表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/167

75:氷の大地(北) 遺跡散策② ~ライカ・ジーク~

*** *** ライカ目線 *** ***



「これは・・・」

「凄いな」

「綺麗ですね」


中庭の様な場所に人工的に造られた滝が見える。

どこから水が来てどこに流れていくのかはわからないがとても綺麗だった。

何度か階段を上り下りし辿り着いたのだが3人共現在地は?と考えても思い浮かばない。


「皆に教えたくとも」

「場所の説明が出来ませんわね」

「んむ、こうも上り下りを繰り返すと・・・な」


さすがに俺の鼻もここでは役に立ちそうもない。


「一応は報告しておくか?」


運がよければ他の皆も辿り着けるかもと思った。

と、グレンから連絡が入った。


「凄く素敵なレリーフの広間発見」


こちらも滝を見つけた事を伝えたが


「1階のどっか・・・」


同じか(苦笑)

地図がある訳ではないのだから、皆似たような物だろう。


「しかし見事な物であるな」


鎧を着ていないデュラハンは少々顔色が優れないエルフとも言えなくは無い。

男の俺でも一瞬見惚れるほどだ。

そのデュラハンと滝の組み合わせがまるで絵から抜け出たように見える。

が、それは俺にも当てはまったようで・・・


「ライカ様の精悍なお顔立ちと艶やかな毛並みが美しい滝にお似合いですね」


とアリアンに言われてしまった。

そのような事は言われたことが無く、少々気恥ずかしい。


「アリアンも似合うと思うが?

 滝の清らかさがアリアンの清純さと相俟って美しいと思うぞ?」

「それは口説いているのか?」

ぶっ・・・

「そんなつもりでは・・・」


フッとデュラハンが笑う。

判ってて言ったな・・・


「存じておりますよ。想い人がいらっしゃいますよね?」


アリアンが悪戯っぽく笑う。


「まだ・・・自分でもよく判らない・・・」

「其方も難儀なものだな」

「人の事よりも二人はどうなのだ?」

「む・・・」

「わ、私は・・・」


ほら見ろ、人の事を言えないではないか(苦笑)

結局のところ、俺達三人は似た者同士で自分の気持ちにハッキリと自信が持てず

相手の姿を目で追ったりはするものの、何もできずに居る訳だ。


「しっかり者に見えるのですが、時々子供の様にも見えてしまうのです。

 なんといいましょうか・・・

 油断するとすぐにズボンを破いてしまったり」


クスリとアリアンが笑う。


「ズボンを・・・」

「破く?・・・」


どういった状況なのだろうか。


「皆さまご存じないと思いますが

 あの方、誰も居ないと思って時々油断なさるんです。

 そして・・・ブォッと勢いよく音がいたしまして・・・

 破けているんです」


思い出して笑っている。


「屁で?・・・」

「破ける物なのか?・・・」


思わずデュラハンと顔を見合わせる。

どれだけ破壊力がある屁なのだろうか。

想像してみたら沸々と笑いが込み上げてきた。


「言い方と申しますか、説明不足でしたね。

 その・・・一回目はヨートンに抱き着かれて

 こう・・・ぎゅっとお腹に力が入ったご様子で・・・

 二回目は・・・座ろうとしてしゃがんだ拍子に・・・」

「なるほど、判らんでもないような・・・」


見ればデュラハンが中腰になっている。

やめてくれ、美丈夫のその格好は・・・ギャップがだな・・・


「や、やめてくれ・・・力が。ぐふっ」


我慢しようとすればするほど笑いが込み上げてくる。


「ハッ・・・ あ、あ、あの!

 この話は聞かなかった事に。あの方の名誉に傷が・・・

 お願いいたします、聞かなかった事に・・・・」


顔を真っ赤にしてオロオロし始めていた。


「大丈夫だ、ここだけの話に・・・」


クックッと笑いが込み上げてくるのでそれを言うのが精一杯だった。


「んむ、他言はせぬ」


一見冷静に見えるデュラハンの肩は震えていた。

我慢しているようだ。

少しして、笑いも落ち着き、他にも何かないか探すことになった。


再び上り下りを繰り返すと、小さ目の坪庭を見つけた。

1本の樹から四方に枝が伸びており、その枝にはピンクの小さな花が咲き乱れている。

根元には落ちた花びらがピンクの絨毯の様に広がっていた。


「これはまた・・・美しいな」

「デュラハン様、以前グレン様が描いて下さった絵に似ておりませんか?」

「ああ、確かサクラとか言ったか」

「ほう、サクラ・・・か」


するとデュラハンはガサゴソと鞄をあさり、何かを取り出し広げた。


「まあ、いつもお持ちになってらっしゃるのですか?」

「美しい絵だったのでな」


見れば、まさに今目の前に広がる光景と類似していた。


「なるほど・・・。シショー達の世界の樹か・・・」


この世界には無い物だった。

と言うかシショー、絵も上手いな。


「一枝土産に頂いていくか?」

「いや、それはよした方がよかろうな」

「グレン様がサクラの枝は折ってはならない。

 折れた場所から菌が入り枯れてしまう。

 繊細な樹なのだとおっしゃっておりました」

「なるほど。では機会があれば皆で来よう」


辿り着けるかは判らないが・・・


「そうだな」

「その時は、ここでささやかなお茶会でもいたしましょうか」


一休みした後我々は帰路に着く事にした。

不思議な事に帰り道は2~3回上り下りをしただけだった。

外に出ればすでにグレンとイザ達が戻っている。

が、何故イザ達三人はずぶ濡れなのだろう?



*** *** ジーク目線 *** ***



「思ったより寒くないねー」

「だって温石があるからね!」

「二人共前を見て歩け・・・」


シカを真ん中に、右手をボブが左手を俺が繋いでいる。

グレンに念を押されたからだ。


「シカは目を離すとすぐどっかに行く。二人で手を繋いで絶対に離すな。

 いいな?シカを挟んで左右どちらも手を繋げよ」


さすがよく判っているというべきか

どれだけシカがやらかしてきたのかが解かる。


「シカ、ジーク。別れ道だけど、どっちに行ってみる?」

「そうだな・・・」

「なんとなく、こっち!」


なんとなくって・・・

まあ判断材料は何も無いしな。

幾つかの別れ道を進み、俺達が辿り着いたのは・・・

色とりどりのガラス?氷?で作られた壁画のような物だった。


「うわぁー。ステンドグラスみたい」

「うん、綺麗だね」


ステンドグラスとは?・・・

首を捻っているとボブが説明してくれた。

色とりどりのガラスで形作られた物で、まさに目の前に広がるコレのような物らしい。

ボブやシカ達の世界では割と見る事が出来る物のようだった。

なるほど。様々な花や小鳥が描かれたソレは確かに美しかった。


「綺麗だし、ちょっと眺めながらおやつタイムにしようよぉ」


とシカはイソイソと準備を始めた。


「あ、姐さんこうゆうの好きだしシカ教えてあげなよ」

「そうだね。おやつ食べ終わったら連絡するー」


すぐじゃないのか、と思ったがそこがシカらしいとも思った。

まるで聞こえてたのかとゆうタイミングでグレンから連絡が入る。

シカはちょうどクッキーを口にほおばったところだったので代わりにボブが答えている。


「僕達はおやつ休憩中だよ!」


そっちかーいっ!

まあ戻ってからの報告でもいいか・・・

俺では上手く説明出来そうにもないしな。

おやつタイムが終わり再び散策を続ける。


「あ、見て見て!滑り台があるよ!」

「わあ、本当だ!僕でも滑れるかなあ」


待て待て、滑る気か?

何処につながっているかも判らないのに?

いやそれ以前に滑り台ではないと思うんだが?


「僕でも行けそうだ!じゃあシカは危ないから僕と一緒に滑ろう!」


と抱えて膝に乗せている。


「待てボブ!落ち着け!」


遅かった・・・

ピューッと二人は滑って行き闇の中に消えた。


ああぁぁぁ・・・


これはもう俺も行くしかないか・・・

諦めて俺も滑って行く。

思ったよりもスピードが出るな。


・・・


・・・・


まだか?長いな。

フッと軽くなる感じがした次の瞬間

ザブンッと水の中に落ちた。


ぶくぶくっ・・・


プハッと顔を上げれば二人が居た。


「勝手に先に行くな!」

「「 ごめん、つい・・・ 」」


・・・


「でもね、温泉があったよ!」


温泉?・・・

手を引かれて行ってみれば確かに温泉らしきものがあった。

手を付けてみれば温度もちょうどよい。


「濡れちゃったし、体が冷えないように暖まろうよ!」


服は風魔法で乾かせばいいしとシカが言う。

ん?どうゆう事だ?まさか・・・

こちらの心配なんぞなんのその。

そのままポイポイと服を脱ぎシカは温泉に入って行った。


「「・・・」」


俺とボブは見つめ合ってどうしたものかと考える。


「ボブ!ジーク!はやくーー」


人の気も知らずに呑気な物だ・・・


「ねえジーク。僕達さ・・・

 男性として意識されてないのかな?」


ボブはちょっとショゲている。


「だが・・・結婚はしたよな?俺達・・・」


バシャ!


待ちきれないと言わんばかりにシカがお湯を掛けてくる。


「ボブ、諦めよう・・・」

「そうだね・・・ 行こうか」


二人で諦めて服を脱ぎ温泉に浸かる。


「気持ちいいねー。皆で来たいね」


俺達の思いなどお構いなしにシカが言う。

皆でって、お前その時も裸で入る気か?!


「駄目だよ! シカの裸とか皆に見せられないよ!!」


ボブは真っ赤になっている。


「その時はちゃんと水着用意するよぅ・・・」


シカはブクブクと顔を沈め目から上だけ出ている。

真っ赤になっているところを見るとやっと自覚したようだ。

そのまま移動してチョコンとボブと俺の間に入り顔をだすと


「二人は・・・その・・・夫婦だし・・・いいかなって」


モジモジと呟く。

ヤバイ、ボブがのぼせて鼻血でも出しそうだ!

シカにか温泉にかは判らないが(汗)


「シカ、暖まったなら先にあがれ」

「へ?なんで? 一緒にあがればいいじゃん」

「俺達はその、あれだ。後からでいい」

「えぇ、じゃぁ待ってるよぅ?」

「いいから先に上がって待ってろ!」


察してくれよぉー!

叫びたかった。

その後なんとか言いくるめてシカを先に上がらせた。

どうやって拠点まで戻ったかは正直覚えていない。


「ボブ、俺達の先は長そうだな・・・」

「そうだね・・・」


色んな意味で疲れた。本当に疲れた。

次の散策はクジに参加しよう、そうしよう。

今夜はぐっすり眠れそうだ。

いや眠れるか?俺・・・

ボブも眠れそうにないとコッソリ呟いた。

シカはすでに夢の中だった。

読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ