉ!

儂のせいで・・・

儂の為にごめんね。


全部あのあんぽんたんのすっとこどっこいのあほんだらのせいじゃないか!

長いな。

あんぽん神? スットコ神? ドッコイ神? あほんだら神?

スットコ神がしっくりくるな、よしそう呼ぼう。

おのれスットコ神め!ちくしょぉぉぉ!


こんな事なら従魔契約でもしときゃよかった・・・

ん? 従魔契約?

あぁそうか・・・ 

サモナーだったらゲイザーくんを召喚できるかも?

サモンなら魂でも召喚可能だしね、ゲームでなら・・・

そこはスットコ神と交渉だな・・・。負けんけど!

待てよ?

そもそも儂等、なんでスットコ神に呼ばれたんだろう。

まずそこから問いたださなきゃじゃないか!


「シムカ様、そもそも何故に私達はあのスットコ・・・ゲフンゲフン。

 あの神に呼ばれたのですか?」

「もしかしてもしかしなくとも

 まだ何も説明を受けておらぬのですか?」

「はい、説明受けるも何も言葉を発する前にこうなりましたので」


シムカ神の肩がわなわなと震えている。


「何処のどいつですかねその阿呆は! ん”ん”っ、失礼。

 説明は戻ってからいたしましょうか。

 私がこの地に降り立つ事は良くも悪くも影響を与えてしまいますので

 あまり長くは滞在出来ぬのです」

「では皆の前で1つだけ。

 もし私達が呼ばれて来たのだとすれば

 それは転生という事でこの世界でしょうか?

 また彼等と、皆と会う事は可能なのでしょうか?」」

「はい。何十年後となるのか何百年後となるのかは不明です。

 ですが間違いなくこの世界となります」

「何十年・・・何百年・・・」

「グレン・・・

 私シムカの名において

 それが何百年後であろうとも彼等との再会を約束しましょう」

「出会ってすぐ死別とかは無しの方向で・・・」

「心得ておりますよ」


そう言って微笑んでくれたシムカ神の言葉に安堵の息をついた。

そしてデュラハンさんの腕から抜け出し

ん?

そうだよずっと抱きしめられてたんだった。

ぶわっと顔に体温が集中した。


「お、お恥ずかしい所を・・・」

「構わぬ」


デュラハンさんから少し離れてシムカ神と向き合う。


「参りましょうか、シムカ様」

「別れの挨拶はよいのですか?」

「必要ないですよ。

 別れではありませんから!

 一旦離れるだけですから」


振り返らずにそのまま皆に告げる。

だって皆の顔を見たらまた泣いてしまいそうだったから。


「皆が居てくれたから、私は安心して過ごす事が出来た。

 ありがとうね。

 絶対に戻って来るから!

 戻って来て私の仲間達を紹介するから!

 だからそれまで元気でいてよね!

 皆大好きだよ!またねぇ!!」


言い終わるとシムカ神が抱きしめてくれ温かな光に包まれた。

だけどやっぱり気になってしまって振り返ったけど

結局涙で視界がぼやけて皆の顔は見えなかった。


「あ!シムカ様」

「どうしました?」

「ハリセンって持って足りしません?」

「ハリセン・・・ですか?

 すみません、持ち合わせておりませんね」

「ですよねぇ・・・」

「ですが、鉄扇ならばありますよ?」ニッコリ


この表情は・・・

シムカ神、儂がハリセンを望んだ理由解ってらっしゃる?

お持ちなさいと差し出された鉄扇をありがたく頂く。

ぎゅっと握りしめた瞬間、視界が開けて皆の姿が飛び込んだ。


「「「「 姐さん!! 」」」」

「CICA! ボブ! KAZURA! イザ!!」


再会を喜び皆でしっかりと抱き合う。

こういえば一見温かな光景に見えるだろ?

でもね、考えて欲しい。

ゲームキャラでならまだいいさ。

いい歳こいたおっさんおばさんが涙と鼻水流して抱きしめ合ってるんだぜ?

何とも言えない光景だと思うんだ・・・


ずびぃーっ


KAZURA 「うえっ、人で鼻水拭くんじゃねぇよCICA!」

CICA 「あれ、ごめん」


うん、いつもの光景だ。

さて、あのスットコ神は何処かな。



バッコォーンッ!


物凄く痛そうな重たい音が響き渡った。


「痛いではないですか!シムカ大神!」

「痛いではないですか、ではありません!

 痛くしておるのですから当然でしょう!

 ユング!其方いったい何をしておるのだ」


スットコ神に対するシムカ神のお説教が始まった。

聞きたい事があるのでほどほどで止めておいていただきたい・・・


あちらのお説教が終わる間に、こちらはこちらでこれまでの経緯を報告する事にした。

とは言え泣きそうになるから、淡々と手短に端折って話した。

そして解かったのは地上と此処との時間の流れが違うという事。

儂にとっては数ヵ月だったけど、皆はまだ お茶を1杯飲んだだけだと言う。

なるほど、そりゃいつまでたってもお迎えとか来ない訳だ・・・

皆も呆れかえっていた。


KAZURA 「まぁ無事戻って来れてよかった」


儂は無事だったけどね・・・

ゲイザーくんがね、とも言えるはずもなくて。


「さて皆さん。

 何故皆さんが呼ばれたか、ユングに説明させますね」


お説教を終えたシムカ神がスットコ神を引きずってこちらにやって来た。


「改めて、僕はユング。ファンタニアと呼ばれる世界の神の一柱だよ。

 君達を呼んだのはね」

「ちょぉーっと待ったー!!」


被せ気味に叫んだのは許して欲しい。

コノヤロウ、神だろうが何だろうが知ったこっちゃない!


「あのさ、まずは詫びが先なんじゃないの?」

「詫び? 僕が? 誰に?君に? 君、誰?」


ピキッ


CICA「ひぃっ」

イザ「まずい!」

KAZURA「姐さん押えて!」


「うっせぇ!

 誰だと?茶掛けられてトレー投げつけられたあげく

 お前のスライディングアタック受けて地上に落とされた儂だよ!

 覚えてもなきゃ詫びる気も無いつー事はワザとか、あぁん?!

 お前のせいで・・・

 お前のせいでゲイザーはなぁぁぁぁぁ 」


そこからは自分でも抑えが効かなくなっていた。

ただ感情的になって悪態つきまくって鉄扇でしこたま殴っているのは解る。


何故すぐに対処しなかった

何故ゲイザーが消えなければならなかった

すぐに対処していればゲイザーは消えていなかったハズだ

あんたら神にすりゃゲイザーは

闇の領域に住まう単なる存在の1つに過ぎなかったのかもしれん

だけど儂にとっては魂も感情も心もある1つの命で

1人の大事な友人だったんだよゲイザーは!


「何が神だ、このくそったれがぁぁぁぁ!」


ぐしゃりと鉄扇が砕け散り血飛沫が宙を舞った。

手足が 全身が痛む。

でも心が一番痛むんだよ。


「んあ”あ”あ”ぁぁぁ!!」


もう自分の感情が暴風みたいに乱れて制御出来なくて泣き崩れるしかなかった。


CICA「姐さん姐さん。落ち着こう? ね?」

ボブ「そうだよ、血だらけじゃないか」

KAZURA「俺らも気持ちは同じだから。ほら、深呼吸して」

イザ「グレン過呼吸になってる。ゆっくりと息を吐いて」


そして再び皆で抱き合って泣いた。

絵面わりぃなこれ、なんて思えて少し落ち着いた。


読んで下さりありがとうございます。

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