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68:氷の大陸を目指して① ~イザ・グレン~

*** *** イザ目線 *** ***


その日 もれなく皆頭痛が酷かった。


「呑み過ぎた・・・」


当然ながら俺達は二日酔いだ。

だが酒の飲めないグレンは、というと・・・

夜中に水を取りに行こうとしたシカがふら付き、見事グレンの頭を踏みましたよっと。

久々に星が飛んだと頭を押さえていた。

久々に、と言うのは前世でも何度か俺がグレンの頭にぶつかったりしているからだ。


デュラハンは今回で二度目の二日酔いだと言っていた。


「今までこのような事は無かったのだがな・・・」


照れ臭そうに言うデュラハンは意外と可愛いものだ。

バハ様は出てきていないので、やはり彼も二日酔いなんだろうと思った。


「ときに、イザーク殿・・・」

「イザでいいよ」

「では・・・

 イザ殿。聞いておきたいのだが、よいだろうか?」


殿もいらないんだがなと思いつつ、聞いておきたい事は予想がついていたので


「グレンと俺は元の世界で夫婦だったんだ」

「やはりそうであったか」


デュラハンはなんとなく判っていたようだった。


「だからって気にするなよ?デュラハンも好きなんだろ?」


デュラハンがガタリと崩れ落ちた。

あれ?もしかして・・・


「まさかと思うけど恋愛経験は?」

「・・・

 ない・・・」


己にこのような感情があるとは思わなかったのだとデュラハンは言った。

なるほどな・・・


「グレンも言ってただろ? 自分の気持ちに素直になればいい」

「まったく其方といいボブ殿といい懐が広いな・・・」


ヌンッと足元から何かが現れた。


「二人で結託か?」


うおっ。バハ様。どっから現れてるんだよ。


「我も仲間に交えよ」


交えるもなにもバハ様はグレンの推しキャラだからそれでいいだろうがよ!


「交えよ・・・」


判った、判ったからそれ以上近づくな!くっつくな!誤解が・・・

あああぁ・・・遅かった。

すでに生暖かい目で見られてた。

そうだよな、これ周囲からすればバハ様に押し倒された俺の図だよな・・・


『開かれた禁断の薔薇の園』


フフッとグレンが笑っている。違うから!誤解だから・・・

いや、あれは解ってて楽しんでる目だ!

待てグレン。助けてくれ。

そもそもがこうなった原因はお前だーーーーー!



*** *** グレン目線 *** ***


「さて次の目的地なんだが、希望はある?」


皆で地図を眺めながら考えてみるが浮かばない・・・


ズラ「姐さんはどこか行ってみたい場所とかないの?」

グレ「うーん・・・ガルドの中心付近以外かな」

ボブ「ガルドで何かあったの?」

グレ「あー・・・

   姫プとか?俺様とか?勘違い野郎とか?悪趣味成金とか?

   奴隷商とか愛玩用商人とか誘拐犯とか?なんか色々と?」

ズラ「多いな」(苦笑)

ボブ「奴隷商って、もしかして僕のような巨人族の?」

グレ「巨人族のもあったし、獣人のもあったし ヒューマンのまであったな。

   ブン殴って解放しといたけど」

ボブ「噂のダークエルフって姐さんだったんだ」

グレ「噂になってんの?!」


おかしいな、フード被ってたんだがな。

まあいいや・・・


「特に希望無ければさ、氷の大陸行ってみようか?」


話を聞く限り、皆行ってない場所っぽいし。

しかも南極と北極みたいに2か所あるし、未知の大陸とかワクワクしない?


シカ「寒そうだよね・・・」

ライ「寒そうだが、そこには白い種族が多いと聞いたことがある」

フィ「私も聞いたことがあるわね」


白い種族・・・シロクマに北極狐に北極狼!!


デュ「鎧だと凍傷になりそうだな・・・」

アリ「脱げばよろしいだけかと」

イザ「なら防寒具が必要だな」

ジー「食料も多めに用意しておくか」


場所さえ決まってしまえばそこからは早かった。

結局防寒服や防寒テントはドロップ素材を使って集落の職人達が作ってくれる事になった。

食料は道中で貯まるだろう。


なので防寒具が出来上がるまで、人々の手伝いや子供達の相手をして過ごすことにした。

鉱山付近のダンジョンが少しばかりMOBが多いとの事だったので

そこはシカ、ボブ、フィン、ジーク、スライザーに任せた。

儂とイザとデューンは畑仕事、デューンが大活躍だったのには驚いた。


「グレンが残した菜園や庭園の管理を続けていたお陰だな」フッ


少し得意げな顔のデューンは可愛いかった。


ライカとカズラは子供達にダガーの扱い方を アリアンは読み書きを教えていた。

バハ様は・・・どっかに消えてた(笑)


そんな日々を過ごす事10日。

防寒具などの準備が整い出発する事にした。

勿論前日は送別会という名の大宴会だ。

くれぐれも呑み過ぎるなと言い聞かせてあるので二日酔いになる者は居なかった。

またいつでも立ち寄ってくれと長老を始めとする皆に声を掛けて貰えた。

本当にこの村は暖かく優しい村だった。

またいつか訪れたいものだ。


今回は海岸に沿って北上して行くのでヴァル大陸を縦断という形になる。

山越えではなく海岸線を選んだのはシカさんの希望だ。

皆で釣りをして刺身が食べたいんだそうな・・・

フィンと出会ったカリンバの近くも通るので寄らなくてもいいのかと尋ねれば、特に用事はないから立ち寄る必要もないと言われた。

エルフの感覚で言うと、里を出てからまだそんなに時間が経っていないのだとも言っていた。

なるほど、そういうものなのか。


海岸に沿って歩くので視界はおおむね良好だ。

お陰でシカさんがフラフラしそうになればすぐ気付く事も出来る。

ただ、あまりにも回数が多いのでハーネスでも付けてやろうかと思っている。

手頃な蔦でも見つけたら作ろうかな。


そんなある日の事。


「ここ! ここ堤防っぽくなってて何か釣れそうじゃない?

 皆でちょっと釣りしてみようよ」


シカさんがそう言って釣り竿を人数分取り出した。


グレ「用意がいいね?」

シカ「えへへ、お刺身がずっと食べたかったからチャンスを狙ってたの!」

ボブ「確かにこの世界に来てからお刺身食べてないよね!」

ズラ「あー、刺身。食いたいなあ」

イザ「サーモンハラスとか食いたい」

グレ「鰤!儂鰤食いたい!」


一度刺身と思い出したらもう止まらないよね、頭の中が刺身に占領される。

でも、サーモンだの鰤だのいるのかな?・・・

まあやってみるか。


チャポン


・・・


・・・・


・・・・・


ボブ「シカ!僕を釣らないで!!針!僕に刺さってる!」


ぶっ・・・


ズラ「デュラハン殿、竿を投げ入れたら駄目ですよ!」


ぶふっ・・・


イザ「海藻しか釣れない!」

ジーク「こちらも海藻だな・・・」


デュ「アリアン! スライザーを餌にするのは駄目なのでは?」

アリ「駄目でしょうか・・・」

「「「 やめたげて!!! 」」」


ライ「イテッ。シカ!それは俺の尻尾だ!釣るな!引っ張るな!」


グイッ


グレ「おっ、釣れた!」


チャポンッ・・・


グレ「靴・・・ 誰のだよ!海に落としてんじゃねぇよ!」


もぅてんやわんやな状態だ、楽しいけど(笑)

うん、まともな釣りにならない。諦めよう・・・

と思ったら


フィ「シカちゃーん!何か掛かったみたいなんだけど」


フィンの竿に何かが掛かったらしい。

皆で駆け寄る。

大物かな? 竿がしなっている。


グググッ  ポチャッ


やばっ、フィンが海に落ちた!

と、ライカがすぐに飛び込んだ。


その後をイザ・ボブ・カズラ・ジークが追いかける。

デューンも行こうとしたが止めた。

鎧だと沈むから・・・

海中で何かと格闘しているのか、ブクブクと泡が浮かび水飛沫が上がる。

やがてフィンを抱きかかえたライカが戻ってきて他の皆も戻って来た。

獲物も引きずって・・・

そう、引きずるほどの大きな・・・ウミヘビ?・・・

なにこれ。


シカ「鑑定したらウナギみたいに美味しいって!捌くねー」


(((食べられるんだ、そして捌けるんだ・・・)))


フィンは幸い少し海水を飲んだ程度で済んだので良かったと思う。


気が付けば日も暮れ始めたので、このまま野営する事にした。

見た目はちょっとアレな感じだったけど捌いてみれば身は白身だったし

シカさん特製ダレで串焼きにすればどっからどう見ても鰻のかば焼きに仕上がっていた。

ふっくらとして柔らかいながらも脂がのってて旨い。

米があればなぁと思うが無いのだから仕方が無い。


ズラ「あー、米がありゃなぁ。うな丼で食いたい」

イザ「カズラ、思っても言うなよ。我慢してたのに」

ボブ「ほんとだよ!」

ズラ「あれ、口に出てました?」

「「「 うん! 」」」

ズラ「失礼しました・・・」


まぁ何処かで米に遭遇出来るかもしれんし、見つけた時は買い貯めしようと思う儂等だった。

食べきれなかった分は焚火で簡易燻製にして鞄へ。

そしてまたいつものようにワイワイと雑談しながら眠りについたのだった。


読んで下さりありがとうございます。

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