65:ヴァル大陸 小さな漁村ピリカを目指して① ~グレン&シカ&カズラ~
この多種多様な集団が行っても大丈夫そうな所・・・あるか?
シカ「わたしの育った村とかどうかなぁ」
フィ「そうね、あそこならいいかも」
アリ「ああ、あそこなら大丈夫ですわね。私も受け入れて頂きましたし」
んじゃまずはそこに行くか。
出発は二日後。各々準備を始める。
デューンは屋敷をどうするか悩んでいたが留守番組のゲイザーが管理してくれる事になったようだ。
ここから東に海を越えていけばヴァル大陸がある。
森を抜け山脈を超えればシカ達が育った集落があるとの事。
指輪を作ってくれたシカの養父達の墓参りもしたかったが墓の概念がないらしいので残念だ。
バハ様が集落まで移動させるか?と聞いてきたが
景色を楽しみながら歩くのも旅の醍醐味だと答えておいた。
「そうだ、忘れる前に渡しておこう」
そう言ってジークは指輪を取り出しボブとカズラに渡した。
これでシカさんが逸れても安心かな、たぶん。
「あ!!」
シカさんが何かを思い出したようだ。
「これ!お母さんが作っておいてくれたの!」
皆の手に渡されたのは 房飾りと髪紐。
さすがドワーフ産とでも言うべきかな。
しなやかで丈夫そうでとても綺麗だった。
デューンやバハ様は自分達の分まであるのかと嬉しそうだった。
「無くしてもまだあるから大丈夫だよぉ!」
と言うシカさんの鞄を覗けば・・・多すぎだろ!
流石養母、シカさんの事をよく判ってらっしゃる。
なくすとすればまずシカさんだろうからね。
結局この人数で海を渡るのは大変だから、ヴァル大陸の海岸まではバハ様に移動させて貰った。
ここからは徒歩だ。
「シカちゃん、もぉ梨に気を取られないでね?」
「だ、大丈夫だよぉ」
アハハとシカさんの乾いた笑いが聞こえる。
ジークとフィンの先導でゆっくりと進む。
さすがエルフやドワーフなどが多い大陸。
森の風景はどことなく幻想的な気がした。
妖精や精霊、ユニコーンなどの幻獣が居てもおかしくない、そんな雰囲気だった。
ここはスルーアやバンシーも少なく、時折浸食シリーズや荒くれ者を見かけるくらいだ。
開けた場所で野営をすれば
夜な夜なカズラ・イザ・ジーク・フィンが盛り上がっていた。
『やっぱり!』『ですよねー』『またか!』などと聞こえてくるので
どうせシカさんのやらかした話で盛り上がっていたのだろう。
デューンやアリアン、ライカとボブは装備やスキルの話で盛り上がっていた。
目をキラキラ輝かせて話を聞き入っているボブは
昔出会ったばかりの頃のボブみたいだった(笑)
シカさんは・・・寝てた。凄くぐっすりと・・・
そんな皆を眺めながら、儂は今後を考える。
冒険者登録はしなくてもいいかと思っていた。
けど、この人数でこのメンツ、多種多様な集団となれば嫌でも目立つ。
色々噂や憶測も飛び交いそうだし、シカさんがまた誘拐されてもね?
冒険者登録で身分証明が出来るなら少しは安心だろうし。
自分達でクランを作っておきたいってのもあった。
変な勧誘や強引な勧誘とかもメンドクサイしね?
シカさんとかシカさんとかシカさんなんかが引っかかりそうだし・・・
銀行機能があるってのも助かるかな。
いずれば拠点、ホームが欲しいと思うから貯めておきたい。
持ち歩くのは・・・邪魔くさいんだよ、必要最小限でいいかな。
さて明日は山越えだ。儂も寝ておこう。
*** *** シカ目線 *** ***
はい、こちら現場のシカさんです。
本日はココ!ロック鳥の別荘巣から見える絶景を皆さんにお伝えしたいと思いまーす!
・・・
て、そうじゃないよねぇ・・・
何でこんな所に居るのか?
いや、私やらかしてないよ?!
明け方にトイレで目が覚めて、木陰で用を済ませて・・・
あ、ちゃんと簡易トイレだよ!
テントに戻ろうとしたら・・・
ロック鳥に連れてこられちゃったのよね?・・・
「まあ!こんな早朝に小さな子が一人で歩いてるなんて危ないわ!
陽が昇るまで家に来てなさい!」
ご飯獲って来るから大人しくしてるのよ!なんて言われちゃった・・・
ま・・・まぁすぐに陽が昇るし?動くと落ちそうだし?
ここ、断崖だし、大人しくじっとしてた方がいいよね?
あー・・・皆の顔が浮かぶよね。
【だからよー、おめぇはまったく!!】
ハィハィ・・・
スンマソン。
やっと再会できて早々にこれだもん、自分でも嫌になっちゃう。
でもわざとじゃないから!
そこはシカさんですし、予測不可能な事が起きるって事で・・・
*** *** カズラ目線 *** ***
あ"あ"ぁぁん?! またシカが居ないだとぉぉぉぉぉぉぉ!
だからおめぇはよぉぉぉぉ・・・
俺は深い溜息を付いた。
朝起きればシカが何処にも居ない。ボブはオロオロしている。
姐さんは んあ"?と言った後横の樹をへし折っていた。
他の皆はやっぱり大きな溜息をついた。
指輪の反応が無いので周辺には居ないのだろう。
だったら何処行った・・・
フィン「また何か美味しいものでも見つけて
フラフラと行っちゃったのかしら?」
ジーク「今度は何だ。葡萄か?林檎か?ベリーか?!」
イザ「シカの事だから可愛らしい小動物を追いかけたかもしれん」
はあ・・・と再び溜息を付くと
アン「シカの匂いが向こうで消えてた。ロック鳥の匂いも残ってた」
ロック鳥?!
なんだってロック鳥が。まさか・・・?
一同「 シカを迷子の子供と間違えたのか!! 」
ここらに住むロック鳥は母性が強く、親と逸れた子や親を亡くした子など保護する事もあるらしい。
まあ害は無いだろうがどうしたものか。
鞄から手を出したコングがチョイチョイと突いて来る。
コング「コング シカ 迎エ 行ク」
ん?・・・
コングはロック鳥の巣がありそうな場所が解るらしい。
森の中も慣れているから任せてくれ、皆はゆっくり朝食を食ってろと。
グレン「下手に皆で大騒ぎしてもロック鳥が警戒するかもしれん。
コング任せた。だがなシカをシッカリと!
シッカリとラグビーボールの様に小脇に抱えて来い!落とすなよ?」
姐さんはそう言い、こんな感じだと鞄を小脇に挟んでみせた。
シッカリと・・を2回もいってたよな・・・(苦笑)
ボブ「姐さん、普通に抱っこじゃ駄目なのかな?」
グレ「シカが花だの鳥だの果物だの見つけてはしゃいだりしてみろ。
落ちるかもしれんだろうが・・・」
・・・・あり得る。
誰も否定出来なかった・・・
「コング、くれぐれも シッカリと小脇に抱えてくれ」
違う抱え方だと姐さんの鉄扇喰らうかもしれんぞと聞こえないように付け加えておいた。
コングはものすごい勢いでウンウン頷くとヒョイヒョイと樹を渡り森の中に姿を消した。
*** *** シカ目線 *** ***
皆心配してるよね・・・
いや呆れてるかなぁ。
ロック鳥さん早く戻ってこないかな。
朝日も昇ったし、そろそろ帰してくれてもいいんじゃないのかなぁ。
あ、戻って来た・・・ってなんかでっかい猿も居るよ?!
まさかあれが・・・ご飯?
いやいやいや猿とか食べないからっ!
て焦ってたら違った・・・(汗)
「お迎えが来たわよ!」
お迎え?この巨猿が?・・・
「えーっと・・・どちら様?」
「コング 迎エキタ カズラ 待ッテル」
あー、なるほど!カズラの従魔って事かな。
ロック鳥さんの話によれば、この崖の下でコングがウロウロしてたので声を掛けてみたらしい。
で、私を探してると知ったので連れて来たそうなんだけど。
それ、コングを下に待たせておいて私を降ろしてくれた方が良かったんじゃないかなぁ?
「心配 ナイ」
そう言ってコングは私を小脇に抱え、ヒョイッと飛び降りた。
ヒュゥゥゥゥゥッ
えええええ、待って!
ここ断崖よ?えええええ・・・・
フリーフォールとかバンジーってこんな感じかしら?
やった事ないけども・・・重力がっ!風圧がっ!
体の中の何かが上にあがってくるぅぅぅぅ。
ヒィッ
腕から抜け落ち・・・・無かった。
それはもぉシッカリと
これでもかってくらいシッカリと小脇に抱えられてた。
なんで小脇に抱えるんだろう?
抱っこでもいいと思うんだけど?・・・
「姐サン オコル怖イ コング 約束守ル」
あ、なるほど?
それなら仕方ないね。グスンッ
ぅああぁぁぁ 地面にぶつか・・・・らなかった。
器用にそのまま木々を渡ってた。
あ、皆が見えた!
読んで下さりありがとうございます。




