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67:ヴァル大陸 小さな漁村ピリカにて ~グレン~

次の日 儂とシカさん以外は皆二日酔いだった・・・


儂は当然吞めないから。

シカさんは・・・実は酒豪なんだよね。ビア樽の1つや2つは平気だと思う。

酔っぱらっても、笑い上戸になってちょっとやらかすくらいだ。(笑)


仕方ないなとニームのお茶を淹れて皆に配る。

シカさんはニームって歯木の?と不思議そうだったが

ニームは元々薬効があるハーブだし二日酔いにも良いんだよね。


「んうぇぇぇ、まずっ」

「良薬口に苦し!黙って飲んどけ!」

「へぃ・・・」


皆の二日酔いが落ち着いた頃を見計らって、目的の冒険者登録とクラン登録に向かった。

シカさんとフィンさんジークさんの三人は登録情報の更新だ。

ギルドに入れば人間(ヒューマン)の女性が居た。


「冒険者登録とクランの登録を頼みたいのですが」 


そう言うと受付の女性は少し考えて


「でしたらまずはクランの登録からがよいかもしれませんね」


バングルに所属クランの情報も載るのだそうだ。

なるほど。

クランの設立申請・・・クラン名と代表者・・・・考えて無かった。


「カズラ・・・代表者ヨロシク!」

「おれぇぇぇぇぇぇぇ?!」


裏返った声の返事が返って来た。


ズラ「そこは姐さんでしょう・・・」

グレ「いや毎度のパターンで儂サブのがよくね?」

ズラ「じゃぁイザでいいでしょう?・・・」

イザ 「えー?俺?!」


毎度どのゲームでも悩むよね。まぁ最終的にイザになるんだけど。


ズラ「イザがいいって。ホラ俺じゃ荒れた姐さん止められないし」


皆の視線がイザに集まった。


イザ「・・・・ハァ。じゃあクラン名は?」


と、まぁなんとか登録も完了した。


クラン名: 新月(シンユェ)

代表者:イザーク・ファンコル   副代表:グレン

メンバー:シカ・グノーメ  ボブ・オグレス

     カズラ・コトゥルニクス  フィンドゥリル

     ジーク・フリード  ライカ・スノーグ

     デュラハン・ドゥアガ  アリアン・レイス

     スライザー




続いて冒険者登録も終わらせる。

受付嬢は・・・固まってしまった。

まあそうだろうな。儂も鑑定した時は驚いたし。


受付嬢はガルドにある本部に報告した方が、とか言ってたが断固断ったし口止めもしておいた。

正直ガルド、特に首都にはいい印象は無い。

それにこれだけ目立つ集団だし、遅かれ早かれ噂にはなりそうだし・・・ね?

そこは開き直って! もぉフードで隠さなくていいし!!

おっと、大事な事を忘れてた。


「さあ、もう一か所いくよ!」


と、皆を連れて来たのはシカさんの養父母が眠っているであろうシカさんの実家前だ。

集落の人達にも集まってもらっている。


「ここは・・・私の家?」

「ここで何かあるの?」


そう、知らないのはこの二人だけだったりするんだよね。ニヤニヤ


「では、皆さんお願いします!」


シカさんとボブは何が何やら判らない内に人々に着替えさせられる。


「ふぇ?え? ちょ、なになに?」

「うふふっ くすぐったいよ。えぇ、なにどうしたの?」


出来上がった姿は 新郎新婦。


そう二人の結婚式を養父母に見届けてもらうのだ。

牧師役は長老が引き受けてくれた。

滞在中だったニンフやエルフが演奏や歌を引き受けてくれた。

女性陣は料理を用意し、子供達はフラワーシャワーの用意をしてくれていた。


フフフ、驚いた? 昨日の夜のうちに皆で相談して決めてあったんだよ?

ゲームでもシカさんはチョイチョイ変なのに引っかかってたしね?

これからも無いとは言い切れないじゃん?

実際落ち合う前にもあったみたいだし?

だったらさっさと結婚しておいた方がいいだろうってね。

だけどここでボブが意外な一言を放った。


「駄目だよ!」


へ?・・・どうゆう事?!

まさかのボブからNG?!


「確かに僕はシカが大好きだし愛してるよ!だけどさ・・・

 ジークさんもシカの事好きだよね?」


んん? そりゃ優しい目で見てるなとは思ったけども。

保護者的な目とかじゃなくて?

と、ジークを見れば・・・真っ赤。

マジかー、図星かよ!

シカさんの反応は・・・お前も真っ赤かよ!

それはボブが人前で愛の宣言したから?

それともジークの事で?・・・


「ねえ、シカ。シカはどうなの?ジークさんの事どう思ってる?」


シカさんは黙ってしまった。何故黙る・・・

肯定って事か?


ジークもなんで何も言わない・・・

いや、言えないか・・・


「シカ。ちゃんと僕とジークさんを見て答えてよ。

 僕の事好き?ジークさんの事は好き?」


益々真っ赤になるシカさんが儂を・・・見るんじゃない。

何故こっちを見る・・・


「姐さん・・・」


儂に振るんじゃない。


「シカさんや、自分の気持ちをちゃんと言葉にしてみれば?」


自分の気持ちに正直になれと促せばシカさんは目を閉じて、決心したようだ。


「・・・・・き・・・。 だいちゅき!」


大事なトコで噛んだよ、シカさんや・・・


「それはどっちを? ボブを? ジークを? 二人を?」


主語がない!まったく世話の焼ける(苦笑)

判ってるよ、どうせ二人をなんだろ? 口がニヤけてしまう。


「ふ、ふふ、二人共大好き!でも、どっちかとか選べない・・・」

「選ばなくてもいいんじゃないかな?」

「え?・・・だって・・・」

「旦那さんが二人でもいいんじゃないかな?ね?姐さん!」


すこぶるいい笑顔のボブがこちらを向く。

だからなんで儂に振るんだ!


「どうせ儂等普通じゃないんだろ? 

 だったら自分に素直になればいいだけなんじゃね?

 な?ジーク、そうだろ?」


ジークが恨めしそうな目で見てくるけど知らんがな。(笑)


「初めは兄として、保護者としての愛情だと思ってた。

 だがシカが攫われたあの時 自分の愛情がそうではないと気付いた・・・」


うん、じれったい、そしてまどろっこしい。


「だがボブ、お前は・・・」

「僕が良いって言ってるんだからいいんだよ!僕ジークの事も好きだし!」


と強引にジークを引き寄せた。

ボブ・・・今の言動だとちょっと違う方向に受け止める人も居るんじゃないのかな?

まあいいや、し~らないっと。

さっさと進めてしまえ。

長老に合図をした。


ゴホンッと咳ばらいをし、式が始まる。

折角の誓いの言葉は三人共見事に噛むし・・・

誓いの口付けなんかは

背伸びして近付こうとしたシカの頭がボブの顎にクリーンヒットするし

長老は勢い余ってボブとジークに誓いの口付けをなんて言ってるし

テンパってるジークはしちゃってるし、ボブも受け止めちゃってるし!

いやいや皆落ち着いて?


なんでこうシリアスに終わらないかな・・・

まあ儂等らしいと言えば儂等らしいし、シカさんですし?

集落の人達も誰も気にしてないし? 異世界ですし?

皆が笑って楽しけりゃいいか(笑)


「シカ!おめでとう!幸せになるように!」

「うんっ!」

「ボブ、シカの手しっかり掴んで放すなよ?」

「うん、任せてよ!」

「ジーク、2人の手綱しっかり取れよ?」

「おう! え?2人? お、おぅ・・・」


式の後はお決まりパターンで大宴会に突入した。

儂は呑めないのでお茶を片手にそっとその場を離れる。

少し離れた場所に座り夜空を見上げながらシカさんの両親に語り掛ける。


シカさんを育てて下さりありがとうございます。

鹿さんが前世と変わらず

おおらかで優しい子に育ったのはご両親のお陰なのでしょうね。

まぁあのドジっぷりはどうにもならない天性の物かと・・・

気苦労する事もあったかと思いますが

たくさんの愛情を与えて下さりありがとうございました。

シカさんは良い伴侶にも巡り合え益々幸せになってくれると思います。

だからどうか、安心して・・・無理よね。

一緒に見守ってくださいね。


出来れば一目会いたかったなと思うがこればかりは仕方が無い。

そして儂は一足早くテントに戻り眠りに就いた。

そうして迎えた翌朝は、やっぱり皆二日酔いだった。

読んで下さりありがとうございます。

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