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71:氷の大陸を目指して④ ~グレン・カズラ~

*** *** グレン目線 *** ***



風が冷たくなり始めた。

氷の大陸が近づいて来たのだろうなと感じる。


儂はネットの動画サイトでアラスカのドキュメンタリーを見るのが好きだった。

イヌピアットの生活や野生動物の生態。

伝統的な生活と自然との共存。

自分では出来ないだろうと思いつつも魅力的で引き付けられた。

この旅で少しだけ体験が出来るかもしれない。

イグルーに挑戦してみてもいいかな。

そう思い少しだけテンションがあがる。


ぶぇっくしょい あ"ぁ"~・・・


「「 姐さん 腰、腰! 」」


シカさんとカズラが叫ぶ。


「大丈夫だよ。 へっく・・・」グキッ


・・・


マジか・・・


「姐さん!!」


シカさんが慌ててやってくる。

いてて・・・

こんな事ならイシュカ神に腰痛も治してもらっときゃよかった。


「ちょっとごめん。部屋で休んでくる・・・」


そう言ってゆっくり立ち上がろうとするが、痛くて無理だった。


「抱えて運ぶか?」


イザが心配そうに声を掛けてくるが断った。

この場合、下手に抱えられると余計に痛い。


「ヒールする?」

「いや、戦闘中だけって決めたじゃん」

「でも姐さん動ける?」

「が・・・がんばる・・・」


ゲームと違ってMPには限りがある。

そりゃ時間経過で自然回復はするけど。

無暗に魔法を使って急な戦闘になったりした時、魔法使えませんでしたなんてオチはごめん(こうむ)りたい。

なので戦闘中とよほどの緊急時以外は魔法禁止(生活魔法は除外)と皆で決めた。

ギックリ腰くらいで使ってたまるか(汗)

気合をいれて、ゆっくりと・・・


「うっ」

「「 マンボ! 」」


やめーいっ!

笑うと腰に響くんだが。


「シカ、止めろよ。姐さん痛がってんじゃねえか」

「カズラだって言ったじゃん!」


転生組以外は訳が分からずキョトンとしている。

後で誰か説明してあげて・・・

何とか立ち上がったものの、腰が伸ばせないので曲げたままゆっくりと歩く。

移動中心配して付いて来てくれたシカさんとイザが


『チャッ、チャチャラーラッ チャッチャチャラーラ』


と歌うもんだから笑って腰に変な力が入りまた「うっ」と声が出て

『マンボ!』とまた歌いだし、エンドレス状態だ。

なんの拷問ですかね?と言いたくなるほどだった。

治ったら覚えてろよ・・・(涙目)


なんとか部屋に辿り着き、ベットに転がる。


「しばらく寝るわ・・・」


そう言って一人にしてもらった。

これは・・・温石も用意したほうがいいんだろうなぁ。



*** *** カズラ *** ***



部屋にゆっくりと向かう姐さんを見送ってから不思議がる皆に俺は説明した。

チャッ、チャチャラーラッ チャッチャチャラーラてリズムの歌があって

その合いの手に「うぅ~ うっ マンボ!」と入る。

それを誰かが「うっ」と言った時に歌って弄るのだと。

皆なるほど・・・と言っていたがきっとこれは自分がやられてみないと判らないかもしれない。

と、シカとイザが戻って来た。


ズラ「姐さん大丈夫そう?」

イザ「腰に変な力入って疲れたから寝るって」

ズラ「シカのせいだろ」(笑)

シカ「カズラもでしょー!

   イザたんもチャッチャチャラーラて歌ってたもん!」

ズラ「ぶ、イザもかよ」

イザ「つい?・・・」


あー。これ後で三人共怒られるパターン・・・

ハハハと乾いた笑いが出て来る。


イザ「まあでもこの先は益々寒くなるだろうし。気を付けないとな」

ズラ「シカなんてすぐ風邪ひいて熱出しそうだし」

シカ「だ・・・大丈夫だよ・・・ たぶん・・・」

アリ「油断は大敵でございますよ。男性陣の方が熱に弱いと申しますし」

「「 確かに・・・ 」」


互いに気を付けようと話は纏まり、数日で姐さんの腰は良くなった。良かった。

が俺達三人は


「人が痛がってる時に笑わせやがって!」


と怒られデコピンを喰らった・・・



海面には流氷のようなものがチラホラと現れはじめた。

夜にはオーロラが見られるようにもなった。


防寒服に身を包んだ皆は、着ぐるみみたいにモコモコになったのだが

シカは縫いぐるみにしか見えなかった(笑)


「シカ!縫いぐるみみたいで可愛いよ!」

「縫いぐるみとか言わないっ!」


ボブと違いジークは無言でニコニコ撫でている。

ペシッとシカに殴られていた。

んむ、微笑ましい。


そしていよいよ氷の大陸に到着し、いざ上陸!

皆が荷を下ろし船を鞄に収納している。

(あの船が鞄に入るのかよ!)


「見て見て!バナナで釘が打てるよ!」

「本当だ!ほら林檎でも打てるよ!」


シカのみならずボブまではしゃいで地面ならぬ氷に釘を打ち付けている。

何処から釘を持ち出したのやら無邪気なものだな・・・

ん? 氷に釘?!


「待て!お前等止めろ!!割れるぞ!」


叫んだときはすでに遅かった。

ボブがカツンと林檎を振り下ろすと同時に足元の氷がミシミシと音を立てて割れた。


「「え? ええ? ええええええ?!」」


ええ?じゃねえよ、そりゃ割れるだろうよ・・・


「姐さん、大変だ!ボブシカが流された!」

「「 は? 」」


慌てて魔法で茨を出しシカに向けて伸ばす。

シカがうまく掴んだ。


「いたっ!」


離した・・・

おいぃぃっ!

まあ、茨だったしな・・・

仕方が無いよな、うん。

咄嗟でローブが無かったしな。

気を取り直してもう一度茨を伸ばす。

ボブが慌てて茨を掴もうとしたが、茨は海中へ。

寒すぎて上手く伸びないのか・・・

そうしている間にも割れた氷は引き離されていく。

どうする・・・

氷・・・そうか氷だ!

イメージしろ俺。

ボブシカの氷に向けてここから氷の道が出来るように

手の平を足元の氷に付けて・・・イメージを走らせる!


ペキペキペキッ ミシミシッ


「「「 おぉぉぉー 」」」


やったぜ俺!


「「 カズラー!!ありがとぉぉ! 」」

「「「 ナイス、カズラ!! 」」」


ボブシカが戻って来た。

ふう・・よかっ・・・


・・・


「姐さん・・・」

「ん? どうした?」

「お湯・・・ちょうだい?」

「ん? ああ、なるほど・・・」


姐さんは魔法でお湯を出してそっと掛けてくれる。


「皆が見てなくてよかったな」(苦笑)


皆はボブシカを囲んでいる。

そう、俺の手は・・・氷にくっついていたのだった(汗)

手から氷が離れると俺と姐さんは何食わぬ顔でボブシカの元へ向かった。

短時間だったので凍傷にもならずにすんだし、よかった。

あぶねぇ・・・


「ボブシカ、はしゃぎすぎるなよ!」

「「はーい、スンマソン 」」


ボブまでスンマソンになってるし・・・


それから俺達は氷が厚くて海から離れた場所を選んで野営地にした。


グレ「ここで数日過ごして様子を見て見るか」


簡易トイレと簡易テントを設置し仮の拠点ぽくしていると


シカ「スラ洗のスライムが凍ってるよぉ!」


ぶっ、スライムって凍るのか。

トイレにも温石を置くことになった。

この世界の温石は 温めた石ではなく熱を放つ不思議な石でドロップ品で時々入手できる。

大きさにもよるが1つで12~14時間効果があり発火の心配もない優れ物だ。

温石のお陰でスライムの解凍?も出来、テントの中も温まる。

食事は体が暖まるように具材たっぷりのシチューだった。

当然ながら味は文句なしに旨いので少し食いすぎたかもしれない。

たまにはよしと言う事で・・・


毛皮のお陰で簡易ベットも温かいし気持ちよく眠れそうだ。

明日は周辺の散策だし、今日はMPも消費したし・・・ゆっくり寝よう。

はぁ~、ぬくぬく。 スピィ



もそもそ・・・

(コング 添い寝する カズラ ぬくぬく)

(ずるい!僕も添い寝るワン!)

(私も入るニャ!)


その夜カズラは氷塊に押しつぶされる夢を見たとか見なかったとか・・・

読んで下さりありがとうございます。

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