72:氷の大陸(北) 我を忘れる① ~イザ・グレン~
*** *** イザ目線 *** ***
目覚めれば・・・俺達のテントはモフモフだらけになっていた。
なんだこれは?
デュ「随分とわっさわさになったなカズラ殿」
ズラ「俺はこんなわっさわさじゃないですね」
デュ「ではやはりうす・・・」
ズラ「薄くもねえよ!」
寝ぼけているのか朝から二人はコントを繰り広げている。
ライ「むおっ、カズラ随分とモf・・・」
ズラ「だから俺じゃねえよ!」
なんで皆カズラの名を・・・(苦笑)
ではこのモフモフの正体はなんなのか。
よく見れば丸まって寄り添っている真っ白な狐達だった。
暖を求めてやってきたのだろうか?・・・
すると
ボブ「うわあ、シカが熊の縫いぐるみになってる!」
シカ「ボブそれ私じゃないよ!」
フィ「ちょっとやだ、くすぐったい。くふふふっ」
アリ「そこは駄目ですよ、うふふふ、ヒャァ・・・」
ジー「ボブ重いんだがのいてくれないか」
ボブ「僕じゃないよ!」
などとあちこちで声が上がるので皆のテントもモフモフだらけなのだろう。
あれ?グレンの声は聞こえないが・・・
モフモフを掻き分けてテントの外に出てみた。
「グレン?」
「イザ起きたの?おはよう。見てほら!狼だよ!」
グレンは1匹の狼の腹に顔を埋うずめていた。
憧れていた狼を見て触れて嬉しそうに笑っている。
「なんでこんなにモフモフが集まったんだろうな」
そう呟くと狼が答えてくれた。
『他の大陸の者達が珍しくてな。皆挨拶に来たのだろう』
なるほど、あれは熱烈な挨拶だったのか。
何かが足元をツンツンと突いた。
狐がじっと見つめている。何か用でもあるのか?
『 抱っこ 』
ん? 抱っこ? 抱かせてくれるのか?
抱き上げれば顔をペロペロ舐めてくる。
可愛いじゃないか。
戯れる事しばし。
徐々に皆も何かを抱えた状態でテントから出てくる。
フィンやアリアンは・・・テン?オコジョ?イタチ?っぽい何かを。
デュラハンとカズラとライカは俺と同じく狐を。
ジークとボブとシカは熊・・・に乗せられて。
いや、シカさんだけは子熊の様に咥えられていた。
ぶふっ(笑)
「なんで私だけ・・・」
きっと防寒服に熊っぽい耳が付いているから子熊に見えた?
もしくはミニマムで子供に見えた?
不服そうなシカさんだが諦めた方がいいと思う。
「なんか今日はこのまま戯れていたい」
「「「 賛成ー!!! 」」」
たまにはのんびりとするのもいいだろうと食事を済ませた後は、思い思いに白いモフモフと過ごす。
俺とライカは獣化して狼や狐と一緒に白い大地を駆け回る。
俺は白いから目立たないけど、ライカは黒いから目立つな。
こんなに思い切り走り回るのは草原で暮らしていた頃以来久しぶりではないだろうか。
たまには良いもんだな、すこぶる気持ちがいい。
爽快だ。
俺とライカは思う存分走り回りこの身に当たる風を堪能していた。
ふと気が付けば夕暮れになっていた。
「なあライカ。ここは何処だろう?・・・」
「んむ、判らんな・・・」
そう、俺達は爽快に走りすぎて何処にいるのかが解らなくなっていた。
何処を見渡しても真っ白で特に目印となる物は無い。
「これは・・・怒られるパターンだな」
「だな・・・」
俺達は寒さをしのぐ為近くに見つけた洞穴に入る事にした。
幸い敵意や殺気の気配は感じられない。
ほとんどの狼や狐は満足したのか其々の巣に戻ったようだった。
数匹の狼と狐が残っていてくれたお陰で身を寄せ合うと暖が取れた。
「日が昇ったら高台を探して、上から周囲を見て見るか・・・」
障害物がそれほど多くはないので運が良ければ遠目にでも野営地が見えるだろう。
「そうだな、今日はこのまま寝ておくか」
こんな事なら鞄くらい持って来ておくべきだったなと思いつつ眠りについた。
*** *** グレン目線 *** ***
「グレン様。ライカ様とイザーク様が戻っていらっしゃらないのですが」
へ?・・・
白いモフモフ達と戯れて満足し、お茶を飲んでいるとアリアンがそう言った。
気が付けばもう夕暮れだった。
確かイザとライカは・・・獣化して思い切り走ってたっけ。
楽しすぎて離れ過ぎた?
いやいや、シカさんじゃあるまいしあの二人に限って・・・
いやありえるか?・・・
時々子供っぽくなるからな、あの二人。
さて、どうしたものか。
浸食シリーズの気配もスルーアの気配も感じられないが確実に安全とは言えない。
なるべく夜の行動は控えたいしな。
まああの二人の事だから、寒さをしのげる場所を見つけて一晩くらいはなんとかするだろうが。
せめて連絡くらい・・・取れるじゃん。
冒険者登録した時に受付嬢が言ってたよな。
バングルに連絡先を交換して登録すれば・・・短文の通信が可能だって!
・・・
・・・・・
してない・・・
「誰かさ、イザかライカとバングル登録してる?・・・」
「「「 ・・・ 」」」
チーンッ
そう、皆いつも一緒だしと思って交換登録してなかったのだ。油断した。
「忘れない内に、今ここに居るメンバーでやっとこうか」
イソイソと皆で交換登録をする。
「あ・・・あの・・・」
「どうした?フィン」
「ライカとは・・・交換してあるの・・・」(真っ赤)
ぶっ・・・
聞けばどうやらあの釣りで海に落ちた時に
今後万が一の事があってもとライカが言い出し交換したらしい。
なるほど? やるなライカ。ニヤリ
皆と交換してなかったので言い出しにくかったらしい。
「じゃあライカと連絡とってみてくれるかな?」
皆から見えない場所でならと了承してくれた。
まぁね?そりゃ恥ずかしいよなぁ。ニヤニヤ
「ライカ、無事?」
「フィン?!そうかこの手があったか」
「よかった。イザも一緒にいるの?怪我は無い?」
「大丈夫だ、イザも一緒だ。だが帰り道がわからない」
「寒さは防げそう?」
「それも大丈夫だ、心配ない」
「よかった。皆と相談して朝なったらまた連絡するわね」
「ああ、すまないが頼むよ」
「師匠、二人共怪我も無く大丈夫そうよ」
「そうか、よかった」
「でも帰り道が判らないって」
ふむ・・・
確かにどこもかしこも真っ白で距離も方角もわからんしな。
シカ「狼煙とか見えないかなぁ?」
ボブ「花火とかじゃ明るいと見えないかぁ・・・」
シカ「私の時みたいに照明弾とかも無理かなぁ」
デュ「照明弾か・・・
いけるやもしれぬぞ」
グレ「ん? なにかいい案が?」
デュ「グレン、ゲイザーは召喚獣になっておるのだろう?」
グレ「うん、そうだね」
ゲイ「呼ンダ?」
ぶ、ゲイザーくんも出入り自由なんかーいっ!
デュ「ゲイザー、ライトは使えるようになったか?」
ゲイ「勿論ダヨ」
デュ「上空で光って貰えば目立つであろう。白き大地に黒い光であれば」
「「「 なるほど!! 」」」
なるほどね。
魔法が使えない魔物でも召喚獣になれば生活魔法は使えるようになる。
さすがデューンだね。
グレ「ただね、ゲイザーくん。空飛ぶ時は紐?リードつけてもいいかな?
どっか飛ばされたりしないように・・・」
ある訳無いと思っても、またゲイザーくんが消えてしまわないかと不安だった。
ゲイ「大丈夫ダヨ。グレン ズット一緒。リード?着ケル。グレン安心?」
グレ「うん・・・」
デューンがそっと肩を抱いてくれる。アリアンもそっと肩を寄せてくれる。
この二人は ずっと昔にあの光景を見ているから察してくれたのだろう。
翌朝の行動が決まったので各々眠ることにした。
ゲイザーくんは不安にならないようにと一緒に寝てくれた。
相変わらず優しい子だと思う。
読んで下さりありがとうございます。




