61:ニブル大陸③ ~イザ&グレン~
ここからだとニブルまでは南の海をわたればすぐだと言う。
家から海まで徒歩5分だし、案外ニブルは近かった?
海はクラーケンの1匹が乗せて運んでくれると言ってくれた。
家族と長老に見送られて海を渡る。
湿っぽくなるのは嫌だったから、アッサリと挨拶をするだけにした。
いい家族だった。楽しい家族だった。優しい家族だった。
今生の別れじゃない。
また逢えるはずだし、仲間と共に帰ってきたいと思った。
「ライカ、絶対にまたこの島に。皆の所に帰ってこような」
「ああ、その時は新たな仲間と共にな」
スィー ザザザッ スィー
クラーケンの泳ぎは思ったよりも静かだった。
ゆったりと進んでいるのかと思いきや、意外と速度は速い。
これならニブルへはあっという間に着きそうだ。
クラーケンが途中にちょっと面白いダンジョンがあると案内してくれた。
海底に有るからと大きな気泡に包んでくれ辿り着くと
おぉぉ? なんだこれは?
竜宮城?・・・
ダンジョンと言うよりは普通に洞窟だった。
ちょっとしたチョッピングモールみたいになっていて
魚人だのスキュラだの人魚だのが店を構えている。
衣類系 装飾品 食料品 薬剤系
凄いな・・・
海底だと言うのに客も多い。
何か皆に土産でも買うかとも思ったが、皆の姿が解らないので辞めておいた。
シカは・・・恐らくミニマムだろう。
だがボブとカズラはまったく想像が出来ない。
グレンは・・・想像つきそうだが時々意表をつくからな・・・
まぁ、皆でいつかここにも来てみればいいか。
そして再びクラーケンに乗せてもらいニブルに到着し礼を言って別れる。
さて・・・ここからどうするか。
と、何やら目の前に広がる森の中が騒がしい。
ライカと顔を見合わせ 様子を見に行く事にする。
なんだ? ゲイザーが地面の周りをパタパタと飛び回ってる。
あそこに何かあるのだろうか。
駆け寄って見れば・・・人の手?
人の手の形をした植物?・・違う、埋まってるのか!!
慌ててライカと掘り起こせばエルフの女性の顔が見えた。
「なんでエルフがこんな場所に埋まって・・・」
うん、それは俺も思ったが、まずは助け出さないとな。
何かの根がアチコチに絡みついている。
何の根だか知らないが、まあ味方とは思えないよな。
なので力任せに引きちぎりながら掘り進めやっとの事で全身が空気に触れた。
息は・・・かすかだがある。
先程の海岸までエルフを抱えてもどり、そこで野営して様子を見る。
「しかし、横に埋められていてまだよかった」
まぁ確かにな。
縦だったらもっと苦戦したろうな。
水を少しばかり口に含ませればエルフはゆっくりと飲み込んだ。
ポーションとかあればよかったが、生憎持ち合わせていない。
焚火で体を温め、水を飲ませてやることくらいしか出来なかった。
意識を取り戻せば果実も食べれるだろうが・・・
俺とライカは交代で眠ることにした。
何故エルフがあそこに埋まって、埋められていたのかが解らない。
寝ている間に俺達まで埋められたらかなわんからな・・・
先に俺が寝て、後から見張りをする事になった。
スルーアよけにライトを灯し眠りにつく。
2~3時間経った頃に目を覚ますと ライカもエルフも居なかった。
なんだ?なにがあった?何処へ行った?・・・
俺が状況を把握出来ずに居ると 森からガサガサ音が聞こえた。
振り向くと人間の男性を抱えた二人の姿が見えた。
慌てて駆け寄り、エルフと交代し人間を支える。
「エルフが目を覚まして、もう一人埋まっていると言ったんだ」
なんだって?!
エルフの近くにまだ埋まってたのかよ・・・
「二人だけか?・・・」
「ええ、埋められたのは二人だけよ・・・」
埋められたのは・・・?
「埋められなかった者も、居たのか?」
「もう一人 ノームが居たの・・・」
ノーム?! まさかシカか?・・・
ニブルは独特でそんなに観光客など立ち寄る場所ではないとライカが言っていた。
だとすればそのノームはシカの可能性がある。
「そのノームは?・・・」
「解らないの。私達土に埋められ・・・いえ、引き込まれていたから」
引き込まれた?・・・
聞きたいことは山ほどあった。
が、まだエルフの顔色も悪い。この人間も寝かせねば。
エルフに果汁の入ったコップを渡す。
「飲んだら少し休むといい。話はその後にしよう」
「ありがとう」
エルフはゆっくりと果汁を飲み干すと再び眠りについた。
ライカにも休むよう促し、俺は焚火に目をやる。
エルフに人間にノーム。どんな関係なのか。
どういった経緯でここにいるのか。
二人が目覚めたら聞いてみないとだな。
朝になりまずはライカが目を覚ました。
朝飯用に肉を焼く。彼等は果物の方がいいだろうか?・・・
そう思いいくつかの果物を鞄から取り出しておく。
肉が焼きあがる頃エルフと人間の男性が目を覚ました。
「ここは・・・」
男性がきょろきょろと辺りを見回してる。
「フィン!無事か。お前急に地面に消え・・・って俺もか」
「ジーク、こちらの二人が助けてくれたのよ」
ジークと呼ばれた男性はそう言われてやっと俺達に気が付く。
「イザークだ。イザと呼んでくれ。こちらはライカ」
ライカは軽く頭を下げる。
「ジークだ。助けてくれて感謝する」
「フィンよ。昨日はありがとう」
肉は食えそうかと聞けば、二人は大丈夫だと答える。
腹ごしらえを済まし事情を聴いてみれば・・・
ノームはやはりシカだった。
故郷であるドワーフの集落で知り合い、放っておけないので一緒に旅をしここに辿り着いた事。
ここからはゲイザーの案内で中央に向かっていて、途中で何かに地面に引きずり込まれたと・・・
一瞬の出来事で反撃も出来ず、最後にみたシカの姿は不気味な何かと手を繋いでいた・・・と。
「なんで不気味なもんと手を繋ぐかな、シカぁぁぁぁぁ」
溜息と共に言葉がもれた・・・
ノームなのにドワーフの集落?それも気にはなるが・・・
まあ後々聞こう。
「イザーク。そうか、聞き覚えがあると思ったら!」
ジークは鞄から小さな宝石箱を取り出し、箱の中から指輪を1つ取り出すとイザに渡した。
「これは?・・・」
ISAAC 俺の名前が刻まれている。
シカの養父が 卵に刻まれていた名前を縁のある者の名だろうと用意してくれた物らしい。
卵?・・・ シカが入っていた卵?・・・ ノームは卵生か?・・・
ジークもフィンもライカも聞いたことが無いと言う。
卵には俺以外の名前もあったと教えてくれた。 BOB KAZURA GLENN
「間違いないな。仲間の名だ」
つい懐かしくなってしまったがまずはシカの捜索だな・・・
とは言えどうやって探せばよいものか。
「養父が半径5M以内に近づけば指輪が共鳴すると・・・」
なるほど、ならばそれも手掛かりにはなりそうだ。
シカがはめていれば・・・だがな。
「シカははめているのか?・・・」
「以前攫われた時にはめて無かったので釘を刺したからはめ・・て・・・」
ジークの手元の箱の中には CICA と刻まれた指輪が見えた。
「「 シカーーーーーーー!!!! 」」
俺とジークは絶叫し、フィンとライカは溜息を付いていた・・・
*** *** グレン目線 *** ***
ビューッ
風邪を斬る音が聞こえ儂はバハ様に抱きかかえられたまま空を移動している。
何故人型で抱きかかえられているのだろうか、竜の姿でもよかったんじゃ?
「グレン 海辺に何やら人影が見える」
へ? もうニブルに到着?! 早いね・・・
言われて下を見れば豆粒くらいの人影が見えている。4人?
近くに降りたら風圧で大変かもしれないよね。
「では 少し離れた場所に降りるとする」
バハ様は音も立てずに器用に舞い降りた。
「さて、では行ってみますかね」
ゆっくりと歩いて近づけば・・・人間にエルフに獣人2人?・・・
ボブ? イザ? カズラ? シカさん? いやシカさんは無いな。ミニマム居ないもん。
誰だろう。まったく別人で誰も居ないかもしれない。
でも誰かいる気がする。
気が逸る。しだいに足も速くなる・・・
とうとう駆け出してしまった。
*** *** イザ目線 *** ***
「イザ、誰か来る」
ライカに言われて顔を上げれば・・・誰かが走って来る。
そのせいで被っていたフードが剥がれ、現れたのは・・・
ホワイトブロンドのダークエルフ?!
あれは・・・もしかして・・・
ポワンと額が光った。 ダークエルフの額も光っている。
間違いない、あれはグレンだ!!
「グレン!」
叫んで立ち上がると グレンはズポッと飛び込んできて
受け止めた俺はそのまま尻餅をついた・・・
「イザ?!」
「うん、俺だよ」
グレンは俺の頭をクシャクシャと撫でまわす。
「主・・・」
「「師匠?!」」
その声でハッと我に返る。
しまった、他にも人が居た・・・
まさかのまさかだった。ライカの師匠がグレンだったとは。
しかもフィンの師匠でもあると言う。
不思議な巡り合わせだと思うがこれもイシュカ神のお陰なのだろうか。
おっと、それよりもシカの捜索をしないとな。
バハ様はグレンが名を教えていない人が居る場合、「主」呼びします。
読んで下さりありがとうございます。
アクションを付けて下さった方ありがとうございます(*'ω'*)




