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70:氷の大陸を目指して③ ~カズラ・シカ~

*** *** カズラ目線 *** ***


トントン カンカン ギーコギコ


ハンマーやノコギリの音が響く。


女性陣で内装や帆を作り、男性陣で船体を作り上げていく事になった。

が、コングはまだしも姐さんまで船体組にやってきた。


「儂に手芸を求めるな。裁縫だの刺繍だのと出来ん!」


だそうで、どうやら姐さんにも苦手な物があったらしい。


デュラハン殿とボブは巨体を活かして骨組みを。

イザとライカとコングで外壁や床部分を。

ジークと姐さんが階段や手すりなどを。


そして俺はと言うと・・・

船内仕様のキッチン製作を任された。

一応料理も作れるので、使い勝手も考えて作れるだろうと。

そりゃまあ料理も一応は出来るが・・・

どうすんだよキッチンなんて、と悩んでいたらなんの心配をいらなかった。

すっかり忘れていたがあのスライム人形があったじゃないか。

後は耐熱を考えて床や壁に金属板を張ればいい。

これもドロップ品の耐熱鉱石から作れるので問題はない。

加工は魔法で応用がきく。

船の製作を始めてからその工程が面白いのか珍しいのか。

周囲の魔獣や魔物が見学にやって来る。


『へえ、器用に造るのね』

『これはねぐらにも良さそうだ』

『この弦ならロープになるんじゃない?』

『外壁にはこれを塗るといいぞ』


使えそうな物を持って来てくれたり、差し入れを持って来てくれたり。

毎夜賑やかなのだが俺としては静かに眠らせていただきたい。


数日もすれば、何人かの手先が器用な魔物達が手伝いを申し出てくれた。

見様見真似で作業しつつも解らない所は聞いて来る。

なによりも楽しそうにやっているので俺達もつい楽しくなってしまう。

お陰で作業ははかどるが、筋肉痛でもある。


グレ「予定より早く完成しそうだな」

ズラ「ですなあ。ただ・・・」

グレ「んむ、言わなくていい・・・」

シカ「ちょぉ~っとハデになっちゃったよねぇ」


「「「 ・・・ 」」」


そう、魔物や魔獣がこれもいいぞ、これも役に立つとアレコレ勝手につけてくれるので

俺達が描いてたシックな帆船とは少々違う物になりつつあるのだ。

好意でやってくれているので、取り外すわけにもいかず・・・


イザ「まあ・・・気にしても・・・な?」


そして作業開始から1ヶ月後、船は完成した。

丸一日ゆっくり休むことにして、それから出発だ。

んむ、のんびりしよう・・・



*** *** シカ目線 *** ***



ギャォー ギャォー


何かの鳴き声と潮の香りで目覚める。

この1ヵ月ちょっと、毎朝の事なんだけどね。

今日はいよいよ船に乗って出発する。

当初の予定では1~2ヵ月掛かる感じだったんだけど

なんだかアレコレと付属品が付いたお陰で2週間くらいで到着するんじゃないかってアリアンが言ってた。

魔物や魔獣に見送られて、船は氷の大陸を目指して進んで行く。

まさにオーシャンブルー! 透き通って綺麗な青!

フッフフーン♪

私はご機嫌なのだ。


「「「 はしゃいで落ちるなよ 」」」


皆に言われた。

はぃはぃ、判ってますよぉ。

ちゃんと気を付けてますよぉ~。


船の操縦はカズラが担当している。

私も操縦したかったんだけど、背が届かなかったのよね。

だから私の担当はアリアンと一緒に料理担当になった。

シカさんはりきっちゃうよぉ、美味しいご飯作っちゃうよぉ?

なんならお菓子も作っちゃうよぉ?


「シカ様、途中で買い出しするような場所もございません。

 なのでご利用は計画的に!でございますよ?」ニッコリ

「はぁい」


そうだった、調子にのって作り過ぎないようにしなくちゃだよね。

だ、大丈夫だよ解かってるよ、ヘヘ、へへへ・・・


あ、そうだ。せっかくだし船釣りにも挑戦してみよう。

もしかしたらお刺身に出来るような魚が釣れるかもだし

烏賊とか蛸が居るかもだし。

そう思い手が空いてるボブとライカを誘ってみた。


「ボブー、ライカー。釣りしない?」

「いいけど今度は僕を釣らないでよね」

「俺の尻尾もな・・・」


だ・・大丈夫だよ?・・・タブン。

少しだけならやってみるかと三人で竿を垂らした。


ブンッ ちゃぽんっ


ほぉら大丈夫だった!


「シカちゃん?・・・」


え?・・・

あれ見て、とフィン姉さん指をさされた方を見れば・・・


「スライザーくん、なんで溺れてるのぉ?!」

「「「 シカのせいだよ! 」」」


と一斉に言われた。


あれ? おかしいなあ・・・


「どっこいしょういちっ」


と網でスライザーくんを救い上げる。

ブフッとカズラが笑う。


「こっちでもそれ言ってるのかよ」

「カズラだって使うじゃんよぉ」

「たまにしか使わねぇよっ」

「たまにでも使うんじゃんよ~」


ライカとデュラハンは不思議そうな顔をしている。

気にしなくていいから・・・

気を取り直して


えいっ  ちゃぽんっ

今度は大丈夫、ふふん。


ちゃぽちゃぽ くいくいっ


すぐに当たりが来た。

おぉ?


ぐいっ


ちょっと・・・

引きが強いんじゃないかな?・・

大物の予感?


ぐいいっ


「ぼ・・・ボブッ。へるぷ みぃーーーー」


凄い力で引っ張られるぅー。

むぅーーりぃーーー。


「シカッ!」


ボブが背中から一緒に竿を握ってくれる。

ライカは横で網を構えている。

ザバッと姿を現したのは・・・


「鍋!から揚げ!供酢和え!あん肝ぉぉぉぉぉぉ」


つい魚の名前ではなく料理名を言ったから?


きゅぽっ


私はその大きな口に飲み込まれてしまった・・・らしい?

いぁいぁいぁ、なんでこうなるのよ・・・


真っ暗だし・・・

生暖かいし・・・

生臭いし・・・


「ボ・・・・」


叫ぼうと口を開けかけて、慌てて手で口を押えた。

海水入ってくるじゃん!(汗)

海水ならいいけど、アンコウの涎でしたとか嫌過ぎるぅ。


・・・


変な想像しないでくれる?!と自分に突っ込んだ。

そんな事を考えてると視界が明るくなった。


パカッ


「シカー!居る? 大丈夫?」

「いるよ! ぼぶぅぅぅぅぅ!」


口をこじ開けて覗き込んだボブが私を引っ張り出そうと両手を伸ばしてきた。


パタンッ


「グェッ」


ボブ・・・

両手離したら そりゃ口は閉まるよね。

何やってんだか、とあきれながらライカとジーク兄さんが口を開けてくれた。


「へへ・・・」


へへ・・・じゃないよボブ。

そうゆうとこも可愛いからいいんだけどもっ。


「大丈夫か? うっ」


うってなに? 臭う?

クンクンッ くっさっ・・・


「シカ、すぐ風呂だ風呂!」


そう言いながらジーク兄さんは私を小脇に抱え浴室に直行した。

また小脇に抱えられるのね・・・


「しっかり洗って来いよ」


ジーク兄さんは浴室に私を降ろすとそう言って立ち去った。

入れ替わりにライカがやってきた。

どうしたんだろう?


「ほら、バスタオル。ジークの奴慌てすぎだろ」


ククッとライカが笑う。

そうだった、浴槽にそのまま放り込まれたからバスタオル持ってきてない・・・


「ありがとう」


シャワーを浴び着替えて甲板に戻ると・・・皆固まってた。


シカ「あれ?どうしたの?もしかして食用じゃなかった?」

イザ「食えるには食えるらしいんだがな」

グレ「シカさんや・・・」

シカ「はぃはぃ」

グレ「鑑定で食用とは出たけど、誰もあれ捌けん・・・」

シカ「な、なるほど」


確かにアンコウは慣れてない人には無理よね。


シカ「じゃぁ誰かあれ、尻尾からプラーンて吊るしてくれる?」

「「「 捌けるのかよ!! 」」」

シカ「あ・・・」

「「「 なんだ? 」」」

シカ「背が届かない・・・」 チーンッ


私の身長の二倍だもん、仕方がないよねー・・・


「僕が抱えればいいよね?」


ボブが肩車してくれた。


「よいしょっ、どう?これなら届く?」

「うん!さすがボブ!」


包丁では無理そうなのでダガーで捌いていく。

私の指示で立ったり座ったり中腰だったりを繰り返したボブは腰が痛かったとぼやいていたらしい。


捌いてみれば切り身はアンコウそっくりで、皮はプルルンコラーゲンタップリだった。

あんこうもどきのフルコースにして皆で舌鼓を打った。

コラーゲンタップリだと喜んだ女性陣の中にコングが居たのは何故だろうと思ったけど

カズラが小声で雌だからと教えてくれた。

ぶっ、名前変えてあげて・・・


お腹もいっぱいになってハンモックに揺られながら眠りに・・・

あ、後片付け忘れた・・・

まぁいいかぁ。

スヤァ・・・・

読んで下さりありがとうございます。

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