56:ポス草原の旅② ~ボブ~
帰り道はリポップしてる浸食シリーズも少なくてすんなり外に出られたよ!
今回のダンジョンは8Fが一番厄介だったかなあ。
9Fもだったかも。
10Fはメデューサでよかったよ。
もっとやっかいなのが出てたら、僕困ってたかも!
さあ焼き肉の準備しなきゃだね!
ダイルはとっておきの場所に案内してくれたんだ。
川の中州がちょっとした丘みたいになってる場所だったんだよ。
そこから見る夕日がとても綺麗で僕感動しちゃった。
いつか番を見つけたら連れてくるといいって教えてくれたよ!
うん、そうだね。でも・・・
「ねえダイル。その時はさ、僕が今探している仲間達を紹介したいな!」
ダイルはちょっと驚いた顔をしていたけど
「そうか・・・
であれば俺は毎年夏になったらこの場所を訪れる事にしよう」
って言ってくれたよ!
分かったよ、僕も来る時は夏にするね!
それから僕達はこれでもかってくらいお肉を焼いて食べた!
ゲフッ
お腹いっぱいだよ。
食べた後は寝転んで星を眺めながら皆の事を話した。
ちょっとおっちょこちょいだけど可愛くて僕が大好きなシカの事。
根は真面目なのにめんどくさがりで実は寂しがり屋なカズラの事。
口数は少ないけど優しくて実は面倒見がよかったりするイザの事。
怒ると怖いし口は悪いけど実は涙もろくて世話焼きな姐さんの事。
ダイルはそれを楽しそうに聞いてくれたよ。
僕も話していて楽しかった、でもいつのまにか寝落ちしてたんだよね。
グゥ スピィ
次の朝、僕達は別れてそれぞれの道に進んだ。
また会おうねって約束をして!
それから数日。
僕は今草原の真ん中辺りにある大きな集落に来ている。
薬屋があるから、茸の鑑定と買い取りをお願いしたんだ。
鑑定は自分でも出来るんだけど、ほら内緒だからさ。
食用になるのは1/3で残りは毒茸だったから毒茸だけ買い取ってもらったよ!
薬屋さんも喜んでくれたみたいだしよかった!
量が沢山あったから鞄もスッキリしたしね。
買い取りをして貰った後は宿屋を探した。
僕が泊まれるところがあればいいなぁ、久々にお風呂にも入りたいし。
すれ違ったおじぃさんに聞いてみたらすぐ近くにあるって教えてくれたよ。
おじぃさんありがとう!
宿屋に行って空き部屋はあるか聞いてみたら巨人族用の部屋もあって助かった!
料金もお手頃で中銀貨1枚、日本円だと5000円くらいかな?
お礼に茸を少し渡したら夕飯にだしてくれたよ、ありがとう女将さん!
久々にネタベットは気持ち良くてぐっすり眠れたよ。
次の朝ご飯を食べていたらギルドマスターって人に声を掛けられた。
依頼を受けて貰えないかって。
薬屋さんから僕が冒険者らしいって聞いたんだって・・・
ギルド登録とか、まだしてないんだけどな。
だったら登録しないかって言われたけどお断りしておいた。
皆と逢うまでは登録しなくていいかなぁ。
なんだか面倒な事に巻き込まれても嫌だったし!
ちなみにと、どんな依頼内容なのか聞いたら畑周辺の乱暴者退治だった。
乱暴者なら数もそんなに居ないし、普通の冒険者でも出来るんじゃないの?
この集落大きいから冒険者っぽい人何人か見かけたし・・・
うーん、なんだか嫌な予感がするよ。
ギルドマスターさんには悪いけど
ちゃんと冒険者登録してある人に依頼してくださいって断っておいた。
ご飯食べたらさっさと集落出た方がいいよね、これは。
変な事に巻き込まれたらシカに逢えるのが遅くなっちゃうよ!
部屋に戻って荷物を纏めてたら女将さんがこっそりやって来た。
「表に柄の悪そうなのが居るから裏口からコッソリ出るといいよ」
どうやらさっきの会話が聞こえて心配してくれたみたい。
昼ご飯に食べなと包みまで持たせてくれた。
優しい人だなあ、ありがとう!
足早に集落を抜け出した後は 南にある海を目指した。
ここまでの道程でイザやカズラっぽい人の話は聞けなかった。
残念だなあ・・・
何日か過ぎて休憩していたら大きな鳥が籠をぶら下げて飛んでいるのが見えた。
アラビアンナイトの話に出てくるロック鳥ってあんな感じなのかな?
なんて見てたんだけどなんだか様子がおかしい?
ちょっと様子を見に行ってみようかな。
鳥が飛んでいる方に走って行くと・・・
首に鎖みたいのが巻き付いててあちこち怪我してる。
どうしたんだろう、何があったのかな。
何かに追われてる?
時々後ろを気にして振り返ってるみたいだ。
近くの大きな蟻塚に隠れて様子をみてみよう。
隠れてすぐに3人組のいかにも悪人です!て雰囲気の人間が馬で走り抜ける。
『逃がすなよ!アイツの卵を持って行けば一生遊んで暮らせる金になる!』
へぇ・・・ ムカッ
ご丁重に説明じみたセリフ言いながら駆け抜けたよ・・・
きっとあの籠は大事な卵が入ってるんだね?
お母さんだかお父さんだかは判らないけど、必死に子供を守ろうとしてるって事だよね?
【やっちゃえボブ】シカの声が聞こえた気がする。
【どつき倒してこい!】皆の声も聞こえた気がする。
そうだよね、面倒事には巻き込まれたくないけど見かけたらほっとけないよね!
弓が2人に杖が1人 うん、大丈夫。行けそうだ!
あ、馬に罪は無いから怪我させないようにしないとだね!
グッと拳に力を入れて駆け出そうとした僕の足を何かがチョイチョイとつつく。
え?何? 今から僕忙しいのにっ!
見るとスライムがどうしたの?と首をかしげて僕を見つめてたよ。
うわぁ可愛い。
って今はそうじゃなくて・・・
「あそこを飛んでる鳥さんが見えるかな?」
うんうんとスライムが頷く。
「後ろから追いかけてる3人組の人間が悪い人でね。
あの鳥さんの子供を奪おうとしてるみたいなんだ。
だから僕は今から助けに行こうと思ってる。
巻き込まれたら大変だから君はここに居てね」
と小さな声で説明するとスライムはうんうんと頷いた。
よし! 僕は駆け出した。
ドスドスドスッ ドドドドッ
僕は巨人族だからね? オーガだからね?
踏み出す1歩も大きければ足音も大きいんだよ?
力が入り過ぎて地鳴りみたいな音になったのには自分でも驚いたけど!
3人組の馬は驚いて ヒヒンッと嘶くと
3人組を振り落として何処かに走り去っていったよ。
鳥さんも驚いたのか弱って疲れ果てたのか解らないけど
ゆったりと地面に落ちていった。
えぇ?! 落ちちゃった?! 危ない!!
慌てたけど大丈夫だった。
スライムがクッションになってポヨンッと受け止めてくれた。
スライムってあんなに伸びるんだね、僕知らなかったよ!
危ないから隠れててって言ったのになあ。
でも結果オーライって事でいいかな。
さてと!3人組は?・・・
腰をさすりながら僕と鳥さんを交互に見てる。
「なんだテメェは?」
「通りすがりのオーガだけど?」
3人組はニヤリと卑しい笑いをすると攻撃を仕掛けて来た。
雷魔法? うん、ダイルに比べたら弱いね。
弓? ちょっとチクチクするけど別に大丈夫かな。
「へっ その矢にはな麻痺毒がぬってあるんだ!痺れて動けなくなるがいい」
なるほど、だから鳥さんは落ちちゃったのか!
じゃあ解毒薬飲ませてあげれば大丈夫だね!よかった。
って言うかさ。
さっきからなんで説明みたいな事言ってるんだろう?
わざわざ言わなきゃいいのに。
対処方法丸わかりだよ?
じゃぁ今度は僕の番だね。
僕はゆっくり大剣を取り出してニッコリしてあげた。
フンヌッ!
下から構えて大きく振りかざして足元を狙う!
次に鳩尾を柄で殴る!
そして後頭部に振り被る!!
元冒険者のお姉さんが教えてくれた悪い人達の殴り方!
それぞれがもんどりうってる。
「くそっ」
声と共に火球が放たれた、危ないなぁもぉ!
大剣で弾こうと思ったけど 痺れてきたのか出遅れた。
ヒュンッと火球は反れて・・・ あぁ!!
狙いは鳥さんだっだ!鳥さーーーーんっ
僕の中でプチッて音がした。
なんの罪も無い鳥さんの子供を奪おうとして、今度は殺そうとするの?
そんなの駄目だよね?許されないよね?
どんなに悪い人でも僕は殺さないから安心して?
手加減はしながら、それでも逃げ出せない程度には殴った。
痛いって? 勘弁してくれって? 止めてくれって?
聞こえないよ!
鳥さんも止めてくれって言ったんじゃないかな?
ゲシゲシゲシゲシッ
ふぅ このくらいでいいかな。手も痺れたし!
これだけ殴ればしばらく動けないよね?
鳥さんの様子もみなきゃ。
火傷しちゃったよね、酷くないといいな。
うわぁこれはマズイよ!
翼が大火傷だよ!遠目で見たよりも傷も酷いよ!!
え?あっちに川が有るって?ありがとうスライムくん!
鳥さんを抱きかかえて川へ急ぐ。
まずは火傷を冷やして傷口は洗って・・・
あぁぁ、鎖も外してあげなきゃね。
あ、籠!
スライムくんが抱えて着いて来てくれてた!よかった!
どうしようどうしよう、出血が止まらないよぉ。
何か持ってなかったかな・・・ ガサゴソッ
あ!!
マミー印の包帯!!
グルグル グルグルッ
止まった、一安心かな? さすがマミー印の包帯!マミーの皆ありがとう!
卵の様子は・・・大丈夫そうだね。
割れてないよね。よかった。
でも温めた方がいいのかな?どうなんだろう。
僕が温めてみる? 駄目だぁ、潰しちゃいそう。
取り合えず籠から出して鳥さんの横に置いて毛布を掛けてっと。
鳥さんの目が覚めるまで傍に居た方がいいよね。
簡易テントを広げてっと、そう言えば初めて使ったや(苦笑)
焚火とスルーア避けでライト!
よし、これでいいね!
お腹空いたから僕はご飯にしよう。スライムくんも食べるかな?
って、スライムくん居ないや。寝床に帰ったのかな?
あ、あの3人組!すっかり忘れてたよ。
明日の朝でもいいや、どうせ動けないだろうしね!
読んで下さりありがとうございます。




