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閑話:月下にて~デュラハン・バハムート~

短いです。

シカ・ボブ・ジーク

三名の結婚式が行われ、祭りの様な宴会の騒ぎも静まった中

デュラハンは一人夜空を見上げていた。


いつもホンワカと穏やかで、何処か幼さが抜けない雰囲気のボブの行動にも驚いた。

【自分の気持ちに正直になれ】か・・・

確かにこの世界には一妻多夫や一夫多妻の種族も多い。

逆に結婚というくくりを持たずに自由に恋愛を楽しむ種族もある。

自分の気持ちに正直 という点では当てはまっているだろう。


しかし 我はどうだろうか。

原初より存在し続けているものの、これまでこの様な感情を持ち合わせた事がない。

グレンと出会い初めて湧いたこの感情をどう理解すればよいのかも判らなかった。

グレンと過ごしたあの日々は常に我にとって斬新で、心地よい物であった。

嬉々として草花を育て、なにやら薬草を見つけては目新しい茶や菓子を作っていた。


初めこそ驚いた様子だったがアンデッド達ともすぐに打ち解けていた。

グレンが作り出す物が徐々に楽しみとなり、ついつい手が伸びてしまい叱られた数も少なくはない。

グレンが去り残された薬草畑や茶葉を見れば、何か物足りなさを感じ寂しいと思う自分に気が付いた。

時折まだグレンが居るような気がして、つい視線が彷徨う事もあった。

アリアンに叱咤され、己の役割を果たすべく自信を鍛えるようになった。

長い年月が過ぎたが、いくら月日が流れようともグレンの姿を求める自分が居た。

いつ逢えるのであろうか。


そんなある日 アリアンがカズラを連れて来た。

数日後にはボブが現れた。

どちらもグレンの仲間だと言うではないか。

ならばグレンとの再会も近いのではと期待する自分が居た。

グレンがあの時と同じ姿だとは思えなかった。


あの犬型ゲイザーが知らせにやって来て、シカを探しに出た先でグレンに再会した。

ダークエルフの姿に驚いた。

戸惑いと喜びの葛藤があったがすぐに消えた。

その後にシカを見つけ出した洞窟で、意識を手放し倒れ込むグレンを駆け寄って抱きしめた。

傷付いたグレンの手当てをしながら我はやっと自覚した。

ああ、この何とも言えない穏やかで温かな感情こそが愛情なのかと。


話がしたい。声が聞きたい。笑顔が見たい。

そして二度と離れたくない、そう思った。

だがこの感情を、この気持ちを口に出してしまった時グレンはどう思うだろうか。

そう思い深く溜息を付き 空に浮かぶ月を見上げる。


そんなデュラハンの肩にポンと手を乗せる人物がいた。バハムートである。


「何を考えあぐねておる」

「どうしたものかと自分の気持ちに悩んでおるのだ」

「素直になれ。グレンはそう申したであろう。

 なに、当たって砕ければよいのだ」

「砕けるのが・・・前提か?」(苦笑)

「我はな、其方の知らぬ世界でグレンと共に過ごしておった記憶がある。」


 デュラハンの目が驚きに満ちている。


「そこは特殊な世界でな。その時は我に自我はなかった。

 決められた言葉と決められた行動。自由に動く事すらままならぬ世界であった。

 やがてその世界は終焉を迎え、我の存在は消えゆくはずだった。

 だが我は消えなかった。

 グレンに呼ばれ、この世界に新たな生を受け、記憶が浮かんだ。

 それと同時に感情も芽生えた。其方と同じだ。

 グレンが愛おしく守りたいと思った。

 傍に居たいと、同じ時間ときの流れを過ごしたいと。

 だがそれを口にした時 グレンがどう思うか考えると・・・な」


デュラハンと同じ様に月を見上げた。


「だがその割には其方、あけすけに行動に出ておらぬか?」

「ぐっ・・・

 その・・・つい行動が先にでてしまうのだ・・・」


しばしの沈黙が流れた。


「お互い 自分に正直になってみるか」

「そうだな。ボブ殿を見習うべきか・・・」

「待て、我は・・・その・・・殿方の愛情は受け入れられぬ!」


ゲホゲホとデュラハンがむせた。


「我とて殿方の愛情は受け入れられぬわ!」


ボブはどこまでも懐が深い男なのだなと二人は思った。



【ボブの好きはLOVEじゃなくてLIKEだと思うけどな。面白そうだから黙って居よう】

と、二人の会話をコッソリ聞いていたスライザーは思うのであった。

読んで下さりありがとうございます。

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